「応援上映」との出会いで人生が変わった。40代になった私が、新しいエンタメに触れ続けることで得たもの

はじめましての方ははじめまして。あれっくすと申します。西の地方都市、福岡でシステムエンジニアとして働きつつインターネット上のいろいろな場所に顔を出している、40代半ばの男です。

今回は私と同年代の方々に向けて、自分とエンターテインメント(エンタメ)の関係を語っていこうと思う。何か参考になれば幸いだ。

この年代になってくると、社会的責任も大きくなり、趣味の時間をあまり多く取れない人たちも多いことだろう。さらには趣味に対する柔軟性が失われ、過去に好きだったものを繰り返し楽しむようになりがちだ。

そんな中で、私はなるべく積極的に新しいエンタメを開拓するように心がけ、楽しんでいる。この記事では、新しい趣味に飛び込むために私がどのようなことをしているか、そのおかげでどんな変化があったのかを書いていきたい。

「キンプリ」をきっかけに、応援上映や映画鑑賞にハマる

私の主なネット上での活動としては、前世紀末から20年ほどにわたって、任天堂のファンサイトを運営していることが大きい。毎年任天堂の株主総会に参加して、その感想を書いていたりしている。株主として好きな会社を支えている喜びがあるし、社長や役員に直接質問ができる株主総会はなかなか面白いエンタメなので、余剰資金がある人はぜひやってほしい。

任天堂のファン活動は10代のころから30年以上継続して楽しんでいるが、それ以外の趣味は、飛びついてはそのうち飽きるということを繰り返している。その中でも最近継続して楽しんでいる趣味としては、応援上映、SNS、献血、謎解き、IoT家電、スパム調査、台湾烏龍茶などがある。

中でも最近一番力を入れているのが応援上映だ。

応援上映とは、映画館で上映中に観客が声を上げたりペンライトを振ったりする形式の映画上映のこと。2016年公開の「KING OF PRISM by PrettyRhythm(通称・キンプリ)」が、普及のきっかけとなったといわれている。

多くの応援上映は、通常上映向けに制作された作品を応援しながら見られるようにしたものだが、キンプリは最初から応援上映前提の作りになっていて、観客が声を出すための間が用意されていたり、場面によって観客が読み上げるセリフが字幕として表示されたりすることもある。観客の声援を加えることで、作品が完成するのだ。

さらには、作中で黄色いバラが出るシーンで掲げるための造花を観客が持ち込むなど、制作陣も考えていないような自主的な応援の文化も生まれている。

スクリーンに流れる映像や音声は常に同じ内容なのに、その場にいる観客が変われば、異なる体験が得られるのだ。そんな先が読めないイマーシブ(没入型)エンターテインメントに魅了され、キンプリシリーズの新作が公開されるたびに、同じ映画を数十回鑑賞している。

さらには、映画館に頻繁に通うようになったことで予告編を見る機会が増え、応援上映ではない他の映画にも関心を持ち、数多く鑑賞するようになった。

あらゆるエンタメと長年向き合い、他の人たちもそれぞれ違う形でエンタメを楽しんでいるのを見ているうちに「これはスポーツだな」と思うようになってきた。競技性の高いスポーツではなく、老後の楽しみとして程よく楽しむ「生涯スポーツ」のイメージだ。

日常生活から離れてスポーツを楽しむことで、リフレッシュしたり、ストレスを解消したり、他の選手と交流したり。自分にとってエンタメはそんな存在で、誰かと競い合うのではなく、あくまでライトに、年齢を重ねる中でも継続して楽しもうとしている。

さらにエンタメは、同好の士がいると個人からチームに生まれ変わるところも、スポーツと似ている。同じ作品を友人と一緒に楽しむことで、一人では気付けなかった視点に気づけることがあるのだ。

