『もしもの時に役立つノート』は、本当は30~40代がメインターゲットなんです。
ついにエンディングノートを書いてみることにした藤谷さんと蟹めんまさん。
しかし、「あまりにも項目が多くて面倒くさい…」「お墓のことなど、先々のことなんてイメージができない…」と挫折しかけていました。そこで「エンディングノート もしもの時に役立つノート」を販売しているコクヨさんに取材。
前編はこちら
「やっぱりアラフォーにはエンディングノートなんて早かったのか…」という二人に放った、コクヨさんの衝撃の一言とは?
『もしもの時に役立つノート』は、本当は30~40代がメインターゲットなんです。
えぇーっ!?
ご高齢の方でも困らない文字のサイズにはしているのですが、幅広い年齢の方に使ってほしいと思っています。ご購入者を対象にしたアンケートでも、50代以下の方が半数を占めています。
へ〜!
3~40代が45%で、20代でも買ってくださる方がいます。親のために買ってみたけれど備忘録に便利だったので自分の分も買ったという方や、気に入って同窓会でお友達に配ったというお話も聞いたことがあります。
間口が広い分、人に勧めやすいのはあるのかも。それに、今は新型コロナウイルスの影響で、平時よりは「もしもの入院」などの可能性が高まっているから、家族でも相談しやすいのかな。
このノートはあくまで「備忘録」なんです。まだお葬式なんて考えたくないという方もいらっしゃいますし、最初から最後まで完璧に書かなくてもいいんです。
それを聞いて安心しました(笑)。
「備忘録」って考えると、災害だったり、最近だと新型コロナウイルスの影響だったりで、自宅以外の場所に行かなければならないケースもありますよね。そういう時にも役立ちそうですね。
このノートを「防災リュック」の中に入れているというお話も何度か聞いたことがあります。「パソコンは浸水して壊れてしまったけれど、ノートに口座情報などをまとめていたので、それを手がかりにしてスムーズに再発行の手続きができた」というメッセージをくださったお客様もいました。
なるほど。
「エンディングノート」というけれど、いろんな使い方があるんですね。
私たちが挫折しそうになった理由のひとつに、「書くことが多い」があります。ひとつひとつ真剣に考えていった結果、考えすぎてしまい、「めんどくさい」という感情が浮かんで……。なので、ノートの中で「まずここは書いたほうがいい」みたいな項目はありますか?
ユーザー様のご意見をみると、銀行口座や保険を優先して書いていらっしゃる方は多いようです。近年はネット銀行などの通帳のない銀行も増えているので、家族は口座の存在を知らない、調べ方もわからないというケースもあるようです。
遺された人が保険や口座の存在を把握していないと、保険の申請や口座の解約もできないですもんね。WEBサービスの記入欄もありますが、契約しているサブスクも書いておいたほうがいいかも。
ほかには、宝物コレクションを重要視している方も多いようです。
そこは我々も気になりました(笑)。
この連載は、「趣味と老後」がテーマだそうですが、私も実は「お人形」を集める趣味がありまして……。
まさかのドールコレクター!
連載にうってつけや! その話、詳しく!
球体関節人形を少々お迎えしていて……。
「ガチ」の人だ。
絶対「少々」の数じゃないですよ。
なので、自分にもしものことがあった場合、人形たちが捨てられてしまったらかわいそうじゃないですか。だから家族にも「もしもの時はこの子は●●さんにあげてほしい」と色々伝えていたんですが「覚えられないよ」と言われ。そうですよね(笑)。
それはたしかに。だからコレクションのページがあったんですね!どおりで手厚いなぁと思いました!
