今回のテーマは「遺品整理」ということで、遺品整理士認定協会の長谷川さんにご登場いただきます。私は、遺品整理に対して漠然としたイメージしかないんですよ。めんまさんは昨年、お祖父様がお亡くなりになったとのことですが。
大量のCD、大量のチェキ、大量のTシャツ、タオルなどのグッズ……バンギャルはとにかく持ち物が多い。バンギャルに限らず、趣味に生きる人は収納に困るほどのモノを抱えていることが多いのでは。
「もしも私が死んだら、これらのモノはどうなってしまうのだろう」
「処分で家族に負担をかけるのは……」
「でも、思い入れあるコレクションを捨てられたり、安く売って欲しくない」
そう考えたことはないでしょうか?
亡くなった方が遺した持ち物を整理する、遺品整理士という仕事が昨今注目を集めています。遺品を整理すること自体は、昔から遺族の間でも行われていましたが、少子化、核家族化の影響で遺族だけでは対応しきれないケースが増え、業者に依頼することは珍しくなくなったそう。
今回は、故人が遺した身の回りのモノはどのように整理されるのか、遺品整理士の方に聞いてみました。
今回のテーマは「遺品整理」ということで、遺品整理士認定協会の長谷川さんにご登場いただきます。私は、遺品整理に対して漠然としたイメージしかないんですよ。めんまさんは昨年、お祖父様がお亡くなりになったとのことですが。
祖父の遺品整理は親族一同でやりました。今回は大きなトラブルもなかったけれど、今後のためにも起こりうる問題は知りたいです。
私はその経験もないので、遺品整理というと、ニュースやYouTubeで観るような、沢山のモノがある家を片付ける……みたいなものを想像しています。。
それは「不用品回収」ですね。
オウ! 初っ端から間違えてる! では、遺品整理と不用品回収の違いを教えて下さい。
簡潔にまとめますと、不用品回収は、不要なものを回収するだけなので、「このダンボール箱を持っていって」といえば、それだけを持っていきます。遺品整理は、そのダンボール箱の中をあけて、大切なものが入っていないかを確認してから、廃棄をするイメージです。
遺品整理と不用品回収は捨て方に違いはあるんですか?
たとえば、捨てる前にお焚き上げするとか……?
最終的な行き先は一緒です。「捨ててください」と言われても、かならず確認するのが遺品整理ですね。お焚き上げも別途費用がかかりますが、要望があれば対応します。
祖父の遺品整理のときは、業者を呼ばなかったのですが、どんな場合だと、業者を呼ぶことになるでしょうか?
たとえば、遺族の方が遠方に住んでいて、休みがとれないだとか、あるいは高齢の親の一軒家を1人で整理していたけど、「とてもじゃないが手に負えない」と相談に来ることが多いですね。
高齢の親ということは、その方も結構な年齢でしょうし、たしかに大変かも。
遺族が遠方に住んでいる場合は、どうされるんですか?
原則としては、「できるだけ立ち会ってください」と説明しますが、どうしても無理な場合は、事前に「どういったものを残してほしいか」の確認をします。それでも業者が判断できない場合、残しておいて整理が終わったあとに依頼者に確認しますね。
なるほど〜。
今って一人暮らしの高齢者も多いですよね。遠方に住んでいるならまだしも、そもそも遺族の方がいない、連絡がつかない場合も遺品整理の依頼ってありますか?
あります。大家さんなどから依頼されることがありますね。
そういう費用は誰が負担するんですか? たとえば、敷金だけでは追いつかなくなった場合、誰になるんでしょう。
大家さん、あるいは連帯保証人のケースが多いですが、厳密にいうと「遺品がだれのもになるか」によります。
連帯保証人はそこまで責任をとらないといけないんですね。
賃貸契約に基づいた連帯保証人が原状回復をしないとならない形になります。
だいたいが連帯保証人か保証会社、あるいは不動産会社になっています。
その人たちもいない場合は?
