在宅介護のごはん問題ーー父が勝手に宅配弁当をストップ!?4つの「問題解決ステップ」で乗り切る

親が突然倒れた、さぁどうする?

会社員歴20年、その後クリエイティブコンサルタントとして独立し8年。
仕事一筋で生きてきた、介護のことなんてまるでわからない独身ワーキングウーマン、中村美紀。

突然母が倒れ、その半年後に父も倒れるという同時多発介護になったのが48歳。

その後、仕事と介護の両立にてんやわんやしながら、仕事人間としての特性を活かし、「ビジネス思考」でなんとか介護を乗り切っていくという、壮絶だけど、コミカルな記録。

父のために頼んだ「高齢者向け宅配弁当」を、父が勝手にストップ!
なんで!? どーして!?

母が倒れて約半年。
母は退院後、介護施設に入居することになりました。

それまで食事は母が全て賄ってくれていたので、父の食事をどうするかについては我が家にとって死活問題でした。

私は仕事中心の生活で家に居ないことも多く、父の三食を背負うのは難しいのが現状。

父は火の消し忘れも何度かあり、レンジしか使わないことに決めました。ですが、冷凍食品でも細かい段取りになると解釈するのが面倒として触ろうとしません。

父と相談した結果、基本的には毎日「高齢者向け宅配弁当」を頼み、オプションとして他に何か食べたいものがあれば父自身で買いに行ったり、余裕があれば私が作ったりする、という形を取りました。

父は、母が倒れたショックで精神的な病気になり在宅介護になりましたが、体自体は動かせます。

私は、ショックで塞ぎ込む父には、散歩に行ったり、買い物に行くことでなるべく体を動かしてほしい、外に出て欲しい、と思っていました。


高齢者向けの宅配弁当は、カロリーも塩分も計算され、健康的には申し分はありません。

高血圧の薬を飲んでいる父にはピッタリだと思いました。

問題は「味」ですが、依頼したところは、病院ソーシャルワーカーが「試食して美味しかった」という形で紹介されたところ。

契約前には父も私も試食をし、問題なしという結論でお願いした業者です。


なのに。なのに。

父はこの高齢者向け宅配弁当を、勝手にストップしました。

しかも!

しばらくストップしたことを私には言わずに、「あれ?お弁当きてないの?」と聞いて、やっと自ら止めたことを口にしたのです。

再び浮上した父のご飯問題。

とーちゃん、自分のご飯、どうするつもりなのよ〜。

お弁当を勝手に止めた父。止める前に一言相談が欲しかった…。

なぜ父は、高齢者向け宅配弁当を勝手に止めたのか!?
口にはしない深層心理を探り出す

勝手に自分の宅配弁当を止めてしまった父。

理由を聞いてみました。

私

「なんで勝手にお弁当止めちゃったの?」

父

「まずいから」

うっそ〜。

試食して「まずくない」と確認しましたし、私もちょいちょいつまみ食いをしたことがありますが、カロリー・塩分を計算している割には美味しいと感じました。

それを「まずい」というのは、今更?と疑問がわきます。

これは「味問題」というよりも、お弁当というもの自体が「変わりばえしない」、「母が作ったような、人の愛が感じられない」という問題ととらえた方が良さそうです。

問題のとらえ方を間違うと、打ち手も間違えてしまいます。

「味問題」ではなく、「お弁当問題」だとしたら、他のお弁当業者に変えたところで、解決にはなりません。


父に、止めたところでどうするのか確認してみました。

私

「お弁当止めて、自分でご飯の用意ができるの?」

父

「できるよ」

うっそ〜〜。

すでに私が気付いた時点で、父の食事は偏っていました。菓子パンで済ましたり、カップラーメンで済ましたりしていたのです。

こうなることが嫌だから高齢者向け宅配弁当をお願いしたのに。

「親の心子知らず」ならぬ、「子の心親知らず」です。

しかし「父は高齢者向け宅配弁当を頼みたくない」というのは紛れもない事実。

ここは、「父は自分のご飯は自分でなんとしようとする意識はある」という形で前向きにとらえた上で、「問題解決思考」で冷静に考えてみます。

問題解決思考で、父の食事問題の新たな打ち手を発想する

問題解決のファーストステップは「現状把握」です。

まずは「①今起きている問題点」を整理することと、「②自分たちができること・できないこと」を洗い出そうと決めました。

その上で「③打ち手」を発想し、「④実行」プランを考えます。

早速、整理してみます。

父の食事問題を解決するために考案した問題解決アプローチ。このステップに沿って考えていきます。
【父の食事を「問題解決思考」で考える Part1】

<①「問題点」を整理する>
・父の食事が偏り始めている(菓子パンで済ましたり、ないと食べなかったり)
・父は、雨の日やデイサービスがある日は、外に出たがらない
・父は、買う物も偏りがち。例えば、おにぎりばかり買って、おかずを買うことまで気が回らないこともある。

<② 「できること・できないこと」を洗い出す>
・父は、買い物には行ける
・父は、食事のバランスを考えて買うことまではできない
・父は、毎日は買い物に行かない


こうして整理すると、「父が自分で買いに行ける」というのは大きな強みです。

「何を買うのかバランスを考えた買い物は難しい」ので、「何を買うのかわかるようにする」打ち手が必要そうです。

また「毎日は買いに行かない」ので、「ストック分を視野に入れた量を購入する」という打ち手の方向がつかめました。

これを、父が考えずとも見ればわかるように「見える化」すればいい!

