高齢期の不眠|その原因と対処法

年齢を重ねていくと、睡眠が浅くなったり、眠れなくなる方もいるのではないでしょうか。なぜ眠れなくなるのか、快適な睡眠のために何をすべきか、その原因と方法をご紹介します。

眠れなくなる原因はさまざま

そもそも、眠れなくなってしまう原因とはどのようなものなのでしょうか?いくつかの原因が考えられますが、なかには高齢者特有のものもあります。

日中の活動量が低下している

人間が睡眠を取る理由は体力の回復にあります。しかし、体力の低下や仕事がないことで日中に活動量が低下していれば、そもそも疲れていないため体力もあり余っています。

睡眠するためのトリガーとなる疲労が溜まっていなければ、睡眠のスイッチが入りにくくなってしまいます。その結果、睡眠不足になるという方は多いです。

こうなると日中に眠くなってしまい、さらに活動量が低下すると昼寝することが増え、昼夜逆転となってしまいます。それを防ぐためにも、日中の活動量を確保するということはとても大切なことです。

体を動かすことは介護予防にも繋がります。日中から体を動かす習慣をつけておきましょう。

加齢とともに体内時計が変化する

体内時計はおよそ25時間で決まっており、朝起きて、夜眠るというサイクルが体に刷り込まれています。しかし、高齢期になるとこのサイクルが乱れやすくなります

このサイクルをコントロールするメラトニンというホルモンの分泌量が、高齢期になると減るという研究結果があり、そのためと考えられています。

ホルモンバランスの乱れ

ストレスや疲労がたまると、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンというホルモンの分泌量が低下してしまいます。このホルモンは上述したメラトニンの原料となるホルモンです。

そのため、セロトニンが減るとメラトニンの減少に繋がり、体内時計の乱れから睡眠の質が低下してしまいます。

また、セロトニンの分泌量が減るとノルアドレナリンというホルモンの分泌量が増えていきます。このホルモンは体の興奮を促してしまいます。

睡眠は自律神経でコントロールされますが、体が興奮状態になるとこの自律神経の乱れにつながるため、睡眠不足になりやすくなるのです。

生活習慣病などの影響

糖尿病は生活習慣病としても有名ですが、これが不眠に影響する場合があります。糖尿病によって腎臓や膀胱の働きが悪くなることで頻尿が引き起こされます。糖尿病になると腎臓と膀胱の働きが悪くなり、多尿と呼ばれる状態になりがちです。

そうなると尿を排出する必要が増え、泌尿器の活動量が増える睡眠中に尿意を催すようになります。それにより中途覚醒が増えてしまい、睡眠不足につながりやすくなります。

また肝臓のトラブルがある方の場合、アルコールの摂取が睡眠障害に繋がる方もいます。生活習慣病と睡眠は切り離せない関係にあるのです。

睡眠不足が引き起こす諸問題

睡眠不足になると、どのような症状や影響があるのでしょうか?

日中の活動意欲が低下する

例えば学生時代も、眠くて勉強どころではなかったという方も多いのではないでしょうか?睡眠不足になることで脳の活動量が低下してしまいます。

脳は体全体の司令塔の役割を果たすため、司令塔が活動しなければ体は活動しなくなります。その結果、活動量が低下し、夜眠れなくなるという負の連鎖が引き起こされてしまいます。

転倒リスクの増大

睡眠不足は上述した通り、集中力の低下とともに注意力の低下も引き起こします。運動に対する集中力や注意力の低下はそのままバランス能力の低下を引き起こします。

若く筋力がある場合には大きな問題にはなりませんが、高齢で筋力が低下している方の場合、転倒によるう骨折という最悪なパターンもあり得ます。ここから寝たきり、要介護状態になる可能性がありますので、介護予防の観点からも重大な問題といえます。

病気になりやすい

上の項でも少し触れましたが、睡眠不足は生活習慣病をはじめとした病気にかかりやすくなります。

睡眠不足になると体が休まることができず、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが体内に蓄積されます。

このコルチゾールによって認知症が引き起こされる可能性が高まるほか、自律神経の乱れから自律神経失調症やうつ病、生活習慣病といった病気にもつながりやすくなります。そのほか、免疫機能の低下も招くため風邪やインフルエンザなどのウイルスによる病気にもかかりやすくなります。

病気の予防のためには睡眠は非常に重要なのです。

改善のためにすべきこと

睡眠不足によって引き起こされる問題や症状は上述の通りです。では、睡眠不足を解消するためにはどうすれば良いのでしょうか。気をつけるべき生活習慣について解説していきます。

規則正しい生活を心がける

原因の項でも説明させてもらった通り、睡眠には体内時計が重要になります。体内時計は規則正しい生活を繰り返すことで整いやすくなります。決まった時間に起きて、食べて、寝るということは体のリズムを整える上で非常に重要なポイントになります。

