質問

介護を必要とする父(79歳)の入居先を考えています。父はヘビースモーカーでお酒も好き。「タバコが吸えないなら老人ホームには入らない」の一点張りです。
老人ホームでタバコやお酒などの嗜好品を楽しむことはできますか?

回答
薮内 美樹

健康上の問題さえ無ければ、タバコや飲酒もOKという老人ホームはあります。
ただし、防火上の問題や、受動喫煙による健康被害防止、タバコの匂いを不快に感じる他の入居者への配慮といった理由から、喫煙場所が定められているなど一定のルールを設けているところがほとんどです。
また、飲酒も他の入居者に気付かれないよう居室(自室)でないと飲めないところや、健康上の配慮から個別に飲酒量を制限しているホームもあります。

最終的には、入居を検討される老人ホームに確認していただくことになりますが、ここでは、喫煙や飲酒に関するルールや事例を紹介したいと思います。
よくお読みいただき、納得できるホーム選びにお役立てください。 薮内 美樹(福祉サービス第三者評価・評価調査員)

【目次】
  1. 1.喫煙についてのルール
  2. 2.ルールを守れば飲酒も可能
  3. 3.その他嗜好品についての注意点
  4. 4.嗜好品の取り扱いについては要確認・要相談
  5. 5.各老人ホームにおける独自の取り組み
  6. まとめ:老人ホーム入居前にチェックしておきたいこと

1.喫煙についてのルール

「喫煙可能」としているホームでも、共有スペースや居室で自由に喫煙できるホームは数少ないのが実情です。

喫煙場所を指定している場合、ホーム敷地内の駐車場や庭に灰皿が設置されていたり、喫煙スペースを設けていたりしても、多くは「屋外」となっているところが多いです。

また、タバコやライターは老人ホーム側で管理をしているところが多く、タバコの量や喫煙できる時間帯が制限されているところなど、喫煙に関するルールが、老人ホームごとに決められています。


 

2.ルールを守れば飲酒も可能

タバコと並んで、老人ホーム選びの条件に上がってくるのが飲酒です。

老人ホームは自宅に近い空間なので、主治医による禁酒の指示がない限り、晩酌を楽しむ程度の飲酒は認めているところが多いようです。

ただし、飲み過ぎは、他の入居者とのトラブルを招いたり、ケガや健康障害に繋がったりする恐れがあります。老人ホームによっては、自由に飲酒できるのは居室だけで、レストランを含め、共有スペースでの飲酒は禁止しているところもあります。

老人ホーム内のレストランでアルコールを提供している場合でも、「ビールと日本酒それぞれ1本まで」など、飲酒場所や量を制限しているところもあります。



3.その他嗜好品についての注意点

ジュースやお菓子については、基本的に、健康上の問題が無ければ居室への持ち込みは自由としているところが多いようですが、老人ホームの中には、食中毒防止のため、賞味期限を過ぎたら施設の判断で処分されてしまうところもあります。

また、塩分制限を必要とする方に対しては、食事を提供する際に漬物や梅干しなど、塩分量の多い嗜好品をカットするところもあります。

また、入居者の1日の食事量を厳密に記録し、食事以外の食べ物については、ホーム側が管理するところもあります。



4.嗜好品の取り扱いについては要確認・要相談

介護度が重くなり、買い物が困難になった場合に、嗜好品を楽しめなくなるのではと心配される方もいるかもしれません。

しかし、介護保険サービスの「買い物代行」を利用すれば、欲しいものは買ってきてもらえますが、基本的には、日常生活に必要なものに限られています。

タバコや飲酒などの嗜好品については、制限を設けているものがあるか事前に確認するとともに、「こうなった場合どうなるのか」、「こうして欲しいが対応してもらえるか」など、購入方法などを含め、不安に感じることや要望について、どのように対応してもらえるか、入居前に相談しておくと安心です。




5.各老人ホームにおける独自の取り組み

老人ホームによっては、喫煙や飲酒に関して、独自の工夫や取り組みをしているところもあります。

大抵の喫煙スペースは、屋外や人目につきにくい場所にありますが、排煙装置完備のものが「館内」に数ヶ所あったり、自然光が射しこむ中庭に喫煙スペースを設置していたりするところもあります。 

飲酒については、「自立型」の有料老人ホームの中には、バーカウンターがあり、夜間の決まった時間帯や特定の日に利用できるところもあります。
また、月に1度、食堂を即席居酒屋にしてお酒を提供したり、夏は屋上でビアガーデンを開いたりと、いつもと違った雰囲気を楽しんでもらえるよう、ホームの職員が思考を凝らしたレクリエーションを企画しているところもあります。


 

まとめ:老人ホーム入居前にチェックしておきたいこと

・喫煙・飲酒ができる場所や量の制限はあるか

・ホームが提供する食事やおやつ以外の嗜好品の持ち込みは可能か、制限がかかる場合があるのか

・自分で買い物行けなくなった場合、買い物代行で購入してもらえるか、その際、注意すべき点はあるか

特にタバコやお酒などの嗜好品は、健康への影響があることや、人によって好き嫌いが分かれます。
老人ホーム運営会社の考え方により、制限の多いところから、比較的、緩やかなところまで、ルールや対応も様々です。

できるだけ数多くの老人ホームを比較し、不明な点の確認と対応を相談のうえ、他の条件とのバランスも考慮して、納得できるところを見つけましょう。

このQ&Aに回答した人

薮内 美樹
薮内 美樹(福祉サービス第三者評価・評価調査員)

FPオフィス ライフ・カラーズ/代表
日本FP協会 CFP® 1級FP技能士
相談実績豊富。介護を踏まえた生涯資金計画のアドバイスから実行支援を行う。