実行にあたり「我が家オリジナル献立表(買い物メニュー付き)」を作成しようと決めました。

【父の食事を「問題解決思考」で考える Part2】

<③「打ち手」を考案する>
・何を食べるのか、考えなくてもわかるようにする。
・買い物を行った際に、何を買えばいいのか判断がつくようにする。
・毎日買い物に行かなくてもいいように、ストック分(量多め)も含めて買うようにする。=いつ何を食べるか、何を買うか、どのくらい買うかがわかる「我が家オリジナル献立表(買い物メニュー付き)」を作成する!

やった!

父の食事問題解決の筋道が考案できた!と思ったのですが…。

私は家事炊事が苦手。献立メニューがさっぱり思いつきません。

こういう場合は、一人で解決は無理、と早々に判断。人の力を借りることにします。

さっそく姉に連絡です。

ねーちゃん助けて!

解決策実行には壁が!
自分でできない時は、人の力を借りて方法を考える

姉に連絡し、父の食事について、今起きている問題を共有しました。

そして、解決策として思いついた「我が家オリジナル献立表(買い物メニュー付き)」作成の協力をあおぎました。

私

「とーちゃんが、何を食べるか、何を・どのくらい買うかがわかる献立表を作りたい。献立メニューを考えるのに協力して」

姉

「わかった!だけど料理が苦手だからメニューが思いつかない…」

そうでした、姉は料理が苦手です。

いやいや、それでも主婦歴30年の実績がある。なんとか二人で知恵を絞ります。

姉

「う〜ん…息子の学校の献立メニューがあるから、それを参考に考えようか」

出たー!新たな解決策です。

甥っ子は中学生。学校の献立メニューは食事のバランスもいいはず。期待できます。

【父の食事を「問題解決思考」で考える Part3】

<④「実行」プランを考える>
・私ひとりでは無理なので、姉に協力をあおぎ献立メニューを考える
・甥っ子中学の献立メニューを参考にする
・購入先と購入できる惣菜ラインナップを把握しておく


 

遠方に住む姉。

息子の献立メニューを持って我が家にやって来ました。

さっそく二人でメニューを考えますが、父の献立は、父がレンジでなんとかなるようなシンプルさと、買うことができる惣菜単位で考えなければいけません。

これがなかなか難しい。

姉

「中学校のメニューってよくできてるね。種類も多くて組み合わせも複雑。どうしよっか」

私

「父の食の好みとして、同じものを繰り返し食べたいタイプだから、一週間分見出せたら繰り返しでOKとしよ」

何もないとイメージがつかないので、ままならなくなる。献立メニューがあればイメージがつくので、何を買うか、どのくらい買うかがわかる。あとは父自身でできる範囲でアレンジするだろうからダイジョブなはず、としました。

こうして二人考えて、一日かけて献立メニュー表を作成しました。

作成した献立表を、さっそく父に説明してみます。

私

「ねーちゃんと協力して、献立表作ったよ。何を買えばいいかも示したから。これで毎日しっかり食べて欲しいんだけど、出来そう?」

父

「おー。ダイジョブ」

うっそ〜〜〜。

そんな簡単に返事してわかってないでしょ!とツッコミそうになりましたが、やめました。

父が献立表に興味を示したからです。

今は出来るか否かを問うのではなく、父の興味を尊重することが大事、としました。

苦手姉妹二人が、父のためになんとか考えた「我が家オリジナル献立表(買い物メニュー付き)」。効果はいかに!?

父、食事をしっかりとれるように。
…と思ったら新たな問題が勃発!?

しばらくして。

私は父に、献立メニューを指しながら「今日はこれを買うといいよ」と毎日声をかけるようにしていました。

父の購入する品数は多くなり、以前よりバランスも取れるようになった気がしますが、作成した献立メニューがどこまで父の役に立っているのか、本当のところはわかりません。

ケアマネジャーの面談日には、一連の流れを共有し、父の食事についてアドバイスをもらおうと聞いてみました。

私

「父がお弁当をストップしてしまって。自分で何食べればいいか、何を買えばいいかがわかるよう献立表を作ったんです」

ケアマネジャー
ケアマネジャー

「お父さんから聞いていますよ。見てわかるから助かっている、と言っていましたよ」

うっそ〜〜〜〜。

驚きました。

父が、この件を自らケアマネジャーさんに話していたなんて!

しかも役に立っていたなんて!

「褒め言葉」は第三者から聞くと、なお嬉しいもの。

ここでやっと実感が湧き、父の食事問題解決の兆しが見えた!と思いました。


毎日ケアしていかなければいけない父の食事問題。

継続するのはそんなに簡単じゃないし、できるもんじゃない!とは思いますが、このまま様子を見ることにしました。

すると…やはり新たな問題が勃発。

一筋縄ではいかない父の食事問題。第二弾は次回お届けします。ふー。

まとめ

  • 介護の親の食事。継続してバランスのとれたものをしっかり食べてもらう環境を作るのは結構大変。
  • 課題の解決は「問題解決思考」で、ステップをふんでいくイメージをもつと考えやすい。
  • 解決策を考えるのに、高齢の親に対して「できない」ことばかりとらえても埒が明かない。ここは前向きに「できること」をプラスにして考えたい。
  • とはいえ、解消したと思ったら、状況や容態が変わってまた新たな問題が発生するのが介護というもの。ある意味タフさもみ必要です。
中村美紀
中村美紀 クリエイティブコンサルタント・編集ディレクター

(株)リクルートフロム エー、(株)リクルートに20年在籍し、副編集長・デスクとして10以上のメディアにかかわる。2012年に独立し、紙・WEBメディア設計、編集コンテンツ企画制作、クリエイティブ研修講師、クリエイティブ組織コンサルタントなどを請け負う。 国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE,Inc. GCDF-Japanキャリアカウンセラーでもある。

プロフィールhttps://miki-nakamura.com/ブログhttps://oyakaigo.miki-nakamura.com/ 中村美紀さんの記事をもっとみる

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