デイサービスも嫌がる親!「チームビルディング」を応用し、「介護支援体制」を自ら作ってしまおう!

親が突然倒れた、さぁどうする?

会社員歴20年、その後クリエイティブコンサルタントとして独立し8年。
仕事一筋で生きてきた、介護のことなんてまるでわからない独身ワーキングウーマン、中村美紀50歳。

大好きな母、馬が合わない父の、突然の同時多発介護にてんやわんやしながら、仕事人間としての特性を活かし、「ビジネス思考」で介護を乗り切っていく、壮絶だけど、コミカルな記録。

デイサービス利用を視野に入れ、「施設見学」へ。しかし父、後ろ向き発言の連続

母が倒れ入院。

そのショックで、父も倒れてしまい入院。

まったく予期せぬ事態で、突然、両親ともに要介護となってしまいました。

父は徐々に回復し、退院が視野に入ってきたのですが、要介護1となった父の退院後の日常生活に不安を覚えた私。

専門家の皆さんに相談してみたところ、「デイサービス」利用の提案を受けました。

私は、退院しても母がいない家では引きこもりになりかねない、デイサービスで友人が作れれば日常生活を楽しく過ごせるだろうから、何としても利用してほしい、と考えていました。

しかし父はプライドもあってか、まったく気乗りせず。

今の段階で、父の気持ちを無視するように、利用を決めつけるのは禁物だと思い、「とりあえず見て、それから考えよう」と父を説得。

ケアマネジャーからもらったデイサービス施設のリストを参考に、見学に行くことにしました。


施設見学に行く移動の車中から、父はすでに後ろ向きです。

父

「俺は行かなくてもいいと思ってるんだけどね〜」

いつものやんわり拒否発言。思えば、デイサービスの話で前向きになったことは、今まで一度もありません。

私

「見たことがないから、一度見てみようよ」

前向きに発言しつつも、毎回の父の後ろ向き発言には、私も少々疲れ気味。とりあえず運転に集中し、後にも続いた後ろ向き発言は聞き流しました。

父の、繰り返されるやんわり拒否発言に、少々疲弊気味の私

同じようで違うデイサービス施設。「特性」をつかむと施設選びも迷わない


とあるデイサービス施設に着きました。

さっそく担当者さんが来て、施設の説明をしてくれました。大きな日差しが入るその施設は、開放感に溢れています。

「塗り絵イベント」が終わられたとのことで、利用者さんたちがゆっくり過ごされていました。

すると、父から失礼な発言が!

父

「俺は塗り絵なんかやらね〜よ〜」

うげげ!最悪です。焦って言葉の出ない私。すると施設スタッフの方がフォローしてくれました。

デイサービススタッフ
デイサービススタッフ

「参加は自由なので、無理やり行う必要はないからダイジョブですよ」

後で父の失礼な発言について、こっそりあやまりに行きました。すると、こんなことは序の口ですしあたりまえ、お気になさらず〜と言ってくれました。

これぞプロフェッショナル!頼もしい限りです。

別の施設にも行きました。

その施設の一角には、スポーツジムのような立派なマシンがずらりと並んでいました。

私

「あのマシンはなんですか?」

その充実ぶりに驚いたので、聞いてみました。

デイサービススタッフ
デイサービススタッフ

「介護施設用のスポーツマシンです。高齢者の方でも使えるように設計されているので、安全ですよ。うちの施設は、介護予防のための運動として、これらのマシン利用を一日のスケジュールに組み込んでいるのです」

