質問

駅前で大規模な再開発が進み、子供から高齢者まで住めるような住宅ができるそうです。
多世代交流型住宅と呼ぶようですが、これはどのような特徴をもつ建物なのでしょうか?

回答
飯田 修一

多世代交流型住宅に明確な定義はありません。
老人ホームといった従来型の介護施設に住んでいると、生活環境が単調になる場合もあり、多様な生活形態が営まれないとの認識から、高齢者から壮年、若者、幼児の世代までを含む多世代の住まいを複合して建設する試みが始まっています。
幅広い世代が一緒に住むことにより、従来型の高齢者介護施設にはない多様性のあるコミュニティを作ることができるため、行政もこれを推進しています。
ここではこれらのトレンドを多世代交流型住宅として紹介したいと思います。 飯田 修一(株式会社現代建築研究所 代表)

【目次】
  1. 多様な住まいの複合体
  2. 多世代交流型住宅の設備とサービス
  3. 多世代交流型住宅のメリットとデメリット
  4. 入居までの手続き

多様な住まいの複合体


同一敷地の中にサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)や老人ホーム、保育園、ファミリー住宅、学生寮、障碍者住宅、デイサービス、商業施設などを一体として建設します。

このように多様な年代の人々が一緒に住む環境は、高齢者にとっても子どもにとっても良い影響があると考えられます。老人ホームなどの従来型の高齢者施設では、重介護の方のケアに力点がおかれるのに対し、多世代交流型住宅では元気な高齢者の方を入居者として想定し、亡くなるまで元気でいれるような環境を作り、介護が必要になった場合でも最後までケアできる施設となっています。


入居基準

全体計画の一部に介護施設が組み込まれている場合には入居する介護施設(サ高住や老人ホーム)の入居基準によります。単体で運営している介護施設と大きな違いはありません。
例えば、サ高住では概ね60歳以上、老人ホームの場合は65歳以上といった年齢的な基準があります。他にも、自立者のみを対象としているところや、介護認定が必要という施設もあるため、入居前によく確認しておきましょう。


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介護付き有料老人ホームとは


多世代交流型住宅の設備とサービス


設備

入居する介護施設の分類によりますが、居室以外にリビング、レストラン、機能訓練室など、入居者が自由に使用できる共有スペースがあります。また、施設によってはカラオケ室やシアタールームといった娯楽を楽しむ設備もあります。このように単体の同種施設と大きな差はありません。
しかし、多世代交流型住宅では異なる種類の施設が隣接していることにより、単体の施設にはない多様な設備を利用できます。


提供されるサービス

サ高住であれば安否確認や生活相談。老人ホームでは身体介護や食事の提供など、入居する介護施設の分類によるサービスが提供されます。単体の同種施設との違いはありませんが、多世代交流型住宅では多様な住まいがあるので、結果として単体の施設にはない相互の交流や刺激があります。
高齢者が子供や学生との交流を持つことにより、互いに支えあう多様性のあるコミュニティ環境が生まれます。このように、意図的に交流を促進する運営がされることも多いと思います。

また、居住だけでなく商業施設や農園、温泉などを併設することで、住むだけでなく、遊んだり、働いたりする日常の生活に近い環境を作りだすことができます。職員による一方的なサービス提供ではなく、自然に生まれる心地よい環境が期待できます。


多世代交流型住宅の費用

サ高住であれば初期費用(敷金や前払い家賃)と家賃や管理費などの月額費用。有料老人ホームであれば初期費用(入居金)と家賃や食費といった月額費用が必要です。

基本的には近隣のサ高住や介護付き有料老人ホームと大きな価格の差はありません。ただし、多世代交流型住宅の場合は多様な施設を複合させるので建物の規模が大きくなります。結果として法的に建物の構造や設備をグレードアップする必要が生まれたり、開発に伴う緑化や敷地内設備の費用負担が増えることもあります。しかし、「グレードが異なれば当然、価格も違う」と考えれば、余計な費用がかかるという評価にはならないと思います。


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サービス付き高齢者向け住宅の費用・料金

介護付有料老人ホームの費用・料金



多世代交流型住宅のメリットとデメリット


多世代交流型住宅に住むとどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。下記図表にまとめました。

メリット デメリット
・多様な生活が営まれ生活に張りがある

・介護する家族も一緒に住むことができるなど、従来の介護施設にはない可能性が開ける

・元気なうちにコミュニティに加わることにより、介護状態になってから環境が変わるというストレスがない。

・障碍者、子育て、就労機会の提供など、地域社会の福祉全般に貢献する施設となっており、施設外の街との交流も生まれる。
・生活面での固有のデメリットはない。

・人と交流を持ちたくないという利用者にとっては煩わしい生活になる。しかし、そもそもそういう気持ちを持った方は多世代交流型住宅を選択しないであろう。


入居までの手続き


入居手続き

一般的なサ高住や有料老人ホームと大きな違いはなく、まずは施設を見学し、入居条件や費用、利用者やその家族の要望が満たせるかを確認します。問題がなければ入居申込み、契約、入居という手順になります。

多世代交流型住宅の場合は、個々の施設毎に入居を受け付けるだけではなく、まずは総合的な入居受付けに相談し利用者の状態に一番ふさわしい種類の施設に案内されるという流れになるだろうと思います。


すぐに入居できるのか

多世代交流型住宅はスタートして間もないので、供給はまだほとんどありません。結果として入居を希望しても競争が激しく、なかなか入居できないという状態も予想されます。

今後は徐々に普及が進むと予想されますので、インターネットで検索したり近隣物件のチラシに目を通すなど、早い段階から情報収集されることをおすすめいたします。

このQ&Aに回答した人

飯田 修一
飯田 修一(株式会社現代建築研究所 代表)

1979年東京大学建築学科卒。公共建築、病院、生命科学研究所、海外プロジェクトで活動。JICA派遣専門家、1998年より㈱現代建築研究所社長。東京国際フォーラム設計に協力。東京女子医科大学、早稲田大学、東京大学、国立病院機構の施設設計。日本建築家協会優秀建築選等受賞。医業経営コンサルタント協会会員、現在は都市計画、医療福祉、地域活性化事業等に取り組んでいる。