そうなんです、自分自身にとっても必要なノートを作りたかったんですよね。もちろん、コレクション系の趣味がない方でも、お話をお聞きすると皆さんご自分にとっての宝物をお持ちだったりしますので、宝物コレクションのページは気に入って書いてくださる方も多いです。あとはペットの情報を重要視されている方もたくさんいらっしゃいますね。
ペットと住める老人ホームもありますし、大事なことですよね。
ワンちゃんでつながる老後?犬が正社員の老人ホームをバンギャルが訪ねた-バンギャル老人ホームへの道⑸
CD-Rなどのディスクを入れるフォルダもあるんですね。私はここに「お葬式の時に流してほしいBGM」を入れたいですね。
そうですね、音楽にこだわりのある方は多くて、「クラシック曲の中で、この指揮者のCDがいい」みたいに、家族でもわからないような細かい要望を持っている方もいるので、CDで入れておいた方が良い場合も多いと思います。
なるほど〜。
自分の宝物を改めて書いたり、好きな曲をCD-Rに入れたり、エンディングノートでもこういう部分は楽しいですね。
「好きな食べ物」、「呼ばれていたニックネーム」、「好きな芸能人」なんかも書く欄がありましたけど、小学生の頃に書いたプロフィール帳みたいですよね。
懐かしい…。
趣味や好きな音楽って、家族やまわりの人がすべて把握しているわけではないじゃないですか。お葬式以外でも、例えば入院したり介護施設に入ったりする場合にも、好きな音楽を流すことで元気付けられたりするでしょうし、他にも「好きな食べ物」欄や「友達から呼ばれていたニックネーム」なども介護の現場で役にたったりするそうです。
ノートの内容がいろいろな形で生きることがあるんですね。
そうです。ですので、“エンディングの準備”というのもありますが、“自分のこれまでの棚卸し”感覚でも、利用してもらいたいですね。
友達欄も大事ですよね。普段、ペンネームやハンドルネームでしか呼んでいない人もいるし(じっと横をみる)。
私ですか! たしかに藤谷さんに限らず、周囲から「めんまさん」と呼ばれることのほうが多いですね。趣味友の本名を知らないということは、我々の世界ではよくありますからね。
友人以外でも、親戚の名前や住所を把握していないこともありますしね。
「●●(地名)のおじさん」呼びでしか把握してない親戚、います。
あとは家紋の欄もありますね。たしかに祖父の葬儀のときに葬儀屋さんから聞かれました。
か、家紋なんてマジで覚えてない……。そもそもウチに家紋なんてあるの?
そうそう、お墓やお葬式の欄は書くのに悩みましたね。なにせ知識がなさすぎて。
「おまかせする」「お金はかけたくない」ばっかりにチェックしちゃいましたね。戒名とか想像もつかなかったので、やっぱり「おまかせする」になってしまいました。
BGMだけはこだわりました。
それは、遺された人たちに「おまかせする」ということが伝われば、それはそれでいいんです。「もっと盛大にやってあげたら良かったのでは」という後悔が生まれないので。
今自分が亡くなったら、最初にノートを見るのは両親なので、「何もしなくていい」って書いたけれど、もしかしたら将来もっとやりたいお葬式も出てくるかもしれないですし。正直、自分の葬式を考えるのは楽しかったですね。
でも「(葬儀の)費用を用意してない」とにチェックするたびにやや罪悪感はありますね。
若い人はみんなそうだと思います。
介護に関する項目も、費用から他のことまで、誰にも何にも相談していないので、そこに関しても改めて考えてしまいました。ちなみにこのノート、重ためな決断に関してはチェックボックス方式になってるのは助かりました。
本当に死期が迫っているときは、多分書く気力が残ってないですよね。元気な時にノリや勢いでもいいからやっておいたほうがいいかも。
元気なうちに親にも書いておいて欲しいですけど、すすめるのにやっぱり勇気がいりますよね。
ちなみに、お正月やお盆に書くというケースも多いそうです。
帰省シーズンでしょうか。そういう節目だと、あらためて親に話しやすい気がします。
そうですね。毎年ご家族で情報アップデートをしている人もいるそうです。結婚や出産をきっかけに書いたという方、あるいは重い病気ではないけど、健康診断でひっかかったから書き始めたという方もいらっしゃいました。
きっかけはなんでもいいんですね。
普段自分でも意識しないことだったり、これまでの自分を振り返るためにもいいし、これを書くことで、「ちゃんとしたことを書けるような自分になろう」と思えるようになりました。
まさに「自分の棚卸し」!
奈良県出身の漫画家・イラストレーター。小学生の頃V系バンドに目覚め、以後約20年をバンギャルとして過ごす。主な著書はバンギャル人生をネタにしたコミックエッセイ『バンギャルちゃんの日常①〜④』(KADOKAWA)。趣味はスーパー銭湯めぐりとプロレス鑑賞。
1981年生まれ。自衛官、書店員、DTPデザイナーなどの職を節操なく転々として、フリーランスのライターに。趣味と実益を兼ねたサブカルチャーの領域での仕事が多い。共著に「すべての道はV系へ通ず。」(シンコーミュージック)、「想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本」(サイゾー)など。
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