新幹線で1時間半、これはちょっとした「遠征(※バンギャル用語・ライブなどで遠出すること)」ですね。
「趣味で繋がる老後」ってアリ? バンギャル(ヴィジュアル系バンドのファン)のライター・藤谷千明と、おなじくバンギャル漫画家・蟹めんまさん、そして「tayorini」編集部の大田さんと共に、「バンギャル老人ホーム」設立の可能性を探っていく連載第3回。
今回は、栃木県・那須郡那須町のサービス付き高齢者向け住宅「ゆいま~る那須」にお邪魔しました。
「ゆいま~る」を企画提案した一般社団法人コミュニティネットワーク協会のモットーは、「誰もが自分らしく生き、そして自分らしく死ぬことができる豊かなコミュニティづくり」。高齢者を隔離してしまうような閉じた施設ではなく、社会とつながり、地域と共生していく仕組みを目指しています。
「ゆいま~る那須」も高齢者の住居だけでなく、近隣には牧場やカフェ、廃校を利用したコミュニティスペースなどもあって、取材当日も小学生が見学に来ており、多世代の交流が行われていました。
ゼロから老後の住まいを作るにはどうしたらいいのか? ここにそのヒントがあるかもしれません。これまで一般社団法人コミュニティネットワーク協会理事として、数々の老後の住まいをプロデュースし、「ゆいま~る那須」の開設時には運営もされ、現在は入居されている近山恵子さんにお話を伺いました。
新幹線で1時間半、これはちょっとした「遠征(※バンギャル用語・ライブなどで遠出すること)」ですね。
空気がうまい……。そして隣りでオープンしている森林ノ牧場のアイスクリームがうまい……(※さっそく勢いよく食べている)。とはいえ、人里離れているというわけでなく、駅からは車で15分くらい、近くには大きなショッピングモールもあるんですね。
1日4回の送迎車や、訪問販売も充実しているそうですよ。
ようこそ、「ゆいま~る那須」へ。
今日はよろしくおねがいします。自然に囲まれた、とても素敵な場所ですね。木造の戸建て風の住居も素敵ですし、お部屋の中もすごくおしゃれというか、「インスタ映え」しそう!
見た目だけじゃなくて二重窓で冬の寒さ対策もバッチリで、足の不自由なひとのためのエレベーターも付いてるし、暮らしやすそう。
それぞれの居住スペースが独立していて、庭を囲むように配置されてますね。
庭いじりができていいでしょう!
住まいとは別に食堂はもちろんのこと、ピアノのある音楽室や図書室もあるんですね!
音楽室では演奏も楽しめるし、スペースを使って体操、ヨガ、マージャン、もやったりして楽しいのよ。
バンギャル老人ホームだったら、ライブハウスがあったら 楽しそう!
バンギャルがよく行く、「ライブハウスっぽい柵」のあるカラオケルームを作っても楽しいかも…!
図書室の本は皆で持ち寄って作ってるの。本ってやっぱり捨てられないのよね〜。
それは、めっちゃわかります!!
皆でCDや雑誌を持ち寄ったら、ヴィジュアル系資料室が作れそうですね。
夢がひろがる!
正直明日にでも住みたい空間なんですけど、いくらくらいかかるのでしょうか?
パンフレットによると、入居費用は最初におよそ1000万、月々サポート費と共益費合わせて一人38,850円だそうです。
あとは個人差があるけど、食費や光熱費、医療費、交際費なども合わせて、だいたい月12万円で生活していくイメージね。
ぐう、意外とお高い!
あ〜! 将来が不安すぎて5億円くらいほしい!(空に向かって)
説明すると、ここは最初、住宅に住む権利を入居金として支払います。たとえば、独身でずっと働いてきて60歳で定年を迎えた女性が、仮に預貯金として1000万円持っていたとしても、都内の家賃7万円のワンルームの部屋に住んでいたら、12年後は貯金が尽きて生活保護になってしまうかもしれない。
うっ、高齢者の生活保護問題は、現在でもニュースで見たりします。
若い世代も老後生活保護になるかも…みたいなニュースも見たことがあります。やっぱり5億円ほしい!
