【動画】高齢期の便秘予防法をプロが解説!

便秘は、日常的にもよくみられる症状ですが、そのまま放置してはいけません。

放置による状態悪化で、「腸閉塞」や「直腸潰瘍」などの合併症を起こすからです。

この記事では高齢者の便秘の特徴や、介護の必要な高齢者にもできる便秘予防方法について紹介します。

3日以上排便がみられないと便秘

一般的に、お通じがしばらく見られない状態を便秘といいます。腸の中に便がたまることで、お腹が張ったり、お腹の痛みが出たりするようになります。

お通じの頻度は個人差があるため、毎日排便がなくても、不快感がなければ問題はありません。

一方で、介護の必要な高齢者では、3日以上排便がみられない場合は、便秘と考えた方がよいでしょう。

高齢者の便秘について詳しく見る

便秘が原因で重い病気になることも

健康な人でも、水分や栄養の不足、運動不足、ストレスなどにより、一時的に便秘になることはよくあることです。

しかし、便秘をそのままにしておくと腸閉塞などの病気を引き起こすことがあります。腸閉塞は腸がねじれたり、便が詰まったりすることで起こります。

進行すると腸管が壊死し手術が必要な場合があるので、高齢者が便秘になったらきちんと対処することが大切です。

便秘が他の病気のサインとして現れる場合も

年齢問わず、多くの人にとって身近な症状である便秘ですが、全身の病気の症状として現れることもあります。

たとえば、大腸がんになると、腸にできものが生じ、排便時に出血がみられたり、便秘や下痢を繰り返したりするようになります。

また、うつ病やパーキンソン病などを発症すると、便秘を併発することも。

便秘と一緒にほかの症状が現れている場合は、なんらかの病気が隠れているケースもありますので、医療機関を受診するようにしてください。

高齢者にもおすすめしたい便秘予防

年齢を重ねると、さまざま要因から便秘になりやすくなります。ここでは高齢者におすすめの日常生活における便秘対策について紹介します。

食物繊維や乳酸菌の豊富な食事

便秘に効果的な食品には、食物繊維や乳酸菌が含まれている食べ物があります。

食物繊維は胃で消化されずに腸に届くため、腸を刺激して便の容量を増やす効果があります。また、乳酸菌は腸内にもみられる善玉菌で、お腹の調子を整える効果があります。

以下の点に注意してみましょう。


・こんにゃくや海藻、野菜やキノコなどを使ったおかずを、1食1~2皿取り入れる
・ヨーグルトは、毎日取り入れることで腸の環境が整っていきます。ただヨーグルトの種類が多いため、食べてみた感覚で、腸の調子がよいものを取り入れる

十分な水分補給をする

年齢を重ねると、のどの渇きを感じづらくなるため、水分の摂取量が不足しがちです。体の中の水分が少なくなると、腸内の便が固くなるため、便秘になりやすくなります。

高齢者の方が便秘予防するには、日頃から水分摂取を心がけるようにしましょう。水分は一度に大量に飲むと、尿として排泄されるため、こまめに取るのがおすすめです。

なお、便秘予防で水分を取るときは、なるべく緑茶やコーヒーは避けてください。

緑茶とコーヒーには、利尿作用のあるカフェインが含まれているためです。身体から水分が排出されると、便に含まれる水分も不足し、便が固くなり、排出されずらくなります。

またアルコールにも同じ作用があるため、過度な飲酒は控えるようにしてください。

おすすめは、毎朝バナナ1本と牛乳を一緒にミキサーにかけ、ジュースとして飲むのも良いでしょう。

高齢者の水分補給について詳しくみる

 適度な運動をする

運動をすることで腸の動きが促進し、便秘予防にも繋がります。

また、腹筋をはじめとする体の筋肉が維持されることで、排便時にお腹に力をかけやすくなるというメリットがあるのです。

とはいえ、高齢者のなかには運動をするのが難しいという方も多いでしょう。

次の項では、介護が必要な高齢者でも簡単にできる、便秘改善に効果的な体操をあげていきます。
 

【動画でわかる】骨盤周りの筋肉を動かす便秘予防体操

便秘改善に効果的なのが、骨盤回りの筋肉を意識した運動をすることです。骨盤回りの筋肉を動かすことは、腸の動きを刺激するため、便秘によい影響をもたらします。

便秘改善に効果的な運動法

  • 決して無理はせずに、継続できる範囲内で実施してみてください。もしも痛みなどが生じた際は体操を止め、医師の診断を受けましょう。
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こうした骨盤を中心とした体操をすると、体幹の筋肉を鍛えることができるので、骨盤のゆがみ改善にも繋がります。