すごい、と思いました。高齢者でも安全に利用できる、介護予防・リハビリ専用のマシンがあるなんて。それを一日のサービスに組み込んでいるなんて。

父

「お〜それはいいね〜」

おお!興味を示しました。デイサービスに関する前向きな発言は、これが初めてです。素直に反応した父の前向きな発言に、感動する私。

ですが、まだ使命は終わってない。自分の尻をたたきます。

私

「どんな方が利用していますか?」

ケアマネジャーには、施設リストをお願いする際に、父に友人が作りやすいよう同性・同年代がいることを選択の条件として伝えていました。その状況の確認です。

デイサービススタッフ
デイサービススタッフ

「施設利用者さんは女性が多いのですが、マシン利用は男性の方が多いでしょうか。お父さんぐらいの年齢の方か、それ以上の方も多いですよ」

えー、そうなんですか!と聞き返してしまいました。父は78歳。父より年上の方々が、元気にマシンを使ってらっしゃるなんて驚きです。


他にも「折り紙」「塗り絵」「音楽」「カラオケ」「散歩」などのイベントがあり、楽しく過ごせる工夫がなされていました。

父はカラオケ好き。それを指摘してみると、

父

「お〜それはいいね〜」

またまた前向き発言です。心の中でガッツポーズ。私の興奮が止まりません。


その後も何件かの施設を見学しました。

複数の施設を見学してわかったことは、どこの施設も、利用者が楽しめる工夫がなされていること。

そして、常に施設スタッフのみなさんは、利用者を第一に考えケアされていること。この献身的な姿勢には感動すら覚えました。

そして発見もありました。

面白かったのは、「方針」や「コンセプト」は施設によって違うこと。

例えば、利用者向けの「お楽しみイベント」はどこも実施していましたが、やり方や種類は施設によって違います。

また、利用者がケガをしてしまった時の対応や、具合が悪くなったときの対応、それによるスタッフの判断なども施設によって微妙に違います。

これは方針やコンセプトの違いによるものなのでしょう。

これがいわゆる「施設特性」。

この施設特性は、ホームページやパンフレットだけでは判断がしにくく、見学をしないとなかなかわかりません。

「施設特性」をつかむには見学必須、しかも違いがわかるように複数見学した方がいい、と思いました。


デイサービス施設もマッチング。

「施設特性」と「利用者の要望」が合うと、利用者満足度が上がるはずです。

利用者満足度を上げるためには、マッチング精度を上げること。

そのためには、事前に「利用者要望を整理」し、複数見学することによって「施設特性」をつかむといい。

施設選択の方法がみえてきました。

デイサービス施設の決め手は、「施設特性」と「利用者要望」のマッチング

複数見学した結果、父は「スポーツマシン」と「カラオケ」に興味を示しました。

それらを有した施設利用を想定し、父に相談します。

私

「マシンとカラオケがある施設がいいと思うんだけど、どう思う?」

父

「そうだな。それがいいな」

あら、あっさり承諾。

やはり、百聞は一見に如かず。楽しく利用するイメージが初めて湧いたのでしょうか。施設見学をした結果、父はこれまでの抵抗がうそのように、デイサービス利用を受け入れました。

いよいよ介護サービス契約。「チームビルディング」を意識し、「介護支援体制」を具体化する

利用するデイサービス施設を決めたところで、ケアマネジャーに報告しました。

ケアマネジャー
ケアマネジャー

「では各サービスの責任者をよんで、すぐに介護サービスを利用できる体制を整えましょう」

ケアマネジャーさん頼もしい!

以前は「専門家会議」と称し、介護サービスを決める会議を、私自身が主体者となり開きました。

ですが本来、関係各位の招集はケアマネジャーの業務。担当ケアマネジャーが決まったら、お任せすることができます。

以前行った専門家会議で、利用する介護サービスは「デイサービス」「訪問看護」「高齢者向け食事宅配」の3つと決めましたが、「高齢者向け食事宅配」だけは、介護保険の範疇外となるので、こちらの責任者には私から連絡をしました。


とある日。

ケアマネジャー、デイサービス施設、訪問看護、高齢者向け食事宅配の責任者とそのスタッフが、我が家に集まりました。

父と私を合わせ総勢9名。大人数です。

この時点で、父は無事退院していました。明日から介護サービスを利用したい、というタイミングだったため、一気に全て契約するという前提での段取りです。

私は、今回の「契約会議」を、父支援に向けて同じゴールを目指すものにし、今ここにいらっしゃる専門家の方々をひとつのチームにしたい、と考えていました。

いわゆる「チームビルディング」です。

「チームビルディング」とは、同じ目的を有し、個々人のスキルや経験を最大限に発揮し、目標を達成するための取り組みのこと。

なぜこれを意識したかというと、利用する介護サービスを3つに決めましたが、それぞれ会社が違うからです。

私の仕事経験上、違う会社、違う職種が一緒に仕事をする場合、目的を共有し、相互理解をする姿勢を持たないと、ぶつかり合いストレスとなり、個々の能力が活かされずパフォーマンスが下がりやすい。

