質問

私の夫はまだ60歳ですが、パーキンソン病のため介護保険の第2号被保険者になっています。介護度は5で、在宅での介護が困難なことから施設入所を考えていますが、本人がなじめるか心配です。夫に適した施設があれば紹介してください。

回答
吉田 匡和

第2号被保険者の方が老人ホームへ入居することは原則可能ですが、老人ホーム入居者の平均年齢が83歳と高齢のため、64歳以下の「若年者 」と呼ばれる方々にはなじみにくいのが現状です。そのため老人ホームの選択を誤ると、他の方々となじめず孤独を感じたり、ずっと部屋で過ごす方もいるようです。
結論を申し上げますと、残念ながら日本において若年者専門の老人ホームはございません。既存の老人ホームの中からご主人に合った老人ホームを探すことになりますので、適切な老人ホーム選びのポイントをアドバイスし ます。 吉田 匡和(社会福祉士 介護支援専門員)

【目次】
  1. 1.第2号被保険者の実態
  2. 2.比較的軽介護・低年齢の老人ホームを選ぶ
  3. 3.老人ホームを選ぶために優先順位を決める
  4. 4.スタッフとのコミュニケーションも重要
  5. まとめ:「要望」を聞くことでスタッフが成長する

1.第2号被保険者の実態

なぜ若年者向けの入所施設が存在しないのか。理由のひとつは要介護状態の比率にあります。平成26年度の調査では、65歳以上の「第1号被保険者」の総数が約570万人であるのに対し、第2号被保険者は14万7000人と約38倍もの開きがあります。そのため65歳以上の高齢者へのサービスが中心にならざるを得ず、どこの事業所も若年者への対応が悩ましい問題となっています。

平成25年(2013年)度 給付認定者数(千人)

被保険者 第1号
(65歳~)
第2号
(40~65歳)
総計
要支援1 807 13 820 (14.0%)
要支援2 782 21 802 (13.7%)
要介護1 1085 24 1110 (19.0%)
要介護2 994 32 1026 (17.6%)
要介護3 745 20 766 (13.1%)
要介護4 692 17 709 (12.1%)
要介護5 586 20 605 (10.4%)
総計 5691千人 147千人 5838人

出典:平成25年度 介護保険事業状況報告(年報)


<アドバイスポイント>

今回記事を作成するにあたり、いくつかの老人ホームに質問をしたところ、若年者の受け入れは行っていても、実際に利用している方は少数であることが分かりました。まずは地域の老人ホームなどに電話をして若年者の受け入れ状況を確認してみましょう。

2.比較的軽介護・低年齢の老人ホームを選ぶ

質問者様の旦那様の今後の生活を考えると、全室個室化され自由度が高い有料老人ホームが適切かと思います。有料老人ホームには「介護付有料老人ホーム」と、住宅に準じた「住宅型有料老人ホーム」の2つがあります。それぞれの違いは以下のとおりです。

・介護付有料老人ホーム

入居している方に対し、食事や入浴などの日常生活のお世話や機能訓練を行います。介護保険の対象となり、専属スタッフによる24時間体制の介護が受けられます。比較的重度の要介護認定を受けている方が入居しています。

・住宅型有料老人ホーム

食事の提供や生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの入居施設です。基本的に専属スタッフのを配置する義務がないため、介護度が軽い方や年齢の若い方が入居されています。しかしニーズの高まりにより近年では介護体制を整えた住宅型有料老人ホームも増えてきました。施設選びはそれぞれを比較して人員体制の整っている介護付きをおすすめします。

質問者様の旦那様は要介護5ということですので、介護付き有料老人ホームが適切かと思います。住宅型有料老人ホームにおいても介護が行われ、要介護3くらいの方も生活していますので、軽度の方であれば住宅型有料老人ホームも検討対象となるでしょう。

<アドバイスポイント>

運営会社に尋ねると、介護度が高くなり住宅型有料老人ホームを退居しなくてはならない場合でも、系列の介護付き有料老人ホームに入所することが可能だそうです。心身の状況に合わせて老人ホームを変えることも選択肢のひとつと考えてもよいでしょう。

3.老人ホームを選ぶために優先順位を決める

老人ホーム選びのポイントとして「どんなところならなじめるのか」を考える必要があります。静かな環境を好む方に賑やかな環境はなじみませんし、その逆もあるでしょう。入居者同士のコミュニケーションも大切ですが、身体介護を必要とする以上、介護の質も担保されていなくてはなりません。そうして優先順位をつけていきます。質問者様の旦那様の心身の状況を考えて優先順位をつけてみました。

1位 24時間介護

パーキンソン病の場合、日常的な見守りや介護が不可欠。

2位 立地

老人ホーム内でのコミュニケーションだけでなく、家族との繋がりや今までのコミュニティを継続するためにも、住み慣れた環境に近い場所が望ましい。

3位 居住空間

間取りや方角などストレスのないことが第一。

4位 レクリエーション

娯楽要素は必要。高齢者のみならず若年者にもフィットするレクリエーションであるかが、判断のポイント。

5位 コミュニケーション

「相撲が好き」「野球が好き」など、共通の趣味があれば年齢に関係なく話が合います。そういった人がいるか、いないかによって生活の楽しさが変わります。

<アドバイスポイント>

「なじむ」とは、他者との関係だけでなく様々な要素を含みます。介護なのか、コミュニケーションなのか。どこにポイントを置くかをよく考えて老人ホームを選んでください。

4.スタッフとのコミュニケーションも重要

筆者が勤務していた老人ホームにも、60歳の方がいらっしゃいました。まわりの方々とは年代も考え方も違うためなじむことが難しいものの、年齢の近いスタッフとのかかわりを意図的に増やし、コミュニケーションを多くとるようにしました。またレクリエーションの内容なども高齢者向きにかたよらないよう配慮しました。

また、筆者は専門学校の教員時代に、「個別性」について提言し、60代の有名人としてビートたけし、西田敏行、泉ピン子、高田純次、矢沢永吉などを挙げ、「これだけ個性的な人たちが老人ホームで生活するためには、何をすべきか」を教えていました。多様な個性をもった入居者とコミュニケーションが取れるスタッフがいるかどうかも老人ホーム選びのポイントになります。

<アドバイスポイント>

老人ホームの雰囲気は、入居者とスタッフの良好な関係が作り出します。パンフレットや電話だけでは雰囲気は伝わりませんので、必ず見学したり体験入居することをお勧めします。

まとめ:「要望」を聞くことでスタッフが成長する

第2号被保険者の総数は、それほど多くないため、スタッフ側のノウハウが蓄積されていない場合があります。「何を求めているのか」「何が好みなのか」を主張することは、ワガママではありません。介護保険の第2号被保険者は今後増加することが予想されます。介護技術だけではなく、若年者の好みを伝えるためにも多くの声を寄せ、生活しやすい環境を作っていってください。

このQ&Aに回答した人

吉田 匡和
吉田 匡和(社会福祉士 介護支援専門員)

高齢者福祉施設生活相談員及び管理職。福祉専門学校において教職員の経歴を持つ、実践力と学術的知識の二つの顔を持つスペシャリスト。自身も介護を必要な親を抱えており、親身になって懇切丁寧にご質問にお答えします。