気になったら「予備知識なしで見に行く」ことで、思わぬ出会いがある

一方で、年齢を重ねるほど、新しいエンタメを楽しむことにハードルの高さを感じることもあるだろう。

個人的には、同じコンテンツばかり楽しんでいると、いつかそのコンテンツ自体が消滅してしまった時、楽しめるものがなくなってしまうかもしれないという危機感がある。

だからこそ新しいコンテンツに触れ続けたいと思っているが、それにはスポーツと同じように基礎体力が必要だ。そのためには、基礎体力をつけること自体に面白さを見いだすのがいい。

私の場合は、ハードルを下げつつも積極的に飛び込む努力をすることで、新しいエンタメを楽しんでいる。

例えば「この映画を見る前に、元になったアニメシリーズ3期を全部見た方が良いよ」みたいな声は無視して良いと思う。なんならシリーズ物の3作目から見たって良い。ハードルを上げ過ぎると「面倒だな」という気持ちが先に出てしまって、どんどん後回しになってしまうからだ。

私は、少しでも気になった作品は気軽に見に行くようにしている。

すでに高い評価を得ているコンテンツは安定した面白さがあるが、保証された面白いコンテンツばかり摂取していると脳が慣れてしまい、どんどんハードルが上がっていくように感じる。だからこそ、あえて「普段見ないようなジャンルの映画」を積極的に見たりしている。

最近だと『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』(2024年6月公開)を見に行った。「大人が見ても良い作品」という評判を見かけ、子どもたちのいない遅い時間帯を選んだら、広いシアターで自分含め大人2人しかいない状態での鑑賞になった。

異世界に飛ばされたばいきんまんが、その場にある材料だけを使って、戦うためのロボを完成させるために道具作りから取り組んでいく様子を丁寧に描いていた。ばいきんまんの「天才エンジニア・理想の上司」という側面に光を当てた作品が心に刺さり、ボロボロ泣いた。

反対に、評判が微妙な映画も見たりする。微妙な映画を見るなんて無駄だと思われるかもしれないが、世間の評価が微妙な作品であっても、自分ではどこかに面白いと思えるポイントがあったりして、それを見つける楽しみがある。

ストーリーがつまらないと思ったらセットや撮影技術に注目したり、不自然な演出を見つければその意図を考えたり、微妙な演技を見て「どうしてこの人が重要人物にキャスティングされたんだろう」と考えたり。見終わったら感想を書いたり、疑問に思ったところを検索したり、同じような感想を書いている人を探したり、楽しみ方は無限大だ。

そういう他とは違った面白ポイント満載の映画のことを、個人的に「トンチキ映画」と呼んでいる。万人から高評価を受ける作品から漂うある意味画一的で絶対的な面白さとは違って、トンチキ映画に潜んでいる「少人数にだけ刺さる尖った面白さ」は格別だ。

自分と同じような“トンチキ映画愛好家”たちは意外と多くて、見に行く前にSNSなどで作品の情報をチェックしようとすると、うっかりネタバレをくらいかねない。だから、見に行くと決めたら情報を遮断するか、公開直後など評価が固まる前に見に行くと、新鮮な気持ちで楽しめる。

キンプリに出会ったのも「なんか知らないけど話題になってる映画」をほぼ予習なしで見に行った結果だ。いつものように脳みそフル回転で面白がろうとしたけど、あっという間に自分の処理能力を超えて、脳が感想の言語化を拒否して、何もできなかった。完全敗北である。

その後、せっかくだから応援上映を見てやろうと飛び込んだ日が、たまたま登場人物の誕生日記念上映という偶然があり、コスプレ参加者も含めた満員の観客で応援の熱量に圧倒された。それから、数十回の鑑賞に至るキンプリ通いの毎日が始まった。

もともとが土曜朝放送の女児向けアニメのスピンオフなのと、若い男性声優が多数出演しているため、メインのファン層は若い女性が多い。当時30代の男は浮いた存在だったが、作品に対する愛では負けていなかったし、好きなものを語るときに年齢差はさほど問題にならず、自然と食事会や鑑賞会にも誘われるようになり、コミュニティーが形成されていった。