相続人がいたとしても、全員が放棄する場合ですと、その権利が次の方に移行します。通常の場合、その建物の所有者で、それも難しい場合、最終的には行政にいきます。
へぇ〜。持ち家の場合はどうなるんですか?
相続人が誰もいなかった場合、行政に権利がいきます。
気になるお値段ですが、遺品整理の平均金額ってどのくらいですか?
一軒家を整理する場合、平均は2~30万円ですね。
なかなかお高い。
値段が決まる基準はどこにあるのでしょう?
単純にモノの量ですね。
例えばなんですが、私が明日ウッカリポックリ死んでしまった場合、今の部屋を遺品整理する必要が出てきます。
例えば君が死んだら…
内訳は、V系音楽雑誌などの入った縦180cm横90cmのスチール本棚が4つくらいあります。CDもおそらくは1000枚以上はあるのではないかと……。
本、雑誌、CDですか?
家具や服はそこまでこだわりがないので、捨ててもらっていいけど、雑誌やCDはプレミアがついているものもありそうなので、しっかり選別してほしいかな? という感じです。この場合、いくらくらいかかると思います?
純粋にそれだけでしたら、おそらくは7,8万円くらいですね。
なるほど。先程の平均額よりは少ないですね。値段のポイントは?
まず雑誌は、法律上の話になるんですけど、「古紙」扱いになります。通常、一般の家庭から出る廃棄物は、許可業者しか運んではいけないんです。 ですが、古紙はリサイクルが前提なので、その法律が適用されないから、許可なく運搬できるんです。
へ〜。
よって、雑誌がいっぱいあっても、他のものを処分するより値段は安いと思います。基本的に紙であれば、値段はそこまで張りません。
CDはやっぱり雑誌よりお金かかっちゃいますか?
CDは、雑誌より処分の手間がかかるので、その分多少はお値段が上がります。雑誌を廃棄するときは、指定日に紐をかけて持っていくだけですよね。CDはケース、紙、CD(ポリカーボネート)に分け、自治体のルールに合わせてそれぞれを分別して捨てなければなりませんから。
入手困難なアイテムを、専門店に売ったりはできますか? 普通の古本屋やリサイクルショップだと二束三文でも、専門店だと価値がつくこともあると思うので。
大事なコレクションを価値のわからない人に買い取られたくない……。
マニア向けのものは、結局「欲しい人の言い値」になるので、価値がわかる人に見てもらうことが大事ですね。高く売りたい場合はご自身で何軒か専門店をまわるか、ネットオークションに出すのが一番いいですが……。
お金がほしいというよりは、「欲しい人が手に入れやすい環境においてほしい」というか。普通のお店だと廃棄されてしまうかもしれないものでも、マニアのお店だと誰かが買ってくれるものってたくさんあると思うので。
なるほど。遺品整理業者がそうしたものを処分をする場合、ネットオークションに出すことが多いです。
あるいは、どこかに寄付してほしいな〜と思うんですが、それはさすがに業者さんの範疇ではないですか?
そのまま捨てるのは忍びないと、寄付を希望される方は、結構多いんです。
うちも、祖父の洋服を一部寄付しました。
その場合も、できるだけ寄付の先を探します。最近ですと、SNSで寄付先を募ったりする業者もいますよ。
SNSで? そんなチケット譲渡みたいな…!
よく考えると自分が死んでしまった場合、「こうしてほしい」という思いを残しておいた方がいいですよね。遺言状を書くべきか。
法務局に行けば数万円で遺言を残せるようになったので、そういうものを利用してもいいですし、法的効力がないものでもよければ、メモでも、エンディングノートでもいいと思います。
「このバンドのCDは●●さんに譲ってください」くらいなら、メモでもいいんですね〜。
さっき身寄りがない人の場合、遺品は最終的に行政にいくって話がありましたけど、「●●はAさん譲ります」とかエンディングノートを遺しておけば、それを見た遺品整理士さんが対応してくれる…?
可能性はあります。
先んじて自分の遺品整理の話をしてしまいましたが、きっとその前に来るのは親のそれですよね。
断捨離や生前整理も流行ってますけど、親に直接その話をするのは気が引けます。
生前整理の場合、親の説得のコツはありますか?