適度な運動をする

運動することで疲労感が生まれます。適度な運動や疲労感は体内のセロトニンの分泌を促しすので睡眠にとっては重要です。

特に朝日を浴びることが重要といわれ、朝日を浴びた14時間後程度で睡眠を促すメラトニンが分泌されると言われています。そのため、朝日を浴びながら運動してメラトニンの原料となるセロトニンを分泌させることで、夜にメラトニンが分泌されて眠りやすくなります。

単純に運動することで筋肉もつきますので、睡眠だけでなく介護予防のためにも重要なことです。

いつまでも健康な身体でいるために|高齢期のヘルスケア

栄養をしっかり摂る

セロトニンには、必須アミノ酸であるトリプトファンというタンパク質が欠かせません。さらに、そのセロトニンがメラトニンに合成される過程でもタンパク質やビタミン・ミネラルが必要になります。

また、睡眠にもある程度のエネルギーが必要になるため、寝るためには糖質も欠かせません。このように睡眠に必要な栄養素はとても多いのです。しっかりと栄養を摂ることが睡眠不足解消のためにも重要です。

高齢期の低栄養について詳しく見る

【動画】睡眠不足解消のための体操を紹介!

運動が大事なことは記事の中でも触れた通りです。しかし、何をしたら良いかわからない人も多いかと思いますので、そんな方にオススメの体操を紹介します。特に寝る前にすると効果的です。


 


 

指ほぐしの体操

  • ① 人差し指と親指で指の手のひら側と手の甲側を同時に摘みます。
    ② 指の付け根から指の先まで摘んでいきます。
    ③ 左右両方の手の指に行いましょう。

大きな力で摘む必要はありません。気持ち良い範囲で摘み、付け根から指の先まで5箇所程度摘むと良いです。

肩ほぐしの体操

  • ① 両手をそれぞれの方の上に乗せます。
    ② 肘を天井に向けてゆっくり動かし、5秒かけて肘を天井に向けていきましょう。
    ③ 5秒かけて天井に向ける動きを3回繰り返します。

肩に乗せる手の力は抜くようにしましょう。肘が天井に向くまで動かないという方は動くところまでで良いので、無理のない範囲で動かしましょう。前から上げていくパターンと、横から上げていくパターン両方やりましょう。

肩のストレッチ

  • ① 伸ばしたい側の手をまっすぐ前に伸ばします。
    ② 反対の手で胸の方に引き寄せましょう。
    ③ 引き寄せた状態で5秒ほど静止してストレッチ、これを左右の手で2セットずつしましょう。

このストレッチも思いっきりする必要はありません。動く範囲で、気持ち良い状態でするようにしましょう。また、反動をつけるのではなく、ゆっくりと伸ばすようにしてください。

深呼吸

  • ① お腹に両手を当てて、鼻から吸って口からゆっくりと吐きます。
    ② お腹に当てた手を意識して、吸って吐いてを3回以上繰り返します。

大きく吸って吐くことが大事ですが、肩の力が入らないように注意してください。リラックスして行うことが重要です。

両腕のストレッチ

  • ① 両手を合わせて、胸の前から5秒かけて天井の方に持ち上げます。
    ② そのまま5秒かけて元に戻します。
    ③ もう一度5秒かけて天井の方へ持ち上げます。
    ④ 肘を曲げて、5秒かけて頭の後ろに手を曲げていきます。

肩が動かない方や肘が痛い方などは無理をしないようにしましょう。リラックスするための体操なので、痛くない範囲で行うことが重要です。

首と両腕の運動

  • ① 片手を横に上げて、反対の手は肘を曲げて胸に当てます。顔は肘を曲げている方へ向けます。
    ② 5秒かけて首と腕の向きを反対にしましょう。
    ③ 2セット繰り返します。

肩の力を抜いて、ゆっくりと動かしていくのがポイントです。また、背筋を伸ばしながら行うように気をつけましょう。

体をひねる体操

  • ① 両手を体の後ろで組みます。
    ② 両手を左右に向けながら、上半身をしっかりひねります。
    ③ ひねった状態で5秒静止し、左右両方ひねりましょう。2セット行います。

腕からしっかりとひねるように意識してください。ただし、腕だけでなく体からしっかりとひねるようにしましょう。

目のマッサージ

  • ① 瞼を閉じて人差し指と中指で押さえます。
    ② 時計まわしと反対回しを2セットずつ繰り返しましょう。

軽くなでるようなイメージでマッサージしてください。強すぎると目の刺激になるため、優しくすることが重要です。

まとめ

睡眠不足は高齢者にとって病気や転倒など、日常生活を脅かす原因になりかねません。この記事を参考にして、睡眠不足が解消できるような生活習慣を身につけましょう。

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イラスト:安里 南美

この記事の制作者

福田 翔馬

著者:福田 翔馬(理学療法士)

広島県の整形外科クリニックにて理学療法士として勤務して7年目。患者様の痛みや生活動作を改善するために、何が原因で症状を出しているのかを考えながら日々精進しています。

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