そこで、「チームビルディング」を意識した契約会議にし、みなさんが快く働ける環境を作ろうと考えたのです。

私が考える「チームビルディング」のポイントは3つ。

①ゴールを提示する

②各自が主体性を持つ

③価値観を共有する

会議では、サービスの内容を確認するとともに、この3つの確立も目指します。

「チームビルディング」を応用し、父の「介護支援体制」の確立を目指す

早速、介護サービスの利用目的と課題感を伝えます。

私

「父は退院したばかりで、安定した日常生活を送るのに、まだ不安を感じています。特に不安なのは3つ、“人とのコミュニケーション” “薬” “食事”です」

 すると、デイサービス責任者が口火を切ってくれました。

デイサービススタッフ
デイサービススタッフ

「先日は見学ありがとうございました。お父さまと同性・同年代が多いのは火曜日です。火曜日に利用されると、お友達も作りやすいのではないでしょうか」

素晴らしい!

ケアマネジャー
ケアマネジャー

「では訪問看護は木曜日にすると、週のバランスが取れそうですね」

ますます素晴らしい!

訪問看護スタッフ
訪問看護スタッフ

「では木曜日に伺って、バイタルチェックやお薬チェックを行いますね。ちなみに簡単なストレッチや運動も行うことができますよ」

お願いします!

高齢者向け食事宅配スタッフ
高齢者向け食事宅配スタッフ

「デイサービス利用時にはお食事が出ますよね。ではデイサービス利用時以外の日にお弁当をお届けする、ということでいいでしょうか」

その通りです!

スムーズに、利用する介護サービスの頻度が決まっていきます。そこで私が「チームビルディング」を意識して駄目押しの発言。

私

「我が家は、母が突然倒れ入院、その後父も入院したという状況です。

退院したばかりなのでまだ心配ですし、私は仕事があるので安定的に父の面倒をみることが出来ません。

ぜひ、みなさんのお力をお借りして、早く父の日常生活を安定させたいのです」

みなさん、大きくうなずいてくれました。

訪問看護スタッフ
訪問看護スタッフ

「毎回の状況は訪問看護記録帳に記入して報告しますが、何か気になることがあれば、個別にメールを入れるようにしましょうか」

きた〜新たな提案。助かります!

すると、ではそうしよう、とみなさん賛同し、所定の方法以外にも個別の連絡体制を取ってくれることになりました。これは大きな安心材料です。

【介護サービスを利用する際の「チームビルディング」対策】

目的:個々のスキルが最大限に活かせるような環境を作り、全体のパフォーマンスを向上させる

<ポイント①ゴールを提示する>
「父の日常生活の安定」をゴールとして伝達。
母が倒れ、父も入院。先日父は退院したばかりなので、介護サービスを利用し安定させたいと、目的と背景をしっかり伝える。

<ポイント②個々の主体性を引き出す>
「3つの課題“人とのコミュニケーション”“薬” “食事”」を伝達。
課題はっきり伝え、どのサービスで解消するのか責任領域を明確にすることで、主体性を引き出す。

<ポイント③価値観を共有する>
「家族の不安」を正直に伝達。
困っていることや不安に感じていることを伝えることで、共通目線を促す。また解消に向けたディスカッションを活発に行い、考え方の共有を図る。

