前半でもお話しましたが、昨年、祖父の介護を手伝っていたんです。「できれば付きそいがいたほうがよい」とのことでしたので、フリーランスの私が病院に泊まり込んでました。個室だったので、原稿も祖父のベッドの横でやって(笑)。
バンギャルの老後について、その道のプロや先輩方にお話を伺ってヒントを得ていく連載『ヘドバンしながら老後を考える』
バンギャル(ヴィジュアル系バンドのファン)のライタ ー・藤谷千明と、おなじくバンギャル漫画家・蟹めんまのコンビが、憧れの先輩方に突撃インタビュー後編!
前半でもお話しましたが、昨年、祖父の介護を手伝っていたんです。「できれば付きそいがいたほうがよい」とのことでしたので、フリーランスの私が病院に泊まり込んでました。個室だったので、原稿も祖父のベッドの横でやって(笑)。
座談会のときにも言ってましたね。
それは大変だったわね。
それで去年はライブに行かない時期があって。ライブに行くことって、その日のスケジュールを空けるだとか、調整も必要じゃないですか。友だちと行く場合はドタキャンするのも申し訳ないし、前売チケットが無駄になるのも悲しい。
そうなのよね~。
5年前にも、実家の母が体調を崩してして、その時もライブに行けなかった。「今後こういうことはあるんだろうなあ」という実感があります。
私の周囲でも「同居してる親も年だし、あと何年かしたら今みたいにライブいけなくなるかも……」という話を聞くようになりました。
「本当のファンなら、気合いでなんとかライブに行ける、それが愛情」みたいな考えもあるじゃないですか。
「ライブに来ないのはそこまで好きじゃないんでしょ」的な……。
最近はミュージシャンの方もSNSでそういう発言をされていたり。でも、いくらバンドが好きでも現場に行けない状況ってあるんだなって。今回、それが身にしみました。
生活の土台あっての「趣味」なんですよね。そればかりは逃れられない。
ちなみに、お二人の経験から、介護や同居に関して、「やっておいたほうが良かったこと」ってありますか?
私も友人から教えてもらったのだけど、「認知症かな?」と思った時点で、地域の包括センターや、「物忘れ外来」のある病院を確認すべきなのよね。何かあったときにすぐ利用できるから。本格的に始まってしまったら、どうしていいかわからなくなってしまうので。
最初の窓口を知っておくのは大事ですよね。わからないまま心配し続けるのはつらいので。
大島さんは、お母さまとの同居の際、リフォームするポイントや業者はどのように選びましたか?
介護保険からのリフォーム費用補助などはありましたか?
保険は使ってないの。手すりなんかには適用されるらしいのだけど、仕切りだったり床暖房だったりは使えないらしくて。手すりも提案したのだけど、母が「逆に頼ってしまってダメになる」っていうから、つけてないのよ。
たしかに、家のお風呂には手すりをつけたときは、保険適用になりましたね。
よくニュースで「ヒートショックでお年寄りがなくなる」なんて聞くから、床暖房にも適用されるものだと思ってました。そうはいかないんですね。
そのあたりは適用されないですね。
めんまさん、不動産関係の仕事もしてたから詳しいですね。
あとは段差をなくす工事なんかには適用されますね。
そうそう、段差もなくしたかったけれど、逆に業者さんから「昔のマンションだから難しい」と言われて。
そういうこともあるんですね。
最初、私が入居する時にスケルトンにしてフルリフォームしたんです。
柱と梁だけの内装がゼロの状態ですね。
その頃は、私も母も若いし、父も生きてたし、そもそも同居することを考えてなかったので、年をとったときのことを考えもせずにデザイン重視でリフォームしちゃったの。
なるほど……。中古マンションのリフォーム、流行ってますけど、のちのちのことを考えた方がいいかもしれませんね。
最近は、おいおいのことを考えてのアドバイスをする業者も増えていますね。
マジ詳しいな!
床暖房も最初から入れる方が安いしね。後付けすると、まずは全部床をはがさなきゃいけなくなるから、すごくお金がかかるの。
床暖房と段差は大事ですね。
そして、私たちも大人になると、当たり前ですがミュージシャンも年齢を重ねるわけで。ライブのMCで「還暦が見えてきた」という話を聞いて、ひゃー! となったり(笑)。
最近、とあるパーティーに行った時に、少し年下のミュージシャンが集まって、何を話しているかと思ったら、すごく真剣に老眼の話をしていたのよ。
あらまぁ。
「大島さんはもう老眼でしょ!」「そうよ! 悪い?」みたいな(笑)。もう老眼自慢大会みたいになっちゃって!