年齢差のあるコミュニティーで、良い関係を築いていくために大切なこと

私が若い頃は、20歳も年上の人と対等の関係を築くことなど想像できなかった。しかしこうしたコミュニティーに参加して驚いたのは、そこにいる若い人たちは年齢や性別をさほど重要視していなくて、驚くほどすんなりと自分を受け入れてもらえたということ。同じ作品を好きな同志として見てもらえたのだと思う。これがもし、作品を口実に若い人たちに近づこうとする下心が少しでもあれば、明確に拒否されていただろう。

こうして、私はエンタメを通してかけがえのない友人関係を築いたり、生きる活力を得たりしている。

親子ぐらい年の離れた友人たちとは今も親しくしてもらっていて、定期的に皆で一緒に遊びに行ったり、自宅で食事会や鑑賞会を開いたりしている。夏には花火や流しそうめんをして、冬には鍋を囲むのが恒例になっている。

おかげで、同年代とだけ遊んでいたらめぐり会えなかった作品を紹介してもらったりして、趣味の範囲が大きく広がった。こちらも最近の作品にひっそりと入れられている古い作品のオマージュの元ネタを紹介するなど、お互いに知識をシェアするWin-Winの関係を築けていると思う。

ただし、年齢差があるゆえに、コミュニケーションの際に十分気をつけていることがある。年齢差があると、どうしても年下の方が気を使ってしまうものだ。

まずは「特定の相手に作品を薦めない」ということ。SNSなどで不特定多数に勧めるのはOKだが、特定の誰かに対して「この作品を見てほしい」と言うと、その人との関係性によっては圧力になってしまうと思う。人生は有限なのだから、その時間で何を楽しむのかは本人の意志で選ぶべきだ。

そして、特に「金銭感覚」ではギャップが生まれやすいだろう。年上だからと安易におごろうとすると遠慮されてしまうが、私はそういったことを防ぐ便利な方法を持っている。

私が大学に通っていた頃に先輩からご飯をおごってもらい「お返しはいらない。その代わり、自分の後輩におごってやれ。オレも先輩からそう言われた」と言われた。その話をするとお互い気持ちよくおごることができる。たぶん、その先輩には片手で数える程度にしかおごってもらってないけど、エピソードを便利に使いまわしているのでとても感謝している。

また、自宅で食事会や鑑賞会を開いたときは、使った経費をあえて計算したり請求したりせず、帰り際に部屋の隅に置いた“賽銭箱”に好きな額で“お気持ち” を入れてもらう。金額はいちいち確認しない。数年に一度中身を取り出して自宅でエンタメを楽しむための家電などを購入することで、また友人たちにも楽しんでもらうことができるのだ。

映画を趣味としていて一番うれしい瞬間は、私が書いた感想を見て興味を持って見てくれた人が、私と同じように楽しんでくれたのを見たときだ。新鮮な感想は、その作品と初めて出会った時の感動を思い出させてくれる。そのためにも、自分が好きな作品を無理に薦めることはしたくないと思っている。

自分もこれからも新しい作品で刺激を受けて、そこからつながる仲間を増やしていけたら幸せだと思う。

あの2016年の冬、気まぐれで見に行ったキンプリは私の人生を変えた。作品がもたらしたきらめきは、日々の生活に潤いを与え、心の栄養となり、かけがえのない友を見つけてくれた。

これからも新しい出会いを求めて映画館に通い続けたい。今回の記事を読んでくださったみなさんも、ちょっと勇気を出して、人生を変える作品と出会ってほしい。

筆者プロフィール
あれっくす
あれっくす 任天堂ファンサイトを30年近く運営して任天堂の株主総会に毎年出席している。最近は老後もゲームを楽しむためのアクセシビリティに興味がある。

編集:はてな編集部

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