その後、それぞれの契約の説明を受けました。なかなか細かいので、内容を理解するのは簡単ではありません。

父

「俺もうわかんないよ〜」

正直な父。私が頑張るからダイジョブよ〜となだめ、それぞれの契約を無事結びました。

【父の「介護サービス決定内容」と費用概算(参考)】

●人の交流を目的とした「デイサービス」を週一回利用 ※1
毎週火曜日・利用時間6h・昼食付き=月額約8000円

● バイタル・お薬チェックを目的とした「訪問看護」を週一回利用 ※2
毎週木曜日・訪問時間30分=月額約4000円

● 安定した食事提供を目的とした「高齢者向け宅配食事」をほぼ毎日 ※3
1食約550円×2食(1日)×約30日=月額約3万3000円

※    1・2
実際の費用は、介護保険を利用していますので、ケアマネジャーのケアプランをもとに点数で算出されています。負担割合は個人によっても変わりますので、あくまでも費用規模としてご覧いただき、実際の費用は、ご自身の担当ケアマネジャーに確認ください。
※    3
介護保険適用外につき実費。価格は、業者により異なりますので、あくまでも参考としてご覧ください。

まだ駄々をこねる父!最後の最後まで一悶着

いやー契約会議は長丁場でした。

でも納得のいく契約が結べたので、大成功です。

専門家の皆さんが帰られた後、父に話しかけました。

私

「無事決まってよかったね。早速明日からデイサービスに行くんだから、持ち物を準備しよっか」

すると、父がまた後ろ向き発言。

父

「俺行かなくちゃダメかな〜」

うげげげ!最悪です(二回目)。一度受け入れたと思ったのに、此の期に及んでまだやんわり拒否かい?と心が折れそうになる私。

いや父の目線に立たねばと、頑張って気持ちを切り替えます。

私

「何がそんなに嫌なの?」

父

「体力が持つかな、とか」

父は環境の変化に不安を感じます。見学したとはいえ、まだ利用する前。やはり不安を感じるのでしょう。

どうすれば安心するか…説明の仕方をちょっと考える私。

私

「慣れればダイジョブだよ。“剣道”も最初は大変だけど、慣れたらダイジョブだったでしょ。それと一緒」

実は父は剣道7段。これはなかなかの段位です。奥底に体育会根性が眠っているはずと、かつては練習に明け暮れたであろう「剣道」に例えて説明してみました。

父

「剣道と一緒か…そだな」

おー説得成功。一安心です。とりあえず行って、嫌だったらやめればいいから、と安心感を与える言い方を添えました。

また父は、この年代の人には珍しく、友人を作るのが得意。お友達ができたら楽しくなるよ、とも付け加えました。


翌日。

朝デイサービスからお迎えが来て、夕方無事帰ってきました。

どうだった?と聞くと、

父

「カラオケ好きの友達ができて3曲歌ってきちゃったよ〜」

笑顔で報告をくれました。今までのやんわり拒否発言がうそのようです。

なんだよ、よかったじゃ〜ん、と私も返事。

こうしてやっと介護サービス利用のスタートが切れたのでした。

まとめ

・    デイサービス施設を決めるためには見学必須。できれば複数見学し、違いを「施設特性」としてつかむと良い

・    本人の趣味や好きなことを把握し、施設選びの判断基準にするとマッチング精度が上がりそう

・    利用する介護サービスは、専門性が高いのもあり、提供会社が分かれがち。「チームビルディング」を応用し、パフォーマンスの最大化を狙おう

・ 支援してくれる人たちを「介護支援体制」として整理しておくと、協力を得られやすくなり安心

次回は、
『新型コロナで生活様式が一変!? 介護の父とぶつかりがちな同居生活を、「発想力」でなんとか乗り切る!』をお届けします

中村美紀
中村美紀 クリエイティブコンサルタント・編集ディレクター

(株)リクルートフロム エー、(株)リクルートに20年在籍し、副編集長・デスクとして10以上のメディアにかかわる。2012年に独立し、紙・WEBメディア設計、編集コンテンツ企画制作、クリエイティブ研修講師、クリエイティブ組織コンサルタントなどを請け負う。 国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE,Inc. GCDF-Japanキャリアカウンセラーでもある。

プロフィールhttps://miki-nakamura.com/ブログhttps://oyakaigo.miki-nakamura.com/ 中村美紀さんの記事をもっとみる

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