あはは。すごいですね。
最終的に親の話や、実家に帰ろうかの話も出たり。
最近、脱退理由が「介護」というミュージシャンの話を聞いたんですが、やっぱり切実な問題ですよね。
介護しながらバンドやってる方もいますよね。昔からあったのかもしれませんが最近はSNSがあるので、そういう話題が耳に入りやすいのかな。
皆、平等に年齢は重ねていきますしね。そういえば、最近BUCK-TICKがツアーグッズに老眼鏡を出していて、「ついに!」と衝撃を受けました。
そうなんだ!
氷川きよしさんも、グッズでおばあちゃんが引いてるカートを出してますよね。
ファンのことをよくわかってる!
わたしも、老眼が始まったら是非とも手に入れたいと企んでおります。そのうちバンドプロデュースの介護グッズも出てくるのでしょうか。
私、友人とロックを語るイベントをやっていて、前に来場者プレゼントしてメガネ拭きを作って配布したの。皆、老眼鏡持ってるだろうし。好評だったわよ。
へ~~、バンドの介護グッズ紙おむつとか出たらいいかも。なんせ消耗品ですし高いし、せっかくなら推しのものを使いたい気も。
レジまで持っていくのも気恥ずかしい人もいるし。
黒くてかっこいいやつの方がテンションあがりそう。最近は生理用品のパッケージについての議論も盛んだし、そういう方向で、かっこいいデザインの紙おむつ、ビジネスチャンスの匂いがしますね……。
言い方も大事だと思うんですよ。主人の母の介護をしていた頃、どうしても紙おむつを履くことに抵抗があるようで。その気持ちもすごくわかるんです。それで、「紙パンツ」と言い換えて、「紙パンツはすごく暖かくて楽ですよ」と勧めたら、履いてくれるようになったりして。
ほお~確かに言葉を変えるだけで受ける印象が全然ちがいます!
「どうやったらお互いに上手く暮らしていけるかな~」ということを考えるきっかけになるし、そういうことって結局は自分のため、お互いのためなんですよね。
ユーモアで思い出したんですが、介護中のめんまさんから、「おじいちゃんのラストギグで銀テープが飛んだ」みたいなLINEが来たことがあって。
どういうこと?
祖父が96歳の大往生、在宅で看ていたこともあって、最期は子供孫ひ孫親戚一同が大集合したんです。もう終幕ライブですよ。
駆け出しのインディーズバンドの平日動員は超えてますね。
もちろん、本人はどう思ってるかわからないですが、世間的にいう「理想的な亡くなり方」というか。本当に良いライブのアンコールまで見届けた気分になり。
それで「銀テープが飛んだ」なのね。
飛びましたね。でもそういう例え方をして、友人に連絡することで、自分の気持ちもラクになったところはあるんです。
人が亡くなるということは、大変なことなんだけど、やっぱりそこにユーモアもあったほうが。人は誰しもいつか亡くなるんだから。
そうなんです。だから、あんまり「不謹慎」だと思うのも違うのかなって。当たり前のこととして思わないと。それに、趣味の知り合いって、気持ち的に連絡がとりやすかったんですよね。
なんか色々話しましたよね。介護士をローディー(ライブ中にミュージシャンのサポートをするスタッフ)に例えたり。
それもすごいわね。
大往生で悲壮感がなかったから冗談を言えたってこともあるんですが。親戚一同在宅で看取って、やりきった感もあり、「あんまりしんみりするのもやめよう!」という雰囲気でした。
そういう考え方っていいと思う。
介護って「私がする」だと、自分が上になっちゃうじゃない? 自分だっていつか誰かにお世話になるわけだから。少しでも楽しみやユーモアを取り入れていけたらいいですよね。
ううっ! そう言っていただけで、ありがとうございます!!
今日はお二方に様々なお話を聞けて、本当に気持ちが軽くなりました。ありがとうございました!
奈良県出身の漫画家・イラストレーター。小学生の頃V系バンドに目覚め、以後約20年をバンギャルとして過ごす。主な著書はバンギャル人生をネタにしたコミックエッセイ『バンギャルちゃんの日常①〜④』(KADOKAWA)。趣味はスーパー銭湯めぐりとプロレス鑑賞。
1981年生まれ。自衛官、書店員、DTPデザイナーなどの職を節操なく転々として、フリーランスのライターに。趣味と実益を兼ねたサブカルチャーの領域での仕事が多い。共著に「すべての道はV系へ通ず。」(シンコーミュージック)、「想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本」(サイゾー)など。
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