介護はひとりでしない!家族・親族と介護ヘルプ体制を仕組み化して、私は仕事を辞めません。 <最終回>

親が突然倒れた、さぁどうする?

会社員歴20年、その後クリエイティブコンサルタントとして独立し8年。

仕事一筋で生きてきた、介護のことなんてまるでわからない独身ワーキングウーマン、中村美紀。

突然母が倒れ、その半年後に父も倒れるという同時多発介護になったのが48歳。

その後、仕事と介護の両立にてんやわんやしながら、

仕事人間としての特性を活かし、「ビジネス思考」でなんとか介護を乗り切っていくという、

壮絶だけど、コミカルな記録。

両親が同時に介護になってから3年半。今までの介護生活を振り返ってみる

介護施設に入居している母

母のこれまで

● 健康には気を遣い、毎晩2kmのウォーキングをしていた母が急に倒れる。
● 手術で一命を取り留めたが、右半身麻痺となり、失語・失行・全介助の生活に。
● リハビリのため老健へ入居。
● 利き手が麻痺で動かず食事がとれなくストレスに。(おにぎりにしてもらうことで解決)
● 老健から特養へ。
● 食事がとれなくなり、胃ろうにするかの決断を迫られる。

数ヶ月前に第六波コロナに罹患しました。

当時ニュースにも取り上げられていた「入院できる病院がみつからない」問題に我が家も遭い、母はみるみるうちに重症化。

しばらくすると入院でき、数ヶ月後には体調も回復したのですが、最後まで食欲だけはなかなか戻らず、医師から「胃ろう」にするかどうかの決断を迫られました。

実は以前も、この胃ろう問題にぶつかったことがあります。

前回胃ろうにするかどうかの判断を求められた時にはなかなか決断できず、専門家や経験のある友人など12人にヒアリングし、判断のヒントとなる情報収集に努めました。

2022/06/02

親を「胃ろう」にするか決断を迫られたら--後悔しないためにヒアリングを徹底する。

今回はというと…前回同様、胃ろうにするかどうかの決断前に、母の食欲が復活!

私にとっては、二度目の奇跡が起きた!という感じです。

今では容態も落ち着き無事退院、介護施設に戻ることができました。

在宅介護の父

父のこれまで

● 母が入院して少したった頃に、父に異変が見え始める。
● 老人性うつが発覚し入院。
● 要介護認定を受けることを拒否。
● デイサービスを嫌がる。
● 在宅勤務中、会議中に邪魔をしてくる
● 病気の影響からか、嘘をつくようになり家族が振り回される。
● 気力低下で、火の付けっ放し、玄関の鍵が開けっ放し。
● 担当ケアマネジャーを変えたいと言い出す。
● 勝手に宅配を止めたり、体重減が止まらなくなったり、食事問題に家族は苦しむ。
● 物取られ妄想が発生、軽度の認知症が発覚。

母は毎日食事を作ってくれていたので、母が倒れた後に父の食事をどうするかが大きな問題となりました。

高齢者向けお弁当の宅配を頼みましたが、気に入らなかった父は、勝手にお弁当をストップしてしまいました。

2022/06/02

在宅介護のごはん問題ーー父が勝手に宅配弁当をストップ!?4つの「問題解決ステップ」で乗り切る

なんとか自分たちで乗り切っていたのですが、その後父の体重が12kgも減るという問題が起き、ケアマネジャーをはじめ専門家のみなさんに相談しながら解決を図りました。

2022/06/02

介護の父の体重減が止まらない!?専門家と一緒に、父の食事問題を解決する仕組みを考える!

今後を考えた時に、問題が起きる前に何か対策が打てればとビジネスシーンでよく使われる「SWOT分析」を自分に行ったところ、弱みである家事炊事部分、「父の食事」の脆弱さが浮き彫りに。

2022/06/02

親の介護で無理をしない方法!自分の生活も守るための対策を戦略的に考えるコツ

今回は最終回。

最後に、恒常的に問題解決を図ることを目指した我が家の対策を紹介します。

介護ヘルプ体制を仕組み化できれば、これほど心強いことはありません。はたして可能なのでしょうか。

高齢の父の食事問題を解決するために!姉と叔母を巻き込み「仕組み化」を図る

父の食事問題に対しては、今までもいろいろ対策を講じてきました。

私は家事炊事が苦手なので、他の人に協力を仰ぐ形で動いたことがあります。

しかし、ケアマネジャーに「介護ヘルパーを依頼したい」という形で相談した時には、父の介護レベルだと難しいと言われました。

それなら親族にと叔母に相談した時には、やんわりと断られました。

父の食事の準備をなんとか仕組み化したいと考えた時、協力をお願いしたいと考えたのは姉と叔母でした。

断られたことがある叔母に対しては再チャレンジです。

その時の反省を踏まえて再設計し、以下のステップで進めました。

【我が家の「介護ヘルプ体制の仕組み化」実行プラン】

Step1:「依頼内容」をはっきり伝え、心配事は事前に取り除く(2か月前)

