介護付き有料老人ホーム『グッドタイムナーシングホーム・荏田』介護主任の下田尚宏さんは、20代後半で介護の仕事をスタート。

医療依存度が高いご入居者さまも多い同施設の仕事では、人生の最終章をどうサポートするか悩んだこともあるといいます。

さまざまな経験を経て、今、どのような思いで介護の現場と向き合っているのかを伺いました。

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看護職員が24時間常駐するメリットを活かす


──下田さんが介護の仕事を始めたきっかけは?

若い頃、僕はバイトをかけもちしながら劇団の仕事をしていましたが、20代後半になっていろいろ考え、定職に就こうと思ったことがきっかけです。

なぜ介護職を選んだかというと、当時は介護保険制度がスタートして数年が経った頃で、介護業界が注目されていたことが1つ。また、介護の仕事は守備範囲が広く、将来の親の介護など、自分の人生で役立つスキルを身につけられると思ったからです。




──下田さんからご覧になった『グッドタイムナーシングホーム・荏田』の特徴は?

やはり、看護師資格をもつ複数の職員が24時間常駐していることだと思います。ご入居者さまがお住まいの3つのフロアは、各フロアに最低1名の看護職員が常駐する体制を取っています。


──看護職員の24時間常駐は安心感がありますね。

ええ。丁寧な体調管理やケアはもちろん、何かあったときには的確な判断・対応を迅速に行えます。

また、普通の老人ホームだと看護師の出勤時間に影響されると思いますが、ここは24時間看護職員が常駐なので、その日の体調をもとにした入浴可否の判断なども時間を問わず行えます。そのため、ご入居者さまの生活リズムを可能な限り崩さずにすみます。



──ここはクリニックを付設し、関東でも数少ない人工呼吸器の方も入居相談可能な施設ですが、医療依存度が高いご入居者さまの割合は?

自立できる方とそうでない方が半々くらいでしょうか。医療依存度が高く経管栄養などを必要とするご入居者さまがいるフロアは、看護職員が頻繁に巡回して細やかにケアしています。

言い方を変えると、ある程度お元気なときから弱ってしまったときまで、一貫してご入居いただけることも当施設の特徴です。高齢になってから環境を大きく変えるのはいろいろな意味でリスクがあるので、これは大きなメリットだと思います。


「どう生きたか」を尊重する介護


──仕事では、どんなことにこだわっていますか?

当施設は終末期ケアが必要な入居者さまも少なくありません。そういったとき僕らには、最期の時間をどのように過ごしていただくかというQOL(quality of life:人生の質/生活の質)について、さまざまな葛藤が生じます。

でも、あることをきっかけに僕の中には軸ができて、今は「その方がどう生きたか」を大切にしたいと考えています。


──「どう生きたか」が軸になったきっかけとは?

以前、医師から「いつ何があってもおかしくない」と診断された終末期のご入居者さまがいらっしゃいました。しかし、その方はご自分の意思を伝えることができる状態で、大好きなお酒を「最後にどうしても飲みたい」とおっしゃったんです。


──それは、QOLの観点で悩みそうですね……。

はい。スタッフもものすごく悩んで議論しましたが、最終的にはご家族の同意をいただき、ビールを用意してスプーンでひとさじだけ口に運んでさしあげました。

その方は、もう飲み込むことができない状態でしたが、口に含むと「こんなにうまいものはない」と、とても喜んでくださいました。

そのときの満足そうな、本当にうれしそうな顔は忘れられません。以来、終末期でご本人が自分の希望を伝えられる状態のときは、杓子定規な対応はせず、できるだけお気持ちに応えたいと思うようになりました。





──「生活の質」への思いは、通常業務ではどのようなところで活きていますか?


例えば重度の認知症や、寝たきりのご入居者さまも「寝かせきり」にはしません。体調に問題がなければ起こして車いすに座っていただき、ダイニングスペースまでお連れします。

姿勢が変わると血の巡りがよくなるし、表情もわずかですが変わって、ずっと閉じていた目を開けてくださることもあります。そういうときは僕らも本当にうれしい。

たとえ話ができなくても、介護者のすることは必ず伝わっていると感じるので、その方にとって最大限に質の高い生活をご提供したいと思っています。


「人対人」で、個性を大切にする施設でありたい


──今後、介護施設はどう変わっていくとお考えですか?

今の時代はAIなどの普及も影響し、多くの業界でさらなる機械化が進んでいます。それは介護業界も同じで、機械化で業務負担を軽減しようという動きはこれからもっと大きくなるだろうと思います。

とはいえ、全てが機械化されればいいわけではなく、機械が対応すべきことと、人が対応すべきことに分かれるのではないかと考えています。


──「機械の対応」と「人の対応」は、どのように二分していくのでしょうか?

あくまで僕個人の意見ですが、例えば排せつなどのご本人が「他人に見られたくない」と思うものや、データ管理などは機械化が適していると考えています。

一方で、心を潤すコミュニケーションは人がいないと成り立たないでしょうし、先ほどのQOLの観点で、いつ、どうすべきかという判断やさじ加減も人でなければできないでしょう。

そういった、人がかかわるべき領域の質が高い施設が、僕にとっての「理想の施設」かもしれません。



──理想の施設を実現するために、やりたいことはありますか?

どこまで機械化するのが適切なのか、データを積み上げてきちんと検証したいです。そして、「人対人」を残すべき領域はどういう領域なのかをシャープにし、そこにフォーカスできる体制を整えたいです。


──それは、先ほどの「ご入居者さまの意思を尊重する」こととつながりますか?

そうですね。僕は、寝たきりであっても、認知症であっても、ご入居者さまの個性を大切にする施設でありたいと思うんです。「好きなもの」「やりたいこと」といったその方らしさの実現をどうサポートするかを考え抜き、お一人おひとりと全力で向き合っていきたいです。


(記事中のサービス内容や施設に関する情報は2019年12月時点の情報です)