【専門家が解説】ふだんの掃除がラクになる!高齢期の介護予防体操

掃除は生活の一部ですが、高齢になると少しずつ身体が動かしにくくなり、掃除をすることも負担になってきます。

ここでは掃除が負担に感じる原因や、その対処法となる介護予防体操ついて紹介していきます。

掃除ができなくなる原因

掃除が億劫に感じてしまう原因はさまざまです。

たとえば脳梗塞の後遺症で麻痺が残ったり、骨折による身体の不自由さなどが原因になることもありますが、病気やケガがなくても、身体をあまり動かしていないことが原因となる場合もあります。下記が主な原因です。

身体が硬くなる
身体が硬くなると、腕を伸ばしたり身体をひねったりすることが難しくなります。
そのため、高いところや遠くに手を伸ばしたり、かがむという掃除に必要な動作がやりにくくなります。
筋力が低下する
自分の身体を支えるための力はもちろんのこと、掃除機をかけたり浴槽を磨くためには筋力が必要です。
筋力が弱くなることでふらついてしまったり、掃除道具を長時間持てなくなる・ふき取りに力が入らない・雑巾をしぼれない、というようなことが起きてきます。
バランスが悪くなる
立ち姿勢で行う掃除の場合は安定感が大切です。よろけてしまったり、何かに掴まらなくてはいけないようでは、掃除がさらに大変なものとなります。
バランスの悪さは、身体の硬さや筋力低下の影響が大きいですが、めまいが続いていたり、身体の傾きが分からなくなる場合は、病院で診てもらった方がよいかもしれません。
体力がなくなる
掃除をするには体力が必要です。体力がないとすぐに疲れてしまうため、なかなか掃除がはかどりません。
痛みがある
掃除をするのが大変と感じる方の中には、膝や腰の痛みがある方も多いのではないでしょうか?
痛みは運動不足と関係ない場合もありますが、運動不足のせいで筋力が衰えたり、硬くなったりして痛みが出てきたり悪化するものもあります。

【動画】掃除がしやすくなる介護予防体操

前述のように、掃除が上手くできなくなる原因はいくつかありますが、その中でも筋力不足と身体の硬さは、体操することで改善が期待できます。

ここでは掃除をするのに役に立つストレッチや筋トレなどの体操を紹介します。身体の状態により、ムリに行わない方がいい場合もあります。

腰や背骨に問題があるなど心配な場合は、かかりつけ医に相談してからはじめてみましょう。

掃除・洗濯動作の体操

掃除や洗濯をするためには、腕や体感の大きな動きが必要になります。ここでは、肩や体幹を柔らかくする体操を紹介します。

手と身体を伸ばす運動

  • ①椅子に腰かけ背筋を伸ばします。
    ②両手を前に伸ばします。
    ③手を前に伸ばしたまま身体を前に倒します(背中は伸ばしたまま)。
    ※大変な場合にはテーブルに手を乗せておこないます。
    ④身体を元の位置に戻します。
    ⑤この体操を、左右10回ずつ繰り返します。

身体をひねる運動

  • ①背もたれのある椅子に腰かけます。
    ②ゆっくりと左に身体をひねりながら、両手で左側の背もたれをつかみます。
    ③そのまま5秒とめたらもとの位置に戻ります。
    ④この体操を、左右交互に10回ずつ繰り返します。

食器洗い動作の体操

食器洗いを行うためには、立っていることが必要です。指先の動きも大切ですが、ここでは立位バランスがよくなる体操を紹介します。

主に股関節周りの筋肉を鍛える体操になります。

足を開く運動

  • ①立った状態で物につかまり、倒れないようにします。
     ※仰向けでおこなってもよいです。
    ②つま先は前を向けたまま、右足を横にゆっくりと大きく開き、ゆっくり閉じます。
    ③この体操を、左右10ずつ繰り返します。

お尻上げ

  • ①仰向けに寝て、両膝を立てます。
    ②5秒数えながらお尻を浮かせます。
    ③5秒数えながらお尻をゆっくり下ろします。
    ④この体操を10回繰り返します。

