質問

遠方の父は要介護2の認定があり、一人暮らしをしているので心配です。土地を離れたくないという理由で私との同居は断られました。
介護度が重くなったら老人ホームをと考えていますが、いつ頃から探し始めれば良いのでしょうか?

回答
馬渡 初代

満足度が高い老人ホームに入居するには、入居する本人が元気なうちに探して入居することが必要です。元気なうちというのは、自分の足で老人ホームの見学に行き、ホーム側の説明もしっかり理解できる事を意味します。

ここでは、なぜ元気なうちがよいのか、その理由と、親御さんとのコミュニケーションについて解説します。満足のいく老人ホーム選びのために参考にしてください。 馬渡 初代(1級ファイナンシャルプランニング技能士・AFP)

【目次】
  1. 1.元気なうちに老人ホームを探す理由
  2. 2.子ども主導で探すときも親には最大限の配慮を
  3. 3.老人ホームにかかる費用を試算!施設探しは子どもがサポート
  4. 4.まとめ

1.元気なうちに老人ホームを探す理由


老人ホームは、入居する本人の生活の場となるので、できれば本人主導でホーム探しをすることが理想でしょう。

そして、老人ホーム探しで重要なのは「見学」と「体験入居」です。満足できる住まいとより良いサービスの選択のためには、複数の老人ホームを見学し比較する必要があります。

また、見学の際は、建物の設備、介護体制、食事内容、レクリエーション、入居条件や費用など、ホーム側の説明は多岐にわたります。その際、家族だけでなく入居する親も説明を理解する必要があります。

要介護になると親自身のホーム見学は難しい

今は元気でも、将来的に親が要介護状態であったり、認知症を抱えたりした場合、家族はそのケアにも時間を取られます。すると、介護が必要な親を連れて子供が見学に行くことは困難なだけでなく、ゆとりを持って検討することが現実的に難しくなります。

そのため、「まだ老人ホームなんて早い」と思われやすい70代半ばくらいの元気なうちから見学しておくことが、納得のいく住み替えにつながります。

こうした理由から、老人ホームを探すなら本人が元気なうちが良いということになります。

また、親が自分の意思を主張できるうちに、自宅か介護施設のどちらでの介護生活を望んでいるのか、早めに意思表示をしておく必要もあります。

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2.子ども主導で探すときも親には最大限の配慮を


子どもが主導で探すときも親が元気なうちにおこないましょう。ここで気を付けたいのはいきなり親に「そろそろ老人ホームに入ったら」なんていわないこと。はたして親は納得して一緒に行動をおこしてくれるでしょうか?親子とはいえ、言葉一つで信頼関係に亀裂が入ることもあります。


「将来はどこで過ごしたい?」信頼関係を築くコミュニケーション

親が元気で、自宅での生活に不自由がないうちは老人ホーム探しの興味は薄いもの。特に自宅生活を望んでいる場合、子どもが親へ老人ホーム探しを促すのは難しいでしょう。

将来のことについて話しをすることから始めましょう。

例えば、何気ない会話の中で介護が必要になったときに「どこで」「誰に」介護をしてもらうのか?という希望を引き出します。

また、配偶者が亡くなった後、一人暮らしは大丈夫なのか?という疑問も解消しておきましょう。老人ホームの中には、介護をメインに行なうところだけではなく、身の回りのことを自分でできる方が入居する自立者向けの施設もあります。

このように、不安を解消するための手段として、老人ホームという選択肢を伝えてみましょう。親子のコミュニケーションが良好なら老人ホーム探しもスムーズに進みます。



施設探しの第一歩は親の資産確認から

在宅介護でも施設介護であっても、まずは入居する本人の年金や資産を確認することが大切です。複数の口座を持っている場合は合算した額を確認しましょう。

老人ホームでの暮しには、相応の費用が掛かるため、親の資産で費用負担がどの程度できるのかを知る必要があります。預貯金以外にも金融商品がある場合は別途確認しておきます。

老人ホームにかかる費用は、大きく分けて「初期費用」と「月額費用」の二つ。

初期費用はまとまった資金(入居一時金)が必要なところと、かからないところ(入居一時金なし)があります。月額費用は年金でまかなえることが理想ですが親の年金や資産が乏しい場合、子どもの援助ができるのかどうかも検討が必要です。

また、老人ホームに入居し親の自宅が空き家になる場合は、売却か賃貸に出すなどを検討する必要もあります。

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3.老人ホームにかかる費用を試算!施設探しは子どもがサポート


施設の種類によって変動はありますが、たとえば介護付き有料老人ホームの平均入居期間は約4年です。

この年数は入居者の平均年齢が80~90歳が約7割を占めていることからこのぐらいの期間になるのでしょう。

男女差、個人差があるため何年間入居するとはいえませんが、平均寿命から予測してみましょう。男性の平均寿命は81.3歳。

お父様が75歳で老人ホームに入居すると約6年間をホームで生活するわけです。その間にかかる費用を試算して、年金収入で不足する部分を預貯金でまかなえるのか。まかなえない場合はどのように費用を捻出するのか、あらかじめ計算しておきましょう。

介護施設の入居費用も含めて、基本的に親の介護は親のお金で賄うようにしましょう。子世代も住宅ローンを抱えていたり、教育費用なども必要で何かとお金がかかるもの。

ムリに捻出しようとすると経済的に苦しくなります。親の収入や資産だけでどうしても施設入居が難しい場合は兄弟で分担して援助するなど、負担が子ども一人に集中しないことがポイントです。

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親が納得する施設探しのために子どもができること

親子で老人ホーム探しをすることは親にとっても安心感があります。たとえば空室がある施設をネットで探し候補を絞り込んだり、見学予約などを手配したり。また、引っ越しに向けた荷物の整理なども積極的に関わってあげましょう。

契約時も本人が理解しづらい細かな部分は子どもがフォローし、親に説明してあげるとスムーズです。

>親の介護|兄弟姉妹の役割分担とは

4.まとめ


病気やケガをきっかけに、「老人ホームを探さなければならなくなった」というケースは少なくありません。住み慣れた地域で老人ホームに入居することが望ましいのですが、場合によっては「遠方の老人ホームにしか空きがなかった」ということも想定されます。

そのため、元気なうちに親の意向を確認し、老人ホーム探しを一緒にしておくことで、いざという時に慌てずに済むことになります。あくまで親が住む場所ですので、親の「想い」を尊重し、子どもの意向を前面に出すことは控えましょう。日頃から親子のコミュニケーションを図り、親子とも納得のいく老人ホーム探しを進めていくことが大切です。

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馬渡 初代
馬渡 初代(1級ファイナンシャルプランニング技能士・AFP)

ファイナンシャルプランナーとして、一人暮しの高齢者の方の傾聴ボランティアと見守り活動をしています。人生100年時代。自分らしい老後を過ごすための終活セミナーやエンディングノート書き方ワークショップを実践中。
「独居老人を一人にさせない」をモットーに社協の方と連携で地域福祉を推進しています。