同居介護│実家の父を呼び寄せる際に注意すべきポイント

親と離れて生活をしていると、介護が必要になった時に心配事も多くなっていきます。「ならば同居した方が安心」ということで、同居を考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、父親と同居するうえで、注意しておきたいことや、同居で起こる困りごとについての対処法を、実例を見ながら解説していきます。

実例:Aさんさん、100歳、男性、要介護2

病気
高血圧、パーキンソン病
身体状況
屋内つたい歩き、屋外車いす、着替えなど身の回りのことは自分でできる
家族関係
他県に住む長女

地方に住むAさんは、15年前に妻が他界してから1人で生活していました。買い物や家事はすべて自分で行い、100歳ながらも自立した生活を送っていました。しかし、足腰が弱ってきて、自宅で転ぶことが増えてきたため、心配した長女は同居することにしました。

同居してからは、自宅内で転倒することが多かったため、手すりを各所に取り付けて、転ばないような環境を作りました。

また、父が好きだった囲碁が楽しめるように、地域の碁会所へ週2回連れていくなどサポートしました。 趣味活動を行えるデイサービスと、パーキンソン病を考慮しリハビリ型のデイサービスにも通わせることにしました。

長女は、碁会所や地域の体操教室に連れていき、献身的に同居介護をしていました。

しかし、生活を始めてから3ヶ月経過したころ、ベッドから起き上がるのが大変になり、夜中トイレに行くこと、時間がかかってしまい間に合わなくて失敗をしてしまうことが増えてきました。

それから、長女は父親が夜トイレに行くときに、転ばないか心配になってしまい、少しでも物音がすると目が覚めてしまいぐっすり眠ることができなくなってきました。不眠が続き長女も疲弊してきて、同居介護が限界になってしまったため、ケアマネジャーに相談し、ショートステイを利用することになりました。

Aさんは、ショートステイの利用に気が進みませんでしたが、長女のためと思い利用することにしました。ショートステイでは、トイレが遠くなってしまいオムツ内でせざるを得なくなってしまい、とても悲しい思いをしました。

帰宅したAさんは、長女に対して「なんであんなところに入れたのだ」と怒鳴りつけました。長女は、父親に申し訳ないことをしたと、自分の都合でショートステイを利用したことに後悔しました。

その後、ショートステイを利用することなく、長女が介護を続けました。暑い日が続き、日に日に弱っていくAさんでしたが、長女は自分が介護しないとという思いで、自宅での介護を続けました。その結果、脱水症となり病院に入院することになってしまいました。

入院で、Aさんは寝たきりの状況になってしまい、自宅に帰ることは出来なくなってしまいました。 長女は、「もっと私がきちんと同居介護をすればよかった。同居した意味がなかった」と自分のしてきた介護に後悔してしまいました。

実例から学ぶ同居介護の注意点

長女の父親に対する献身的な思いが強く、自分で抱え込んでしまい、後悔をしてしまう実例でした。

この事例から見える、同居介護の注意点を見てみましょう。

父が楽しんでいた趣味を継続する

同居前に楽しんでいた趣味があるようであれば、同居してからも行えるようにすることはとても大切なことです。

男性は趣味などの機会がないと、外に出る機会がなくなり引きこもりになってしまうことや、新しい知らない土地で友人を作るきっかけにもなりません。やっていた趣味があるようであれば、その楽しみが同居しても行えるようにすることも注意して同居の準備してみましょう。

Aさんは、趣味をデイサービスでも、地域の趣味活動でも行えていました。新しい知らない土地で生活するうえで、趣味が続けられたことは、不安な気持ちを解消するのに、とても良い取り組みだったと思います。

父親のプライドを傷つけないように注意する

100歳になるまで、1人で生活してきたAさん。自宅で自立した生活をしていたため、人にお世話になることや弱いところを見せることで傷つく場合があります。特に男性としてのプライドもあり、そういう気持ちは強くあるかもしれません。

トイレの失敗が出てきたことで、リハビリを頑張っていたAさんですが、ショートステイ先で他人にトイレの失敗を明かさないといけないということは、とても傷ついたのではないかと思います。

同居にあたっては、他人には知られたくないことも知られてしまう場面もあり、父親のプライドがどんなことに重きをおいているのかなどを意識する必要があります。

別居していたことは悪いことではない

Aさんの家族のように「今まで一人暮らしをさせてしまったから、今度は同居介護をしっかりして、親孝行したい」と思う方もいるかもしれません。しかし、離れて暮らしていたことは何も悪いことではないですし、後悔することでもありません。

そのため、同居介護に気を張らず、心の余裕を持って行うことが大切です。Aさんの家族のように、抱え込んでしまったり、全て自分のせいにしないようにしましょう。

実例から学ぶ同居介護の対処法

実例の中から学べる対処法はどのような部分でしょうか。対処法について考えてみましょう。

新たなサービスを利用するときには、現状をしっかり伝える

人は誰しも、新たな環境での生活に不安を覚えるものです。

その不安を少しでも軽減できるように、ショートステイなど初めて利用するサービスの場合には、自宅での生活をしっかり伝えるようにしましょう。父親が日常生活で何を楽しみにしているのか、どんなことに悩んでいるのかということは、注意して介護サービス側に伝えます。

Aさんの場合、デイサービスで楽しんでいる趣味を伝え、ショートステイで行えたらショートステイが楽しいものになっていたかもしれません。またトイレの失敗について悩んでいることを伝えていたら、トイレに行きやすい環境でショートステイを利用できたかもしれません。

現状をしっかり伝えることが大切です。

一人で抱えず困ったときは誰かに頼る

同居介護するとなると、「父親は自分がみないといけない」という気持ちになるでしょう。しかし、1人で介護には限界があります。

Aさんの実例でお分かりいただいた通り、最後には家族が自分を責めるようになり、人に頼ることを避けたことで、Aさんの場合は入院することになってしまいました。

もし、誰かに頼ることができていたら、訪問診療を利用して点滴などの医療を受けることができたかもしれません。親を受け入れる家族としては「同居するなら最期まで面倒をみたい」という気持ちがあるかと思います。

しかし、家族だけでは介護は難しい場合もあるのです。適宜、専門家の力を借りることも意識するようにしましょう。

同居介護だからといって、気を張らないのが上手くいくコツ

ここまで父親との同居介護について、実例を見ながら解説してきました。同居したから介護しなければという使命感に襲われるかと思いますが、気を張らずに他人にお願いすることが、同居介護が上手くいくコツでもあります。

困った時には、人に頼ること、同居だからといって家族介護がすべて解決するわけではないということを、意識しながら同居介護をはじめてみてはいかがでしょうか。

著者

森 裕司

森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
11年医療ソーシャルワーカーを経験後、介護支援専門員(ケアマネジャー)として相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。最近では、新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活躍。
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