知っているのと知らないのとでは大違い。介護保険外サービスをうまく使って豊かな老後を実現させる。

介護認定を受けて、ケアマネジャーがプランを作成し、行政から受けるのが介護保険サービス。では、介護保険“外”サービスとはどういうものか、みなさんご存知だろうか。

今回、インタビューさせていただいたのは、シニアの暮らしを支えるサービス業務を行う「ダスキン ライフケア」。いわゆる介護保険外サービスを行う事業だ。その活用の仕方いかんで、老後はグンと変わる。目からウロコのお話をお伺いした。

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今回のtayoriniなる人
塩谷和也さん
塩谷和也さん 株式会社ダスキン ライフケア事業部 企画開発室 室長。
福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具専門相談員。
イベントの企画・レンタル事業から、貸与福祉用具の商品開発室を経てシニア向けサービスプロジェクトの一員に。2016年1月埼玉県和光市と公民連携協定を締結し“元気高齢者”を対象とした「わこう暮らしの生き活きサービスプラザ」を開設。介護保険外による高齢者サービスの重要性を改めて知り、2018年よりライフケア事業部へ。
泉由紀子さん
泉由紀子さん 株式会社ダスキン ライフケア吹田ステーション 店長。
介護福祉士、ガイドヘルパー、日本ブリーフセラピー協会認定ブリーフコーチ・エキスパート。
訪問看護ステーションで事務員として勤務の際、看護師と同行した訪問先で「介護」に触れ開眼。在宅介護やデイサービスで介護修行を経て訪問介護ステーションの管理者に。より「自由度の高い介護」を提供したいという思いが強くなり2018年よりダスキンライフケアへ。編み物が趣味でフェアアイルニットを勉強中。

介護保険ではカバーできないサービスを提供

――単刀直入にお聞きします。介護保険サービスと介護保険外サービスの大きな違いは何でしょうか?

塩谷

まず、ひとつ目は時間です。介護保険サービスを受ける場合、訪問介護に来てもらえる時間や日数は限られます。

例えば、要介護3の介護保険サービスのプラン例としては、週に2回デイサービスへ行き、1日60分程度の食事介助や排泄介助を受けるというような目安でプランされますが、その時間内にお掃除や洗濯、お料理なども一緒にと考えると、とても時間が足りず対象者の方とゆっくりお話をする時間などはほとんど取れません。

またそれは平日の日中プランで、土日祝日や夜間などは介護保険の範囲内ではサービスを受けられません。

――確かに十分な時間とは言えないかもしれません。

塩谷

私たちのサービスは1回2時間からが基本です。2時間あれば、お掃除やお料理をしたあと、じっくりお話することができます。最近の体調はどうか。何か気になることはないか。時間をかけて信頼関係を深めるので、その方が本当に求めているものを引き出すことができます。

そして、サービス内容が多様であることがふたつ目の違いです。気分がふさいでいらっしゃるようなので、お掃除は早く終わらせて、今日は一緒に公園に行く時間を多めに取ろうとか、一緒にランチを食べに行こうとか。そんな柔軟な対応ができます。介護保険サービスではケアプランで決められたことを実行せねばなりませんが、私たちの場合はそうではない。そこが強みです。

――店長の泉さんは、公的な介護サービスを行う事業所から転職されたとか。やはりそういう制約を感じておられたのですか?

はい。介護保険サービスでは手の届かない部分にもどかしさを感じていました。「もう少し時間があれば、もっとお役に立てるのに」と常々思っていました。もちろん、今の介護保険サービスは日本が世界に誇れる制度だと思います。でも、やはり公的機関で運営しているものですから、必要最低限のサービスにとどまってしまうのは仕方ないことだと思います。

例えば、認定を受けた高齢のお母様が、ひとり息子と一緒に旅行に行きたい。でも、お風呂はひとりでは入れないからヘルパーさんに同行して欲しい。そんな希望があっても、介護保険サービスでは対応できません。楽しみや娯楽などの人生のプラスアルファの部分は公的なサービスではカバーできないのです。でも、その楽しみこそが老後の人生を生き生きさせてくれるはず。そのお手伝いをするために、今の職場に転職しました。

 介護のプロが介護保険とほぼ同じサービスを行う

――提供するサービスの種類はどのようなものがありますか?