ここは入居金を1回払うと一生住めるところがポイントなの。もちろん、ここの暮らしが合わない人もいるから、まず最初に短期間住んでもらって判断してもらったりするし、今は満員で入居待ちになっているけどね。
かなり良心的な仕組みだと思いますが、採算の方は?
いろいろ考えられるけど、事業費をどのように捻出するかが大変ですよね。(株)地域活性ファンドの役員もやっていて、ここは出資者から募ったお金でも回っています。地域活性ファンド会社は5億円ほど募ったの。
5億円(本物)だ!!!
5億円を運用するのも想像つかないし、出資者を集めるのもさらに想像つかないです……。
難しいことのように思えるかもしれないけど、出資してくれる人は全国の人に声をかけたら、何%かは見つかるんじゃないかな。どんなに社会の状況が悪くなったとしても、そういったインテリジェンス…、つまり問題に向き合う心のある人は絶対どこかにいるはず。お金の話をするのはハードルが高いかもしれないけど、そういう人たちに声をかけてみて。あなた達の言う「バンギャル」の中にもそういった人たちはいると思う。
いる……かな……?(弱気)
例えば、ライブ会場にファン同士で祝い花を出すとき、誰かが代表してお金を取りまとめているし、それの規模が大きいものと考えたらいい……の……かな……?(弱気)
今、私は友人同士でルームシェアをしているんですが、友人同士で住む場合、賃貸の物件がそもそもなかったり、審査に時間がかかったりしたんです。お花くらいの金額ならともかく、不動産契約は代表者がいないと難しいじゃないですか。そうなると、その1人に万が一のときのリスクが集中してしまうのでは。
そこはリスクを背負うしかないよね(きっぱり)。何かをやるときは必ずリスクを背負う人が出てくる。ファンドだって責任重大だけど、必要なことは誰かがやらないと…ね。
リスクを覚悟するということでしょうか。
「覚悟」なんて思っちゃダメ、やりたい人がやるの。それに、家族同士だとリスクが存在しないなんてことはないでしょ? 家族の中で閉じてるから、リスクが見えなくなった結果、「自己責任」として捉えられてしまうの。
それは確かに。
今はクラウドファンディングもあるし。私も長~い間「ああしたい」「こうしたい」といい続けて、それに共感してくれた人が集まってくれた。
ずっと言い続けることも大事なんですね。
でもね、お金に関しては透明性は確保しないといけない。「ゆいま~る」では、入居者に決算書をオープンにしている。それが大事なの。自分たちが支払ったものが、どのように運用されているのか、なおかつ事業者が継続的に安定した経営ができるのかは周知して、きちんと折り合いをつけないといけないの。この仕事を30年もやっていると、いろいろなトラブルもあったよ〜。
今のお言葉、これまでめちゃくちゃ大変なことがあった感半端ないんですが。
透明性があると、お金関係のトラブルは減るからね。それは経験から生まれたものなの。
含蓄がありすぎる!
他にもたくさん聞きたいことが出てきました〜!
後編に続きます!
奈良県出身の漫画家・イラストレーター。小学生の頃V系バンドに目覚め、以後約20年をバンギャルとして過ごす。主な著書はバンギャル人生をネタにしたコミックエッセイ『バンギャルちゃんの日常①〜④』(KADOKAWA)。趣味はスーパー銭湯めぐりとプロレス鑑賞。
1981年生まれ。自衛官、書店員、DTPデザイナーなどの職を節操なく転々として、フリーランスのライターに。趣味と実益を兼ねたサブカルチャーの領域での仕事が多い。共著に「すべての道はV系へ通ず。」(シンコーミュージック)、「想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本」(サイゾー)など。
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