質問

軽度の認知症がある義母ですが、入居できる老人ホームを探しています。入居後も買い物などでお金を使うことがあると思います。義母が使いすぎたり失くしたりしないよう、ホームで管理してもらえるのでしょうか。

回答
菊地 季美子

老人ホームにより異なりますが、入居者自身での金銭管理が難しい場合は、老人ホーム側が現金を預かり管理している所もあります。貴重品については紛失時のトラブル回避のため「持ち込みはご遠慮ください」としているホームが多い印象です。

他のご入居者はどうしているかも含めて、入居前に確認しておくと良いでしょう。今回は、老人ホームにおける実際の金銭管理について解説していきます。 菊地 季美子(AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士)

【目次】
  1. 1.本人による金銭管理が基本
  2. 2.現金や貴重品持ち込みはなぜNG?老人ホームの金銭トラブル
  3. 3.老人ホーム側の金銭管理方法
  4. 4.老人ホームで金銭管理できないときは外部の専門家に相談を
  5. まとめ

1.本人による金銭管理が基本

老人ホームに入居後、売店や自動販売機で買い物をしたり、外出して買い物したりすることは自由です。また、大切な貴金属類も一緒に持ち込む方もいます。

しかし、入居者自身のお金とはいえ、どういった用途に毎月どれだけ使っているのか、紛失のおそれはないか。認知症の症状のある方であれば、金銭管理が出来ているのか、家族としては心配かと思います。この金銭管理について、老人ホームの対応は主に次の5つのパターンが考えられます。

老人ホームによって様々。金銭管理5つのパターン

1.本人による金銭管理、または家族による管理をお願いしている。ホーム側では管理しない。
2.本人管理が難しい場合は、老人ホーム側が現金や通帳を預かって管理している。
3.「預り金」として数万円を施設に預け、ほしい物はそのお金から購入している。
4.ほしい物があればホーム側が立て替え払いで購入し、毎月の請求書に乗せている。
5.多額の現金、貴重品の持ち込みはお断りしている。

老人ホーム側が現金や貴重品を管理する際は、毎月1,000円程度の貴重品管理サービス費がかかります。また、多くの老人ホームの重要事項説明書には「貴重品の紛失等に関するトラブルは一切責任を負いません」というような規定が盛り込まれています。

>老人ホーム入居後のトラブル|防ぐために必要なことは?


2.現金や貴重品持ち込みはなぜNG?老人ホームの金銭トラブル

実際にはどのようなトラブルがあるのでしょうか。ここでは老人ホーム入居後の金銭トラブル事例をご紹介します。

・認知症の症状をもつ入居者が間違えて他の入居者の居室に入り、金品を持ち帰ってしまった。
・居室においてある金庫の鍵を失くしてしまい利用できなくなってしまった。
・老人ホーム側で管理している現金の収支が合わず、職員が不足分を補うことになった。
・入居者がお金を使いすぎていることに家族が不満を持ち、老人ホームにクレームが入った。

お金に対する執着?認知症の症状

認知症の症状は、記憶障害などの中核症状と、幻覚や妄想などの周辺症状に分類されます。周辺症状のひとつとして、物やお金に対する執着が強く表れる人もいます。

お金に強く執着する原因はさまざまですが、過去に経済的に苦労した経験をもつ人が多い傾向があります。

このような場合、手元に現金があると安心することがあるので、ホーム側に事情を説明し、少額の現金を入れたお財布を本人に持たせているご家族もいます。

>認知症の進行のしかた|中核症状と周辺症状


3.老人ホーム側の金銭管理方法

金銭管理を行うことに消極的な老人ホームもあります。その理由は、何よりも管理の手間がかかるからです。管理方法について次のような対応が必要になります。

老人ホーム側がおこなうこと

①「預り金管理規定」のような規約を作成する
②金庫や鍵付きのロッカーのような安全に保管できる設備を整える
③管理を代行している事を契約書や依頼書のような書類で残しておく

このように、ホーム側も管理する準備に時間と労力を割く必要があります。

各ホームがどのような管理方法をしているのかについては、重要事項説明書や管理規程に明記されているため入居時にも説明がなされるはずです。

実際の管理方法については口頭でホーム長や生活相談員などに直接確認しておくと良いでしょう。


面会時はお金の使い方について職員に確認を

老人ホーム側で現金管理してもらえるとしても、任せっきりにするのではなく、ホームに訪問した際に日常生活の様子とお金の使い方を確認しておきましょう。

どんな物をほしがっているのか。少額でも手元に現金をもっておきたい方もいらっしゃいます。入居者が自分らしい生活を送ることができるように、ホームと家族が互いに協力しあうことが大切です。

>老人ホームの面会│誰でも気軽に会えるの?面会の頻度は?


4.老人ホームで金銭管理できないときは外部の専門家に相談を

外部の専門家と家族との連絡を密にとることが理想的といえます。いくらホーム側の管理が面倒だとしても、ホームでの生活にあたり一切お金を使ってはいけないということはありません。

ホーム内部での管理が難しい場合、ホーム外部の専門家(弁護士、司法書士)と別途「財産管理委任契約」を結ぶ方法もあります。

この契約によって、法律的に正当な権限をもつ第三者が財産管理をすることになりますので、ホーム側も責任を回避でき安心といえるでしょう。

ただ、こうした支援を行っている外部の専門家との接点は限定的かと思います。まずは入居する老人ホームの相談窓口に問い合わせ、適切な専門家に繋げてもらうことが無難といえるでしょう。


まとめ

老人ホームでの金銭管理は、本人または家族による管理が基本です。

ただし、毎月の使用用途や金額の把握、認知症の症状がある場合など、本人の管理が不安であれば老人ホーム側に預かってもらうことも可能です。この場合、貴重品管理サービス費が発生する、紛失等に関するトラブルは責任を問えない点に注意が必要です。

起こりうるトラブルとしては、他の入居者が誤って持ち去る、居室内金庫の鍵の紛失、収支の不一致、お金の使い方に関する苦情などです。

トラブルを防ぐために、老人ホーム入居時には実際の管理方法について確認する、面会時には日常のお金の使い方を確認する、場合によっては外部の適切な専門家に繋げてもらうのも良いでしょう。

このQ&Aに回答した人

菊地 季美子
菊地 季美子(AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士)

優益FPオフィス アシスタント。生命保険会社2社に合計8年在籍。その後は損害保険へ転向し、3年の営業店事務経験を経て、損害保険代理店に転職。自動車保険・火災保険の設計とFP相談を担当する。現在はフリーランスで執筆を行うほか、自身の経験をもとに、虐待サバイバーや貧困層へのマネーリテラシーを普及する活動をしている。