親が突然倒れた、さぁどうする?
会社員歴20年、その後クリエイティブコンサルタントとして独立し8年。
仕事一筋で生きてきた、介護のことなんてまるでわからない独身ワーキングウーマン、中村美紀。
突然母が倒れ、その半年後に父も倒れるという同時多発介護になったのが48歳。
その後、仕事と介護の両立にてんやわんやしながら、仕事人間としての特性を活かし、「ビジネス思考」でなんとか介護を乗り切っていくという、壮絶だけど、コミカルな記録。
介護施設にいる母がコロナに罹患しました。
なかなか病院が見つからず悪化。緊急呼び出しを3回受けました。医師からは毎回最悪のケースを説明されましたが、姿も見ることも会うこともできないので、実感が湧かない中で大変な思いをしました。
在宅介護の父は軽い認知症と診断されました。
先日は、お昼過ぎになっても寝巻きのままで、朝からご飯を一食も食べていないと言いました。私はびっくりして、日常生活がままならなくなってきた!?と不安に陥り、急いでご飯を食べさせました。
なかなか厳しい介護の現実。
できればどこかを強化して、この先はよりスムーズに対応していきたいです。
今までは、主に何か起きてから対策を講じてきましたが、先んじて打てる打ち手はないものでしょうか。
いいことを思いつきました。
改めて自分の「強み・弱み」を整理し、「強みを活かし、弱みをなくす」方向で、戦略を練り直すのはどうか。
そう、ビジネスフレームワーク的に考えると「SWOT分析」。このSWOT分析を自分に対して行ってみようと思うのです。
SWOTとは、以下の4つの頭文字。
本来は事業などを、内部環境(自社がもつ資産やブランド力、品質など)のプラス要因「①強み」とマイナス要因「②弱み」、外部環境(自社を取り巻く、市場や競合、法律など)のプラス要因「③機会」とマイナス要因「④脅威」、四象限に分けて整理し、精度ある打ち手につなげるという方法です。
この考え方をアレンジして「介護における自分」に対して行ってみます。
私は長いお仕事経験から、問題解決という視点に立つと、なるべく感情をおさえ論理的に解決しようとします。また、組織を束ね、リーダーシップを執った経験を持ちます。
仕事ばかりしていたので、家事炊事が苦手。料理にはあまり興味が持てません。研修企画・講師をしているのもあり、お仕事における人の世話(いわゆる教育など)などは得意としますが、日常生活の人の世話(いわゆる介護など)は得意ではありません。
これは「外部に向けて強みを活かすとしたら」と考えてみます。
例えば、今まで介護で何かトラブルが起きたら、「親族を巻き込んで介護の協力を仰ぐ」「専門家に率先して相談する」「専門家を呼んで会議を開きファシリテーションをする」などをしてきました。これは自らアクションを起こし解決策を見出すように動けると言っていいかもしれません。
これは「外部を利用して弱みをカバーするとしたら」と考えてみます。
例えば、要介護5の母の世話は自分たちで行うのは限界があると判断し、介護施設入居を決断しました。
そして在宅介護の父の食事。一度、高齢者向け宅配弁当を頼んだのですが、父が嫌がり継続できませんでした。代わりとしてバランス栄養食の定期宅配と、私が出来ることとしてみそ汁だけでも作る、とました。
これは、私が苦手とする人のお世話は、「お願いできること」と「自分ができること」を分けて考え、依頼できることは依頼する、としてきたと言っていいでしょう。
しかし今の状態をあらためてみると、大事な父の食事自体は脆弱な状況であることは否めません。
強化すべきは父の「食事」。これを「外部に依頼して強化する」というのが次の打ち手とするとよさそうです。
自分なりの結論が見出せました。
実は以前、ケアマネジャーに介護ヘルパーを依頼し、食事のフォローをしてもらおうか相談をしたことがあります。
その時は、「父はまだまだ自分でできることも多く介護度的に言うと軽いので、介護サービスとして利用するのは難しいかもしれない」という回答でした。
この時は結局自分たちでなんとかしようと正式な依頼をせずに終わったのですが、今はその時と状況が違います。
私は将来的な部分も見据えて、何か起きたら私一人で対応策を考えるという現状から、日常的に誰かに関わってもらう状況を作りたいと思っています。
であれば関わってもらう形として、「親族」に「苦手な食事のフォロー」を頼むのが、我が家にとって一番良い形です。
ではどういう形で頼むのがいいでしょうか。
日常的に関わってもらうには、習慣として仕組み化しなければなりません。体制を組み、運用にのせるという形を目指すとしたら…これには一考が必要です。
でも逆に言えば、介護支援体制として仕組み化できれば、こんなに強いことはありません。
ますます実行した方がいいと思えてきました。
私にとって苦手な食事のフォローを頼める親族は、姉と叔母。
実は叔母には、一度声をかけたことがあるのですがやんわり断られました。
今回正式にお願いするのであれば、
などを整理し、「何を依頼されたのか」「それは自分にできるのか」を判断してもらえるような形にする必要があるでしょう。
う〜む、なかなか形にするのは大変そう。でも「仕組み化」できば、鬼に金棒です。
…というわけで先にネタバラシをしますと。
今原稿を書いている時点で、無事姉と叔母に協力を仰ぐことができています!
私は、どのように動いて「親族による介護支援体制の仕組み化」を現実にしたのか。
すべては、「親を介護する状況になっても安定した日常生活を過ごす」ため。
そして「介護と仕事の両立を継続する環境を整える」ため。
大事なのは「親の介護環境は、ちょっと先の将来を見据えて自分なりに強化し続ける」こと、と最後にして気付けました。
そう、次回この連載は最終回。
この仕組み化した、親族による介護支援体制の運用までの道のりを、次回は具体的に紹介する予定です。
最後までお付き合いください!
・介護の親の体調が変化するたびに毎回対応を求められます。急激な体調悪化による場合などは緊急度が高く、その度に動揺します。これは毎回相当なストレス。常日頃なんとかしたいと思っていました。
・どこを強化すればいいのかと考えた場合、私は「自分SWOT分析」で、「弱みをカバーする」方向で強化を図ることにしました。
・「介護の親に対し、日常的に関わっているのが自分一人で脆弱」「在宅介護の父の食事が脆弱」この2点の弱点を補う方向で、「食事支援を行う、親族による介護ヘルパー化」を考えました。
・親族には継続的に支援してもらいたいので、支援される側(私)だけでなく、支援する側(親族)目線で体制を組むことが重要だと思いました。実際運用するのに、何度か親族と話し合いをして運用ルールを整えていきました。
(株)リクルートフロム エー、(株)リクルートに20年在籍し、副編集長・デスクとして10以上のメディアにかかわる。2012年に独立し、紙・WEBメディア設計、編集コンテンツ企画制作、クリエイティブ研修講師、クリエイティブ組織コンサルタントなどを請け負う。 国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE,Inc. GCDF-Japanキャリアカウンセラーでもある。
中村美紀さんの記事をもっとみるtayoriniをフォローして
最新情報を受け取る