【はじめての方へ】パーキンソン病のリハビリ|病院と自宅で行うリハの特徴

パーキンソン病の方の生活環境

パーキンソン病は、脳の大脳基底核というところで運動の指令を伝える神経伝達物質「ドパミン」の欠乏により起こります。

主流となる治療法には「薬物療法」と「リハビリ」があり、予後はさまざまですが少しずつ進行していく病気です。そのため、患者さんは不安を感じ、ご家族も関わり方に悩むケースが多くみられます。

そこで、臨床現場で治療にあたる理学療法士として、患者さんとご家族に知っておいていただきたい具体的なリハビリとアドバイスをお伝したいと思います。

リハビリの内容を先に知りたい方は「専門職による6種のリハビリ」からご覧ください。

パーキンソン病の原因|ドパミンと4つの症状

パーキンソン病は、脳の大脳基底核で運動の指令を伝える神経伝達物質「ドパミン」が欠乏することにより起こります。

大脳基底核は身体の運動をスムーズに行うための役割を持っています。これが障害されるため、パーキンソン病では「4大症状」といわれる特徴的な症状がみられます。

パーキンソン病の4大症状

  • ① じっとしているときに手足がふるえる(安静時振戦:しんせん)
  • ② 動作がゆっくりになる、動けない(無動、動作緩慢:かんまん)
  • ③ 前かがみになりやすい、転びやすくなる(姿勢反射障害)
  • ④ 全身の筋肉がこわばる(筋固縮:きんこしゅく)

また、表情が乏しくなる(仮面様顔ぼう)、歩こうとすると足がすくむ(すくみ足)、足の運びが小刻みになる(小刻み歩行)、声が小さくなる(構音障害)、ムセやすくなる(嚥下障害)といった症状も、上記の4大症状から起こります。

緊張したり疲れていたりすると症状が強く生じることがあるため、「見られているときには自分でやらない」「他者に依存的だ」などと誤解されることが多いです。

パーキンソン病の予後はさまざまですが、症状は少しずつ進行していくとされています。

【はじめての方へ】パーキンソン病とその治療法

薬物療法とリハビリが治療法の主流

パーキンソン病の主な治療法は、「薬物療法」と「リハビリ」の大きく二つ。それぞれの役割について紹介します。

薬物療法で症状を軽減

現在のところパーキンソン病は完治できる病気ではありませんが、適切な薬物療法により症状を軽減することができます。

不足したドパミンを補充するL-ドーパや、ドパミンに似た作用をするドパミンアゴニストなどを組み合わせて治療する方法があります。

L-ドーパはとても効果のある薬ですが、長期間の内服による副作用(効果の持続時間が短くなる、症状の日内変動が起こる)を生じることがあります。

リハビリで症状の進行を遅らせる

リハビリの主な目的は「症状を軽減すること」と「症状の進行を遅らせること」です。

例えば、無動(動作緩慢)は外部からの刺激(視覚や音のリズム)で軽減します。すくみ足や小刻み歩行も同じです。筋固縮は、症状にあった運動やリラックスすることで軽減します。

パーキンソン病では、活動性が乏しくなることによって全身の筋力、柔軟性や持久力が低下します。さらに認知機能も衰えやすくなります。これらの症状の進行を遅らせることも、リハビリの大事な目的となります。

専門職による6種のリハビリ

パーキンソン病の主なリハビリ

 病院や介護施設で専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が行うリハビリは、主に以下の6種類となります。

①リラクセーション

リラクセーションとは、患者さん自身では解消できない筋肉のこわばりに対するリハビリの一つで、ここでは筋固縮の軽減を目的に行います。

患者さんは仰向けか背もたれに寄りかかった楽な姿勢をとり、専門職の介助を受けながら手足や首、体幹の屈伸運動を行ったり、一定のリズムで揺らしてもらったりします。徐々に固縮が軽減していきます。

②ストレッチ

運動前に行われる一般的なストレッチに似ていますが、十分な効果を得るには1回あたり20秒間、2~3セット、しっかり筋肉を伸ばすことが大切です。

特に首、体幹を捻じるストレッチと伸ばすストレッチ、もも裏を伸ばすストレッチを重点的に行います。

③筋力強化運動

患者さんにあった方法で自重トレーニングやウェイトトレーニングを行い、筋力の強化をはかります。

視覚や音のリズムによって動きやすい状況を作ることができるため、専門職の声かけや運動に合わせて、リズミカルに行うことがポイントです。

特に足のつけ根(大腰筋)とももの筋肉(大腿四頭筋)を重点的に鍛えます。

④歩行練習

歩幅に合わせて横断歩道のような線を引いたり、メトロノームのリズム音(あるいは声かけ)を使ったりします。これにより、すくみ足や小刻み歩行が起きにくい状況を作ることができます。

