質問

脳梗塞で倒れた60歳の父は最近介護認定を申請しました。まだ手元に介護保険証が届いていないのですが、その状態でも老人ホームに入居することは可能ですか?

回答
西村 英記

要介護認定を申請していれば、介護保険証が手元にない状態でも老人ホームへの入居は可能です。要介護認定の有効期間は介護認定の申請日にさかのぼりますので、暫定的にサービスを利用することができます。

ただし、要介護認定の結果が「非該当(自立)」となった場合は、介護保険が適用されません。その際は、暫定的に利用したサービスの費用は全額自己負担となってしまいますので注意しましょう。

ここでは要介護認定について知っておいてほしいこと。そして、介護保険証なしで老人ホームを選ぶ際の注意事項などを解説します。ぜひ参考にしてみてください。 西村 英記(福祉サービス第三者評価・評価調査員)

【目次】
  1. 1. 介護保険証と要介護認定
  2. 2.保険証なしで老人ホームを選ぶ際の注意点
  3. まとめ

1. 介護保険証と要介護認定


65歳になり介護保険の第1号被保険者になると、住民票のある市区町村から1人ずつ介護保険被保険者証(以下、介護保険証)が交付されます。
国民健康保険に加入している場合は、健康保険被保険者証とは別に交付されます。

この介護保険証は、要介護認定の申請やケアプランの作成依頼、介護サービスを利用するときなどに必要となります。

しかしこの保険証が送られてきたために、何も手続きせずとも介護サービスが受けられると勘違いする方
が多くいらっしゃいます。実際に介護サービスを受けるためには、まず市町村に要介護認定の申請をする必要があります。

>要介護認定 申請の流れ



1-1.要介護認定申請から実際に保険証が届くまでに要する期間

要介護認定の申請時に、介護保険証を預け、その代わりに介護保険資格者証が渡されます。要介護認定の結果は、申請から30日以内に申請者本人の住所に通知されます。



1-2.「保険証なし」の事実は見学の段階でホーム側に伝えておく

身体が元気なうちから終の住まいのことを検討している方もいますが、多くの方は病気や怪我で身体の機能が低下して介護を受けることとなります。

そのため、慌てて老人ホームを探す方が圧倒的に多く、入居の手続きを行う際に介護保険証が手元にないケースも考えられます。老人ホームの見学の段階で、ホームの担当者に予め伝えておくとその後の手続きがスムーズに進みます。



1-3.保険証がないことで、何か特別な手続きは必要なのか

手続き自体は大きくは変わりません。要介護認定がされると、申請者は申請時にさかのぼって介護保険のサービスを利用できることになります。

申請時から認定結果が出るまでの間は仮の保険証で介護サービスを受けることになります。正式に認定結果が出てからは保険証の切り替え手続きが必要になります。



2.保険証なしで老人ホームを選ぶ際の注意点

上記では、介護保険証が手元にない場合でも老人ホームへ入居することが可能ということをご説明しました。

介護保険証が現に発行されているかいないどうかで、大きく手順が変わることはありませんが、以下に気をつけるポイントをいくつか挙げてみますので確認してみてください。


2-1.介護度によって入居できる施設が異なる

例えば、特別養護老人ホーム(特養)は原則要介護3以上でないと入居できません。

また、民間の有料老人ホーム等でも、入居時の身体要件(自立・要支援・要介護)を定めているホームもあります。介護認定がいずれに判定されるかで、そもそも入居可否が変わってくることもあります。

>老人ホームを選ぶときに把握しておきたい身体状況


2-2.要介護2か3か分からない状況でも、特養へ申し込みはできる

手元に介護保険証が無い場合でも、申し込み自体をすることは可能です。 また、要介護 1 や 2 の場合でも、以下のような場合特例的に特養に入所できることがあります。

①認知症で、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること

②知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること

③深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態であること

④単身世帯等家族等の支援が期待できず、地域での介護サービス等の供給が不十分であること

>特別養護老人ホームの特徴と入居条件

2-3.介護認定の有効期間

介護保険証そのものには有効期限はありません。しかし、要介護認定を受けた場合は認定結果の有効期限があります。要介護状態は認定を受けたときから変化する可能性があるからです。

新規認定の場合は6ヶ月、更新認定の場合は原則12ヶ月です。



2-4.要介護認定において「非該当(自立)」と認定されたとき

非該当となったときは、介護保険を使って介護サービスを利用することはできません。

認定が下りる前に、暫定的に利用した介護サービスがあれば全額自己負担(10割負担)となります。

非該当の認定がなされた後は、市区町村が行っている地域支援事業などを利用して、生活機能を維持するためのサービスや、生活支援サービスを利用することができる場合があります。

詳しくは、最寄りの地域包括支援センターに確認すればよいでしょう。




まとめ


要介護認定を申請していれば、介護保険証が手元にない状態でも老人ホームへ入居することは可能です。しかし、「介護認定が下りてない」ということは、見学の際など早めにホーム側に伝えておきましょう。

また、介護保険証は、介護保険に加入しているということと、介護サービスを利用する際に必要なデータがつまった証明書といえます。

介護保険証が無いということは、自分が介護サービスを受けることが出来るという公的な証明が無いという状態です。実際にサービスを利用するまでの手続きの面で、少し手間がかかることは想定しておきましょう。

(監修:森 裕司 株式会社HOPE代表、介護支援専門員、社会福祉士)

このQ&Aに回答した人

西村 英記
西村 英記(福祉サービス第三者評価・評価調査員)

かず総合コンサルティング研究所/エリアマネージャー
行政書士法人御池事務所/行政書士
これからの人生を楽しく過ごすための終活トータルサポートを行う。