ものを「捨てよう」ではなく、「片付ける」という方向で説得すると、上手くいくことが多いです。ハードルを下げて、焦らずにじっくり進めることですね。
私は地元から離れて暮らしていて、実家には姉夫婦、近所に妹夫婦が住んでいます。仮に親が亡くなったら、姉妹に任せる可能性が高いんですが、知識不足でとりかかると、トラブルになる予感がするんですよね。
一番揉めるのは、相続ですね。きょうだい間はとくに。
ウッ、もうそれは覚悟するしか無いのか……。
事前に話し合いを設けて……。
一部の姉妹仲がそこまでよくなく、やる気が起きないのでこの連載でやってもいいですか?(投げやり)
それは後で編集部と相談しましょう。(気を取り直して)ほかに遺品整理では、どんなトラブルが想定されますか?
遺産相続の手続きが終わってから、別の遺産が出てきて、一部の親族でそれをもらってしまったことが後から発覚して……というケースはありました。
それを聞くとちょっと不安になりますね。うちは家族だけで判断して遺品整理をしちゃいましたけど、何年か経ってから「あの時捨てなきゃよかった」って思うことがあるかも……。
たしかに、人生で遺品整理って何度もやらないし、慣れている専門業者に頼むのも選択肢の一つかもしれないですね。
今の所とくに問題は起きてないですけど、もしかしたら数年後に「あの時捨ててしまった!」となる可能性もあるのかもしれない。
他には、最近よく聞くのが、「パソコンや携帯のロック解除ができない」ですね。
それは、どうやって解除するんですか?
基本的に難しいですね。パソコンの解除は現状の技術で可能ですが、だんだんスマートフォンのセキュリティが高くなってきていて、ほぼロックが外せなくなっているのがiPhoneですね。Androidはまだなんとかなりますが、解除に1ヶ月はかかる上に、費用は50万円ともいわれています。
一軒家の整理より高いんですか!?
つまり、iPhoneのデータを残しておきたい場合、外のハードディスクやクラウドにバックアップをとっておいたほうがいいんですか。
あるいは、パスワードを事前に親族に伝えるだとかですね。
それは、生きてる間は怖いな〜。ハッ、逆に見られたくないデータはiPhoneに入れておけばいいのか!
オタクの人はよく言いますね。自分が死んだらパソコンのデータを消去してほしいと。逆にデータを破棄するサービスはないんですか?
ありますけど、データ破棄というのは、大まかに二つしかないです。内部で破壊するか、物理的に破壊するか。
物理……(ゴクリ)。
お話を伺っていると、意外なお願いも聞いてくれるのですね。
皆さん「これは難しいですか?」と言われるのですが、どこの業者も、できるかぎりの対応はすると思いますよ。まずは、相談してもらえたら、解決策を一緒に考えることもできますし。
遺品を整理するとなると、それぞれのおうちの事情もあるだろうし、柔軟に対応していただけるなら心強いです。ありがとうございました!
絶対に見られたくないデータ、明日さっそくiPhoneに移そう……。
わたしも……。ところで、さきほどエンディングノートの話が出ていましたが、具体的にどんなものなのですかね。よく聞くけど、実際見たことはない。
親に書いてほしい気持ちもありますが、まずは自分でも書いてみましょうか。
そうしましょう! と、いうわけで次回は「エンディングノート」についてです。
奈良県出身の漫画家・イラストレーター。小学生の頃V系バンドに目覚め、以後約20年をバンギャルとして過ごす。主な著書はバンギャル人生をネタにしたコミックエッセイ『バンギャルちゃんの日常①〜④』(KADOKAWA)。趣味はスーパー銭湯めぐりとプロレス鑑賞。
1981年生まれ。自衛官、書店員、DTPデザイナーなどの職を節操なく転々として、フリーランスのライターに。趣味と実益を兼ねたサブカルチャーの領域での仕事が多い。共著に「すべての道はV系へ通ず。」(シンコーミュージック)、「想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本」(サイゾー)など。
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