イスに腰掛け骨盤を左右に動かす体操

骨盤を左右に動かすことで腸腰筋を鍛えて、便秘を改善する運動です。腸腰筋を鍛えることは高齢者の転倒予防にも効果的です。

  • 1.イスに座り、両手を腰に添えます。
  • 2.上半身をゆっくりと右側に移動させます。
    ※この時、体全体が動かないように注意してください。
  • 3.今度は上半身を左側に移動させます。
  • 4.左右交互に1回づつを1セットとして、3セット行いましょう。

骨盤を前後に動かす体操(基礎編)

骨盤を前後に動かして、腹筋や背筋を鍛える体操です。お腹周りの筋肉が鍛えられることで、排便時にいきみやすくなる効果があります。

  • 1.イスに浅めに座り、両手に腰を添えます。
  • 2.骨盤が後ろに行くように意識しながら、上半身を「く」の字に動かします。
  • 3.今度は、骨盤が前へいくように、上半身を反らせていきます。
  • 4.前後交互に3セットずつ行いましょう。

骨盤を前後に動かす体操(応用編)

骨盤を前後に動かすときに、両手で負荷をかけることで、より効果的に筋力アップを狙います。基礎編の体操に慣れてきたら、チャレンジしてみてください。

  • 1. イスに浅めに座り、両手をおへその部分に置きます。
  • 2.両手でお腹を押すようにして、骨盤が後ろへ行くように上半身を動かします。
    このとき、腹筋を意識して行いましょう。
  • 3.今度は、両手でお腹を押しながら、骨盤が前へ行くように上半身を動かします。
  • 4.前後交互に3セット行いましょう。

クールダウン(深呼吸)

骨盤周りの運動を終えたら、クールダウンのために深呼吸を行いましょう。深呼吸には自律神経を整える働きもあるので、便秘にも効果的です。

  • 1.イスに座り、両手を伸ばします。
  • 2.鼻から大きく息を吸いながら両手を頭の上で伸ばしましょう。
  • 3.今度は息をゆっくり吐きながら、円を描くようにして両手を元の位置に戻します。
  • 4.深呼吸を4回繰り返しましょう。

寝たままでもできるツボ押し体操

介護の必要な高齢者のなかには、体をスムーズに動かせないという方もいるでしょう。

ここでは、ベッドで寝たままでできる体操や、イスに座って簡単にできる体操を紹介します。

便秘に効果のあるツボ押し体操1

手のひらにある「合谷(ごうごく)」というツボを刺激すると、便秘改善に効果的です。

  • 1.手の人差し指と親指の線が交わる部分に位置します。
  • 2.片方の手で合谷をギューと押しましょう。
  • 3.片方の手の合谷を押したら、反対の手も行ってください。

※合谷は少し押すだけで痛みを感じることもあります。介護者が高齢者のツボを押すときは、まずは自分の手のツボを押してみて、強さの加減を確認してから行うようにしましょう。

便秘に効果のあるツボ押し体操2

腸が分布する腰回りには、便秘に効果のあるツボが集まっています。特に、背中にある便秘に効果のあるツボが「大腸兪(だいちょうゆ)」です。

  • 1. 親指以外の指が腰に来るように、両手を腰にかける。
  • 2.このとき、親指が左右の背骨に位置するように、やや後ろ側に組むのがコツ。
  • 3.背中に親指が触れている部分を、ギューと押していきます。

腸の形に沿った「の」の字マッサージ

高齢者の腸の動きは、さまざまな理由から鈍くなりがちです。便秘予防には、腸の形に沿ったマッサージも効果的です。

  • 1.仰向けになり、両ひざを立てます。
  • 2.両手を組んでおへその部分に置きます。
  • 3.右下腹部、おへのそ上、左下腹部と時計回りに「の」の字を描くようにマッサージを行いましょう
  • 4.「の」の字マッサージを3セット行いましょう。

腸もみマッサージ

人間の大腸は四角形をしており、特に4つの角の部分は、便の流れが滞りやすい部位です。腸もみ体操では、便秘の原因となりやすい、腸の四角を刺激することで、便の流れをスムーズにさせます。

  • 1.親指が前側にくるように、両手を腰にかけます。
  • 2.両手を上下に動かしながら、指で腰回りを押していきます。

程よい運動を心掛けましょう

食事や筋力低下などさまざま要因で、高齢者は便秘のリスクが高くなります。

特に、介護の必要な高齢者は、どうしても運動量が不足しがちです。毎日の生活のなかに、簡単な便秘に効果的な体操を取り入れることは、便秘予防だけでなく介護予防にもつながります。

紹介した体操を参考に、便秘予防をしてみてください。

イラスト:安里 南美

この記事の制作者

江波 明子

著者:江波 明子(看護師・保健師)

国立大学看護学部卒業後、都内の国立病院、私立病院で看護師として従事。消化器外科、乳腺外科、呼吸器内科病棟で多くのがん患者さんとかかわる。現在は、育児をしながら医療や健康の専門記事ライターとして活動している。

森 裕司

監修者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

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