塩谷

食事作りやお掃除などの身のまわりのお世話、通院などの付き添い、トイレやオムツ交換などの身体介護。介護保険で提供するものとほとんど同じサービスが行えます。それに加えて、買い物や外食のなどの外出の付き添い、写真撮影のお手伝いやガーデニングなどの趣味のお相手など、楽しさや喜びを分かちあえるサービスも行っています。実に多種多様です。

――家事代行サービスと似たようなものと思っている人もいると思うのですが…

塩谷

料理や掃除のサービスもさせていただくので、そう思われる方もいるのかもしれませんね。家事代行は、契約した掃除などを徹底して行う「事(コト)へのサービス」、介護保険外サービスは「人(ヒト)へのサービス」といったら、わかりやすいでしょうか。高齢者の身体や心理の変化、その状況に合わせた介護研修を受けた介護のプロがケアスタッフとしてお伺いし、その方の状況を見極めて、より良い生き方、生活の仕方をサポートします。料理や掃除などはその一部です。

もともと私たちの事業は、アメリカの介護事業者とフランチャイズ契約したことから始まっています。事業スタートは日本で介護保険制度が導入された年と同じ2000年。いわば、日本の介護保険サービスと同じ歴史があり、より良い介護のあり方を模索しながら、サービスもケアスタッフも進化し続けています。

塩谷

当時のアメリカでは日本よりも認知症に対する理解が進んでいましたので、認知症の方にどう接するのが良いのかというノウハウは私たちの事業にも早くから反映されていました。認知症の方の場合、しっかりと言動を見守り、時間を掛けて傾聴し、ご本人の意図に共感しながら行動を促すなど、介護保険だけではカバーできないことがたくさんありますから。

私たちのサービスが「しっかり介護もできる」ということはまだまだ認知不足かもしれません。私の担当店では、寝たきりの方が歩けるようになり、お風呂も自分で入れるようになったという事例があります。それによって生活の自立度が上がり、もともと受けていた介護保険サービスもだんだんと必要が無くなっていきました。

――それは、中身の濃いサービスが届けられている証ですね。

はい。先ほどお伝えしたように、じっくり時間を取れることでお客様と信頼関係が築けることが大きいです。人と人との関わりは「心」の部分が大きく、「もうちょっとがんばって歩いてみようかな」「今日は気分がいいからお風呂に入ってみようかな」という前向きな気持ちになるには、信頼できる人と心地よく過ごしていることが大切です。私たちのサービスで大事にしているのは、傾聴と気づき、そして共感。お一人おひとりの思い描く老後の暮らしを叶えるために、オーダーメイドで応えています。

また、ケアスタッフは全員、会社で定めた研修を受けてからサービスを始めます。ご高齢者に関する基本知識から学び、危険予知研修、家事研修、身体介護研修、コミュニケーションや傾聴の研修、認知症ケアプログラム、コンパニオンシップ研修(相手の身になって考え行動すること)を継続して行い、スキルアップを図っています。この人になら安心して任せられる。そう思っていただけるよう、ケアスタッフも努力しています。

公的介護保険にはないスピード感が予防につながる

――柔軟な対応ができるというのはスピード感にもつながるように思います。例えば、ご夫婦のどちらかが急に入院になったときの残された家族のサポートなどです。

塩谷

そうですね。例えば、要介護認定のあるご主人が急に入院することになった。残された奥様は突然ひとり暮らしになり、病院の往復や家事で疲労困憊。しかし、奥様自身は要介護認定を受けていないので、何のサービスも受けられない。よくある事例です。

こんなとき、私たちのケアスタッフなら、すぐさま奥様のサポートを始めることができます。奥様が病院にお見舞いに行っている間に料理や掃除を行い、ご主人の様子をお聞きする話し相手になります。気分が落ち込んだら一緒に散歩に行くことができます。奥様は介護認定を受けていない。しかし、誰かのサポートを必要としていることは間違いありません。お子さまが遠方に住んでおられたりすると、なおさらこうしたサポートをお子さまが持続的に行うことは困難です。

塩谷

高齢になると、突然の環境変化が老化を加速させることがあります。精神的な落ち込みが認知症を引き起こすこともあります。もしかしたら、慣れない病院の往復で体を壊すかもしれない。ですから、常にご家族全体の状況を把握しているケアスタッフが臨機応変に対応することは老化や介護の予防にもなるのです。