歩き始めや方向転換、歩き終わりで腰かける動作が苦手になりやすいため、重点的に行います。

⑤生活動作練習

着替え、身だしなみ、食事、排せつ、入浴などの生活動作が難しい場合は、症状に合わせた動作の練習をしたり、ばね付き箸などの自助具を試したりします。無動(動作緩慢)により書く字が小さくなる症状(小字症)があれば、罫線やマスのある用紙に大きな字を書く練習をします。

⑥構音(こうおん)、嚥下(えんげ)練習

無動(動作緩慢)や筋固縮により、声が小さい、抑揚が乏しい、発音が不明瞭などの構音障害(喉や口で言語音をつくる過程の障害)を生じます。また、嚥下障害(食べ物を細かく噛んで、かたまりにして、飲み込む過程の障害)を生じ、ムセやすくなります。

これらの症状に対して、呼吸筋の強化運動や構音練習、嚥下検査、嚥下訓練、そして食べ物の形態やトロミ剤の検討などを行います。

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生活環境も整えたい!自宅でできるリハビリ

無動(動作緩慢)や筋固縮などによって常に身体に負担がかかり、なおかつ自分自身では対処が難しいのが、パーキンソン病の特徴の一つです。

日々の症状を少しでも軽減し、進行を遅らせるために、そして生活動作を楽にするために、ご自宅でも行えるリハビリを紹介します。

棒体操によるリラクセーション、ストレッチ

棒体操は、ご自宅でリラクセーション、ストレッチとして行える手軽な運動の一つです。

両手を肩幅くらい開いて棒を握り、上にあげる運動、横に動かす運動を行います。それぞれ10回を2~3セット。このとき、顔を棒の方に向けると身体を大きく動かすことができます。

また、ご家族が声かけをしたり、一緒に行ったりすると無動(動作緩慢)の症状を軽減できます。棒は、杖を使っても新聞紙を丸めて作っても構いません。

歩行練習

パーキンソン病の歩行訓練

歩行練習は、専門職がいなくても行いやすいリハビリの一つです。

ポイントは、歩き始める前に一緒に姿勢を正したり、付き添うご家族が大きく膝を上げる動きを見せたり、かかとから足を着くよう促したり、「1、2、1、2」というリズミカルな声かけをしてあげることです。

これらによって、歩きやすい状況を作ることができます。

生活環境を整える

パーキンソン病の方の生活環境

玄関からリビング、リビングからトイレ・ベッドなど、よく歩くコースの床に、歩幅に合わせた横断歩道のような線を引くと、歩きやすく、転びにくくなります。線を引くのに使う物は、ビニールテープや養生テープなどで良いでしょう。床にあまり物を置かず、片づけておくことも有効です。

手すりの設置は、手すりにつかまることを意識することですくみ足が起こり、転びやすくなることがありますので、注意が必要です。床での立ち座り動作はとても大変なので、椅子やベッドを使うことをお勧めすることが多いです。

動作が行いやすい生活環境を整えることで、自ずと活動量が増え、生活動作そのものがリハビリにもなっていきます。

まとめ

パーキンソン病はドパミンの欠乏により起こります。主流となる治療法には薬物療法とリハビリがあり、少しずつ進行していく病気です。

そのため患者さんは不安を感じ、ご家族も関わり方に悩むケースが多くみられます。ここでは、臨床現場で治療にあたる理学療法士として、患者さんとご家族に知っておいていただきたい具体的なリハビリとアドバイスをお伝えしました。

症状や予後、必要な治療は個人により異なります。具体的なところは、ぜひ医師や理学療法士にご相談ください。

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イラスト:安里 南美

この記事の制作者

安藤 岳彦

著者:安藤 岳彦(介護老人保健施設ひまわりの里 リハビリテーション部長)

認定理学療法士(地域理学療法、健康増進・参加)、中級障がい者スポーツ指導員
1999年秋田大学医学部付属医療技術短期大学部理学療法学科を卒業。
医療法人社団三喜会鶴巻温泉病院に勤務。介護老人保健施設ライフプラザ鶴巻、医療法人篠原湘南クリニッククローバーホスピタル、医療法人社団佑樹会・介護老人保健施設めぐみの里の開設を経て、現職。療養・生活に寄り添うリハビリ専門職として、日々の業務に従事しています。

所属先介護老人保健施設ひまわりの里

公式湘南西部スポーツクラブ

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