「今日デイサービスの人に、痩せたね〜って言われちゃったよ」
親が突然倒れた、さぁどうする?
会社員歴20年、その後クリエイティブコンサルタントとして独立し8年。
仕事一筋で生きてきた、介護のことなんてまるでわからない独身ワーキングウーマン、中村美紀。
突然母が倒れ、その半年後に父も倒れるという同時多発介護になったのが48歳。
その後、仕事と介護の両立にてんやわんやしながら、仕事人間としての特性を活かし、「ビジネス思考」でなんとか介護を乗り切っていくという、壮絶だけど、コミカルな記録。
母が倒れて約半年。
母が倒れたことをきっかけに、父の食事は、安定して取ることを優先し「高齢者向け宅配弁当」を頼むことにしました。
父も試食をした上で契約したのですが、しばらくすると気に入らなくなったのか勝手にストップ。
「自分で買いに行く」と言いだしました。
ダイジョウブかな〜と様子をみたら、バランスまではなかなか気がまわらないのか、徐々に食事が偏りがちに。
これではまずいと姉に相談し、ああだこうだ言いながら、1週間の食事プランと、購入リストを記入した「我が家オリジナルの献立表」を作りました。
リビングに張り出し、父が利用しているのも確認できたので、これでなんとか乗り切れたかなと思っていたのですが…。
問題が浮上します。
「今日デイサービスの人に、痩せたね〜って言われちゃったよ」
確かに痩せました。母が倒れてしばらくは、父も私も体調を崩してお互い6kg痩せ、「同じだね」などと話していました。
私は、体調が戻るとともに体重も戻ってきたのですが(体調は戻り、体重は痩せたままが理想でしたがダメでした苦笑)、そう言われると父はまだ痩せたままです。
「お母さんが倒れる前と比較すると、何キロ違う?」
「前は68kg、今は56kgだから…」
「―12kg!?」
6kgどころの騒ぎじゃなかった!驚きました。毎日一緒にいるとなかなか気づけず、反省しました。
原因は食べ物のせい? 食事問題は解決できなかったのでしょうか?
私は、これ以上自分たちだけで解決策は考えられない〜と早々に判断し、ケアマネジャーに連絡しました。
「父の体重減が止まりません。かつてと比べたら―12kg!相談したいです」
「わかりました。みんなで集まって対策を考えましょう」
さすがケアマネジャーさん、頼もしい!
さっそく我が家で、政府専門家会議ならぬ、父の介護専門家会議を開くことになりました。
「お父さんの体重が減っているので相談したい、と娘さんからの依頼で集まってもらいました」
「オリジナルの献立表を作ったりと工夫もしているのですが、父の体重減が止まりません。みなさんからみて父の様子はどうですか」
「お父さまの体調ですが、バイタル上は問題なし、食欲も問題はありません」
「デイサービスの食事も問題なく召し上がられていますし、運動もされています」
「それは安心しました。ですが、体重がかつてと比較してー12kg。これは問題ですよね?」
「体重チェックはしていますか?していないなら実施することは可能ですか?」
「毎回バイタルチェックはしているのですが、体重は数カ月に一回という頻度です。バイタルと一緒に体重も計るようにしましょうか」
「体重計をお借りできれば、毎回バイタルと一緒にチェックします」
私は、自分が父の体重減に気づけなかったことから、「体重管理の仕組み」と「問題発見の仕組み」をいかに作れるかが大事だと考えていました。
介護サービス利用時に体重測定をルーチン化できれば、一番確実です。
「ありがたいです!みなさんには毎回バイタルチェック時にあわせて体重測定も行っていただき、何かあれば連絡をもらえるようにしたいのですが、どうでしょうか」
「わかりました。デイサービス日誌にも記録を残すようにします」
「訪問看護日誌にも体重を記入し、何かあればメールで連絡入れますね」
「助かります!」
あとは、体重を増やすための対策です。考えていたプランを相談してみます。
「ちなみに父のー12kgという減り方は問題ですよね?バランス栄養ドリンクの定期宅配も検討しているのですがどう思われますか?」
「高齢者は筋肉量が減るので、どうしても体重は減っていく傾向にあるのです。なるべく減らないように、という中で、バランス栄養ドリンクの摂取をされるのはとてもいいと思います」
「なるほど!そもそも体重は減りがち、ということなんですね。バランス栄養ドリンクも良いということで安心しました。さっそく注文することにします」
解決策が見えてきました。
現役世代にとっては、なったことのない高齢者の理解はやっぱり難しい。専門家の方々に相談してよかった、と思いました。
父の体重減対策がみえてきてホッとしました。
できればあと一手、体重を増やす工夫は何かできないものか。
私は家事炊事が苦手。加えて現役働く世代、なかなか毎日父の食事を作るのは難しいのですが、それでも私にできることは、本当にないのかな…。
「あった…みそ汁だ」
テーマは「食べるみそ汁」。具をいっぱい入れて、たっぷり作って小分けにし、父はレンジにかけるだけで食べられるようにしておく。
私も、「みそ汁を作る」と決めてしまえば、毎回何を作るか考え、いろんな食材を用意しなければならない、ということもなく負担も軽い。かつ、栄養たっぷり!
加えて、父の欲しかったであろう「人肌感」も感じられるはずです。
これなら出来そう!
今までインスタントにしがちだったみそ汁。なんとか毎回自分で作って、常に父が食べられる状態にしよう、と決めました。
しばらくして。デイサービスから帰ってきた父。報告をくれました。
「体重が1kg増えたよ〜」
おーやったー!!
料理嫌いの私でも、テーマを「食べるみそ汁」と決めたことで、トマトを入れたり、しらすを入れたり、たまにはネギでなく玉ねぎにしてみたりと、工夫する余裕が出てきた矢先でした。
自分でも「楽しむ」ことで「継続」させる狙いです。
効果が出たのであればこんなに嬉しいことはありません。
紆余曲折した父の体重減対策。効果という形で明るい兆しがみえはじめました。我が家はしばらくこの方向で続けようと思います。ホッ。
・「高齢者向け宅配弁当」はカロリーも塩分も計算されて安心。…ですがうちの父は、「変化感」「人肌感」を欲したようで、継続できませんでした。
・高齢者は筋肉量が減りがちで、体重が減ってしまう傾向にあるそう。なんとか維持できるように、と考えると、食事は最重要課題。
・家族の工夫に限界を感じたら、早々に専門家に相談。
・起きることが予測される問題は、毎回対応を一から考えるのは大変なので、「仕組み化」を意識した解決策を考えておくことをおすすめ。
(株)リクルートフロム エー、(株)リクルートに20年在籍し、副編集長・デスクとして10以上のメディアにかかわる。2012年に独立し、紙・WEBメディア設計、編集コンテンツ企画制作、クリエイティブ研修講師、クリエイティブ組織コンサルタントなどを請け負う。 国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE,Inc. GCDF-Japanキャリアカウンセラーでもある。
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