親が突然倒れた、さぁどうする?
会社員歴20年、その後クリエイティブコンサルタントとして独立し8年。
仕事一筋で生きてきた、介護のことなんてまるでわからない独身ワーキングウーマン、中村美紀。
突然母が倒れ、その半年後に父も倒れるという同時多発介護になったのが48歳。
その後、仕事と介護の両立にてんやわんやしながら、仕事人間としての特性を活かし、「ビジネス思考」でなんとか介護を乗り切っていくという、壮絶だけど、コミカルな記録。
母が突然倒れ、その後父も倒れ介護となり、いろいろな介護スタッフと出会いました。
私はそれまで介護に携わることはなかったので、初めて知ることばかりでしたし、初めて会う専門家の方もたくさん。いろいろな状況でいろいろな方に会いましたが、みなさん良い人ばかりでした。
ある時、ふと思ったのです。
「介護に従事しているみなさんは、なぜ親切な人が多いのだろう?」
私が何か問題や悩みを伝えるたびに、みなさん解決に向けて真剣に取り組んでくれます。プロだからあたりまえ、と言われるとそうなのですが、その「あたりまえ」を貫くのは難しく尊い、とも思います。
私は実は、国家資格キャリアコンサルタントでもあります。
仕事は、やりがいを感じることができたり、楽しいと思えたりする方が継続しやすいです。しかし、何にやりがいを感じるのか、楽しいと思えるのかは人それぞれ。
逆を言えば、その仕事で実感しやすいやりがいをつかめば、そこで働く人々の傾向もわかる、つまり介護の仕事を楽しいと思える人の傾向もわかる、ということになります。
介護スタッフの方々が、仕事としてどのようなことにやりがいを感じ、どのような傾向を好むのかがわかれば、これから物事をお願いする時のコミュニケーションに活かせるかもしれません。
今回は少し思考を変え、職業選択理論で用いられる「RIASEC(リアセック )」と呼ばれるパーソナリティ・タイプから、介護を職業として見たときの適性や傾向の話をしてみようと思います。
後半には、みなさんのタイプがわかる、筆者がオリジナルで制作した「職業興味タイプ診断」もありますので、気軽な気持ちで読んでみてください。
「RIASEC(リアセック )」とは、ジョン・L・ホランドが提唱する、職業選択理論で設定した「パーソナリティ・タイプ」のこと。
ホランドは「職業はパーソナリティ表現のひとつ」を基本的理念としています。「さまざまな問題に取り組むとき、その姿勢や方法に特徴がある」とし、そのパターンを「パーソナリティ・タイプ」として設定しました。
ホランドが設定したパーソナリティ・タイプは、以下の6つです。
この6つのタイプの頭文字をとって「RIASEC(リアセック )」と呼ばれています。
興味や嗜好の傾向がわかれば、マッチする職業の傾向もわかります。例えば「現実的タイプ(Realistic)」にマッチする職業例としては「建築士」「技術者」「運転手」「大工」などが考えられます。
「RIASEC(リアセック )」 は、適性検査や就職・転職時の参考になるとして、さまざまな形で利用されているのです。
この特徴から見てみると、介護に従事するみなさんは「社会的タイプ(Social)」の方が多そうです。
「社会的タイプ(Social)」は、人に教えたり、援助したりと、人と一緒に活動することにやりがいを感じ、高いコミュニケーション能力を持つ傾向にあります。人に対して敏感で寛大、責任感も強いタイプとされています。
このパーソナリティの傾向が見えたとき、私はこう考えました。
「介護に従事する方の多くが、“人を援助するのが好き”と思ってくれているのなら、積極的に相談してもいいんだ」
私はそれまで「介護スタッフに頼るのは悪い」という、もやもやした気持ちがありました。
しかし、介護スタッフの職業興味の傾向をとらえられたことで「遠慮せずに困っていることを相談してみよう」と思えるようになったのです。
ホランドは「RIASEC(リアセック)は、あくまで理解を容易にするために類型化したもの。全員を分類されたタイプに適合させようとすると、中間タイプの存在が無視される可能性がある」としています。
つまり、全員がこの傾向に「必ず」当てはまるわけではありません。
ですが、「必ず」でなくとも傾向がわかったら、打ち手を講じた方が望む結果が得やすいです。
利用者の家族が「何に困っているか」を明確にし、その状況や思いをしっかり伝えれば、介護スタッフのみなさんは、専門家としての知識とスキルで支援してくれるはず。
それは結果的に介護する親に還元され、介護生活の質が上がるはず。
そう信じ、今では遠慮なく相談できるようになりました。
私の本業はクリエイティブコンサルタント。雑誌やサイトのコンセプトプランニングや、制作を手がけています。
キャリアコンサルタントの知識を活かし、このホランド理論をもとに、これまで適性診断系の読み物コンテンツをいくつか制作してきました。
そこで!
思い切って、介護バーションの簡単なタイプ診断を作ってみました。
あなたはどのタイプですか?
気軽な気持ちでお楽しみください。
町内で介護コミュニティを作ることになりました。立ち上げ時には、あなたも手伝うことに。6つある役割の中で、何を担当しますか?
優先順位をつけて、3つ選んでみてください。
※ホランドは、タイプを1つに限定するのではなく、3つ選んで「人は6種類の人間しかいない」という問題を解消しようとしています。
1. 利用者の方が楽しめる、パズルやカードを作る係。
2. 他の地域の介護コミュニティを調べて、運営の工夫やヒントを分析し共有する係。
3. 利用者が増えるように、ポスターや飾り付けを制作する係。
4. 利用者の方々のおもてなしをする係。
5. かかる費用を算出し、集め方を考え集金する係。
6. コミュニティに必要な備品を考え、準備・管理する係
いかがでしたか。
「RIASEC(リアセック)」によるタイプ診断は「優劣」や「正誤」ではなく、あくまでも「興味」がベースです。
経験などにより興味が変化すると、選択も変化すると教わりました。定期的に行って見直すと良いようです。
自分の傾向もわかり、相手の傾向もわかるのが、スムーズなコミュニケーションの第一歩。
気軽にとらえてお楽しみいただきたいですし、少しでも参考になれば幸いです。
・介護で出会うみなさんは親切な人が多い(筆者の場合)。その傾向は「RIASEC(リアセック )」という職業選択理論(ホランド理論)でとらえることができそう。
・介護の仕事を職業として見たときに、従事する方のやりがいや傾向がつかめれば、利用者の家族としてお願いしやすいと考えた。
・人と接する活動を好むのは「社会的タイプ(S)」で、介護従事者に多そう。この方々は、人に教えたり、支援したりすることにやりがいを感じる傾向がある。
・「社会的タイプ(S)」は感受性が強く、人の気持ちに敏感な傾向があるそう。逆を言えば、状況や感情がわかりにくかったり、好き嫌いの傾向が見えなかったりすると活動しにくいのかもしれない。
・それをふまえると、利用者の家族は「何に困っているか」「何が良くて何が嫌か」など、遠慮せずに明確に伝えてから頼りたい。その方が介護スタッフのみなさんは支援しやすく、パフォーマンスを上げてくれそう。
(株)リクルートフロム エー、(株)リクルートに20年在籍し、副編集長・デスクとして10以上のメディアにかかわる。2012年に独立し、紙・WEBメディア設計、編集コンテンツ企画制作、クリエイティブ研修講師、クリエイティブ組織コンサルタントなどを請け負う。 国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE,Inc. GCDF-Japanキャリアカウンセラーでもある。
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