ゴミ捨て動作の体操

ゴミを捨てに行くには、必ず歩いて外に出なければいけません。物を持って安全に歩くということが必要となります。

まずは上で紹介した食器洗いのための体操(立位バランス)をした方がよいのはもちろんですが、さらに足先の動きも必要になってきます。

かかとを上げる

  • ①立った状態で物につかまり、倒れないようにします。
    ②ゆっくりと踵を上げ、つま先立ちになります。
    ③ゆっくりと踵を下ろします。
    ④この体操を10回繰り返します。

つま先を上げる

  • ①椅子に腰かけ、膝は直角に曲げます。
    ②かかとを床についたまま、両足のつま先を上げます(かかとだけが付いている状態)。
    ③ゆっくりとつま先を下ろします。
    ④この体操を10回繰り返します。

その他の掃除動作体操

  • 決して無理はせずに、継続できる範囲内で実施してみてください。もしも痛みなどが生じた際は体操を止め、医師の診断を受けましょう。
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    https://www.fuku-kuru.tv/taiso

掃除がしやすくなる工夫

掃除を楽に行うためには、自分の身体を変えていくことが大切ということを紹介してきました。次は、工夫や道具によって掃除を楽に行う方法を紹介します。

自分の身体をよくすることは必要なことですが、それでも大変な場合には、環境を工夫したり、便利グッズを使ったりすることでより快適に掃除を行うことができます。

掃除機掛け・床掃除

掃除機掛けを毎日するとなると、キャニスター型の重い掃除機を運んできてコンセントを差し。家の中を掃除して回るという動作が必要です。これを日々行うのは相当な労力でしょう。

近年、スティック型のコードレス掃除機や、自動で清掃してくれるお掃除ロボットを使うことで、身体的な負担を軽減することができます。

また、床拭きはしゃがまなければいけないため、足腰の筋力が低下している方にとっては大変です。

この場合も、使い捨てのフローリングワイパーやモップを使うことで、立ち姿勢のまま床拭きをすることができます。負担軽減に役立つでしょう。

トイレ・お風呂掃除

トイレ掃除は、立ち姿勢の状態で腰を曲げて行うため、特に腰への負担が大きい動作です。

折り畳み式の小型の椅子などに座ることで、掃除も楽に安全に行うことができます。

便器の中は柄付きのブラシを使い、便器周りなどは使い捨てのトイレ用お掃除シートを使えば、雑巾を洗ったり絞ったりする手間も省けます。

また、便器の中に汚れを付きにくくするトイレスタンプ(便器の中に貼り付ける洗浄剤)などもあるため、そういったものを使うと掃除の回数を減らすことができます。

お風呂掃除も、柄付きのブラシを使うことで、立ったまま楽に浴槽を洗うことができます。

不安定な場合は、浴室内に手すりを付けたり椅子に座って行うとよいでしょう。最近は、吹きかけて数分後に洗い流すだけでよい洗剤もあるので、上手に活用しましょう。

食器洗い

食器洗いの大変さは、ずっと立っていなければいけないことです。

立っているのがつらい場合は、高めの椅子を用意して、座って行うことで楽に行うことができます。

ごみ捨て

ゴミ捨ては、ゴミ袋などを手に持った状態で歩くという大変さがあります。

物を持って歩くことが大変なのであれば、物を乗せられるタイプの「歩行器にゴミを乗せて運ぶ」という方法があります。

自治体によっては、身体の不自由な高齢者の自宅にゴミを収集しに来てくれるサービスがあります。そのようなサービスを利用するのもよいでしょう。

訪問介護サービスを利用する

  • 掃除だけに限りませんが、自分で行うことが難しい家事を「生活支援」として訪問介護サービスにお願いするという方法もあります。
    安全な在宅生活を続けるために、自分でできることは、自分で行い、部分的に訪問介護を利用することを検討してみましょう。
訪問介護について詳しく見る

介護予防体操で、掃除が楽になる身体作りをしましょう

掃除は生活をしていく上でかかせないものです。身体が硬くなったり、筋力が落ちたりすると、続けていくことが難しくなります。

まずは自分自身の身体をよくすることが大切ですが、便利な物を使うなどの工夫も大切です。

安全で安心な生活がおくれるよう、介護予防体操で身体作りをしながら、生活に便利なものは取り入れていくようにしましょう。

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この記事の制作者

中村 裕子

著者:中村 裕子(理学療法士)

2000年より理学療法士として、医療機関に勤務。現在は育児をしながら、ワーキングマザーとして、非常勤でリハビリ対応を行っている。

森 裕司

監修者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

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