――介護保険外サービスの導入が介護の予防になる。これは全く想像していない視点でした。

塩谷

「突然の状況の変化に対応できること」と「将来を見据えた予防になること」。この2つは介護保険外サービスの大きなメリットです。両者は正反対の事柄のように見えますが、実は表裏一体なのです。突然の出来事にしっかり対応しないと、さまざまなことが後手後手になり、結局事態がさらに悪化し、心や体に不調をきたすかもしれない。

元気なうちに私たちのサービスを活用していれば、異変を感じたときに速やかに地域包括センターやケアマネジャーへつなげることが可能です。遠方にお住まいのお子さまが年末年始の帰省で親の異変を感じたとします。その後、日常に戻ってから親のことが気にはなりつつも、具体的な策をどう講じればいいかと考えているうちに時間だけが過ぎていく。その間、親の身体機能の低下や認知症はじわじわと進行する恐れがあります。

――介護認定を受けるような段階に入る前から、サービスを受けておけば、いろんな目が行き届くというわけですね。

「いずれ介護になったらあなたに任せるわ」と私たちのサービスを介護が本格的に必要になる前から導入していらっしゃる方は少なくありません。例えば、ご高齢でひとり暮らしの方からお掃除などの家事を任せていただいていますが、その方に将来介護が必要になったら、現在訪問しているケアスタッフがそのまま介護業務も行うのです。

高齢になると人付き合いも減りますし、いきなり新しい人と信頼関係を築くのは骨が折れる作業です。でも、日常的にお世話している人がそのまま介護も引き継いでくれたら、安心感がありますよね。いつもどんな暮らしをしているのかわかっていますし、何が趣味で、食事は何がお好みかも把握している。もちろん、公的な介護保険サービスも並行して導入されればいいと思います。実際、このサービスは公的機関に任せた方がいいなと思ったら引き継ぎますし、ケアマネジャーさんとの連携もしっかり行っています。

ますます多様になる老後の生き方に必要なものとは

――家事や介護などの身のまわりのお世話以外に、趣味や娯楽のお相手をするというのもユニークです。

塩谷

今を生きるシニアの方たちは、若い頃からいろんな文化に触れ、人生を謳歌しており、趣味嗜好もさまざまです。これまで自分の暮らしに彩りを与えてきたものをできれば手放したくない。好きなものに囲まれ、好きなことを楽しんで老後を暮らしたい。みなさんそう思っておられると思います。
精神的な充実感が生き生きとした老後に結びつくということは、誰しも想像できることでしょう。でも、それを実現するためには何が必要なのか。できるだけ健康でいること、そして上手に人の助けを借りることです。そのために私たちのサービスをうまく活用してほしいと思います。

また、介護福祉用品をうまく使うというのもお勧めです。ダスキングループでは、ダスキン ヘルスレントという介護福祉用具のレンタル事業を展開しており、「ものが寄り添うサービス」をモットーに事業展開を行っています。生活の中で“もの(用具)”があることで人は動きやすくなり、もっと動きたいと思うようになります。使い心地のいい用具が生きる支えになるときもあります。

塩谷

例えば、起き上がりや立ち上がりがむずかしくなった方に背あげ機能がついたベッドや横に手すりを設置することで最初の一歩を動きやすくし、日々を活動的にお過ごしいただけます。最近は福祉用具の性能もどんどん向上しており、ベッドの手元スイッチでご家族さまのスマホへ呼び出しができたり、スマホでベッドの操作ができるものもあります。もちろんこれらは介護度によっては介護保険をご利用いただけますので、ケアマネジャー、福祉用具の専門家“福祉用具専門相談員”へご相談の上ご利用ください。

私たちが行っているのはトータルライフケア。人のサービスも、もののサービスもうまく利用すれば、自分が思い描く豊かな老後に限りなく近づけるのではないかと思っています。

中村あゆ美
中村あゆ美 ライター

広告会社制作部勤務を経て、1995年に独立。京都北部の田舎に移住し、夫とともにデザイン事務所を創業。広告・雑誌・Webなどの幅広いメディアにおいて、コピーや取材記事、編集記事などを執筆する。介護支援企業における広報誌の編集業務も経験、介護関連のパンフレット制作なども行う。

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