前回叔母に断られた理由は、「何を依頼するのか」がはっきりせずに、叔母自身が「自分にできるのか」という判断がしにくかったことにあると考えていました。

今回はこの反省をふまえ、姉と叔母には「週一回来訪し、父の3日分の食事を作ってほしい」とはっきり伝え、特に叔母には不安を感じているような素振りがみられたら丁寧にヒアリングし、一緒に解消するようにしました。

今回の介護ヘルプはいくらかばかりの謝礼を設定しましたが、姉にはこれが刺さりました(苦笑)。

Step2:正式に依頼内容を書面で提示する(1か月半前)

口頭伝達のみだと齟齬が発生する可能性があると思ったので、まるでお仕事をお願いするように「依頼書」を作成し、事前に渡しました。

前回の反省点でもある「依頼内容の不明確化」を、文面でも伝えることで解決しようと考えたのと、よくある「言った・言わない」問題を起こさないためです。

Step3:トライアル期間を設ける(1か月前)

初めてお願いする件なので、実際行ってみたらいろいろ課題が出てくるだろうと思いました。

よって「トライアル期間」と名づけた期間を設け、何かあったらお互い意向をすり合わせてどんどん変えていく、というスタンスで取り組みました。

Step4:本格的スタート

トライアル期間で課題が洗い出せ、解消することができていれば、継続して実行することができている形、すなわち「仕組み化」できているはず。

ですが、実行する前は「もし何か起きたらどうしよう」と心配がつきませんでした。

すると叔母からは「もし何か起きたらその時に解決すればいいよ。ここまで試したんだから」との発言が。

トライアル期間を設けたことが、叔母の自信にもつながったようです。

最終的には、姉よりも叔母の方がやる気満々になってくれました(笑)。

ポイントをあげるなら、依頼主としての確固たる意志と、仕組みは一緒に作り上げるというスタンスでしょうか。

介護ヘルプ体制の仕組み実行から1か月。今のところ順調です!

この運用は2022年春から開始させました。

この春から私は仕事の関係で、実家と仕事部屋のデュアル生活になり、父とは週末しか一緒に過ごせない形になったのですが、この介護ヘルプ体制を仕組み化したことで、順調に仕事に打ち込めています。

父は、今までのように毎日一緒にいることができなくなる私に対し、「仕事の都合だろ、応援するよ」と言ってくれました。

私も父に不安を抱かせないよう、毎朝電話をかけて話すようにしています。

このように、私の苦手な領域である家事炊事に対して親族を巻き込み、「仕組み化」「習慣化」させることで恒常的に解決が図れたことは、そもそもの課題解決という観点だけでなく、心配ごとが減り、私の心理的負担も軽くさせました。

この先も、何かとトラブルは起きるのでしょうが、なんとか工夫して介護と仕事の両立を図っていこうと思います。

最終回なので最後に一言、「同時多発介護になっても、私は仕事を辞めません!」

(おわり)

まとめ

  • SWOT分析で改めて再認識した「父の食事の脆弱性」に対しては、今まで何度となく対策を講じてきましたが、最終的に「仕組み化」することで解決を図りました。
  • 親族による介護ヘルプ体制を仕組み化については、ケアマネジャー・訪問看護師・デイサービス責任者・かかりつけ医師など、介護専門関係者にも事前に伝え、何かあった時のバックアップのお願いをし、環境を整えました。
  • 介護生活を振り返って皆さんに一番伝えたいこと。やはり介護で一番大変なのは、生活環境がガラリと変わってしまう初期。初動をどうするかが大事で、私は何もわからず自分自身で何とかしようと遠回りをして苦労してしまいましたが、早々に「地域包括支援センター」に相談し、担当の「ケアマネジャー」を付け、相談しながら進めていけばと違ったと思います。
  • これからも介護のトラブルはいろいろあるとは思いますが、引き続き前向きに対応していこうと思います。皆さまの介護生活も、ご自身のお身体に気をつけて、一緒に乗り越えられますように。

▼過去の連載記事はこちら

2022/06/02

介護にも「ビジネス思考」は役に立つ

中村美紀
中村美紀 クリエイティブコンサルタント・編集ディレクター

(株)リクルートフロム エー、(株)リクルートに20年在籍し、副編集長・デスクとして10以上のメディアにかかわる。2012年に独立し、紙・WEBメディア設計、編集コンテンツ企画制作、クリエイティブ研修講師、クリエイティブ組織コンサルタントなどを請け負う。 国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE,Inc. GCDF-Japanキャリアカウンセラーでもある。

プロフィールhttps://miki-nakamura.com/ブログhttps://oyakaigo.miki-nakamura.com/ 中村美紀さんの記事をもっとみる

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