質問

同居の父に認知症の症状がでてきて、日中家に一人になるのが心配なため、介護付有料老人ホームを検討し始めました。インターネットで情報を収集する中で、入居者とスタッフの人員配置が「3:1」というものをたびたび目にします。どういう意味なのでしょうか?

回答
吉田 匡和

人員配置「3:1」とは、入居者3人に対し1人の介護職員または看護職員を配置しなくてはならないという意味です。介護保険法により、介護付き有料老人ホームには入居定員に対する必要な職員配置数の基準が定められています。それを下回った場合は介護報酬が減額されます。 吉田 匡和(社会福祉士 介護支援専門員)

【目次】
  1. 1.介護付有料老人ホームの最低基準「3対1基準」
  2. 2.基準以上に人員を配置している老人ホームも多い
  3. 3.スタッフの配置数は時間によってばらつきがある
  4. 4.人員体制が違うとサービスも変わる
  5. まとめ:大切なのは日常を快適に過ごせる環境か

1.介護付有料老人ホームの最低基準「3対1基準」

人員配置「3対1基準」では、介護付有料老人ホームに入居する要支援2以上の入居者3人に対して1人以上の介護職員または看護職員の配置が義務付けられています。また要支援1の場合は10人に対して1人以上の配置が必要で、端数は切り上げます。なお、施設長や生活相談員、介護支援専門員(ケアマネジャー)はこれに含まれず、それぞれ別の基準が設けられています。

人員配置「3対1基準」で気を付けたいポイントは2つ

1.全員が常勤とは限らない

人員配置基準によると、常勤介護職員は1人以上配置すればよいことになっています。実際には常勤職員を多く配置し、入浴や食事などの忙しい時間帯にパートタイマーを導入している施設が多いようです。勤務形態は施設によって異なりますので、見学時にスタッフに尋ねてみてください。

2.24時間3対1で介護しているわけではない

「3対1基準」では、入居者3人に対して常勤職員が1名いることを意味しますが、これは「24時間3人に1人の介護・看護職員が常駐している」ということではなく、介護・看護職員の総数が3対1の基準を満たしている」という意味です。介護・看護職員はシフト制勤務であり、時間によって人員は増減します。当然休日もありますので、この基準だと実質的には10対1くらいまで少なくなります。夜勤はもっと少なく、50人を2人で介護する施設もあります。施設を選ぶ際には、日中の介護員の平均人数や、夜勤者の人数を確認し、極端に少ない施設は避けた方がよさそうです。

2.基準以上に人員を配置している老人ホームも多い

介護はマンパワーで成り立っています。職員の配置が少ない老人ホームでは手厚い介護が難しく、食事、入浴、排泄といった基本的な介護が流れ作業のようになり、レクリエーションも滞ります。業務に追われればミスを招き、転倒やケガなど思わぬ事故につながります。また介護スタッフのイライラが募れば、虐待の要因にもなりかねません。

そうした問題を解消するために「2.5:1」以上の手厚い人員配置を行っている介護付有料老人ホームには、介護費を料金に上乗せして徴収することが認められています。従って、多くの介護付有料老人ホームは最低基準よりも手厚い人員配置を行っています。介護体制が整うということは介護スタッフの負担軽減に繋がり、結果として入居者の安全にも繋がります。出費は覚悟しなくてはなりませんが、安心して暮らすための経費と考えてください。

3.スタッフの配置数は時間によってばらつきがある

まずはシフトの例をご覧ください。老人ホームの介護スタッフは交代勤務のため、シフトによって出勤時間が異なります。

<シフトの例>

早出 午前7時00分から午後16時00分
中出 午前8時30分から午後17時30分
遅出 午前10時から午後19時
夜勤 午後17時から翌朝9時

食事、入浴、排泄、起床・就寝、外出行事などマンパワーが必要な時間帯は限られています。そのため入居者が寝静まる夜間はスタッフの人数を減らし、起床を開始する7時ごろから少しずつ出勤させ、入浴や行事などが多い10時から16時までをピークに、夜に向けて少しずつスタッフを減らしていくというシフトを組むのが一般的です。

4.人員体制が違うとサービスも変わる

介護付有料老人ホームは基準以上の職員配置を行い質の高いサービスを行った場合、報酬として、国民健康保険団体連合会に下記のような加算を請求することができます。

単位 条件
個別機能訓練加算 12単位/日 常勤の機能訓練指導員として、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師を配置
夜間看護体制加算 10単位/日 ・常勤看護師を1名以上配置
・看護職員又は病院等との連携により24時間の連絡体制と健康管理体制の確保
・重度化対応の指針の作成・説明
医療機関連携加算 80単位/月 ・看護職員による健康状況の記録
・協力医療機関等に対する月1回以上の情報提供
看取り介護加算 ・死亡日 1,280単位/日
・前日・前々日 680単位/日
・死亡日以前4日以上30日以下 80単位/日
※夜間看護体制加算、介護計画の作成等が条件
介護職員処遇改善加算 ・(I) 算定した単位数の30/1000
・(II) 算定した単位数の90/100
・(III) 算定した単位数の80/100

※1単価は地域とサービスによって、10円~11.05円で。

・個別機能訓練加算

個別機能訓練計画を作成して入居者に必要なリハビリを行い、3か月に1回その成果を評価することで加算されます。

・夜間看護体制加算

看護師による24時間勤務体制ではなく、オンコール(自宅待機)など、いつでも連絡が取れる体制であるかが問われます。24時間勤務体制としている老人ホームもありますが、入居費用はかなり高額なようです。

・医療機関連携加算

高齢者は体調を崩しやすいため、日頃から健康状態の把握が不可欠となります。常駐していない医師にとって看護師の記録は、適切な診察をするうえで重要です。

・看取り介護加算

医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断したものに対し、家族が同意した場合に行われます。加算の起算日は、看取りについての同意を得た日から起算されます。

・介護職員処遇改善加算

介護職員の配置人数だけでなく介護福祉士の占める割合や、その老人ホームでの勤続年数が対象となります。つまり介護職員処遇改善加算Ⅲを加算している老人ホームは、「勤続年数が長いベテランが揃った有資格者のいる施設」と言うことになります。

加算が多いほど潤沢に人員を確保し、質の高いサービスを行っているといえるでしょう。料金表などに明記されていることがありますので、老人ホーム選びの目安にしてください。人員が確保できている施設であれば、食事や入浴時間の希望にも、対応することができるでしょう。外出の付き添いを頼むこともできるため、自分では何もできないと諦めることなく、これまでに近い生活を送ることができます。

まとめ:大切なのは日常を快適に過ごせる環境か

介護保険法施行以降、介護はお金を払って買うサービスとして位置づけられています。介護付き有料老人ホームは、独自の工夫により付加価値を高めたサービスを提供しています。それぞれ自分に合った家に住むように、老人ホーム選びも画一的でよいわけがありません。快適に棲み続けるためには、日常生活の充実が重要です。そのためにはどんなサービスが必要なのか。よく考えて老人ホームをお選びください。

このQ&Aに回答した人

吉田 匡和
吉田 匡和(社会福祉士 介護支援専門員)

高齢者福祉施設生活相談員及び管理職。福祉専門学校において教職員の経歴を持つ、実践力と学術的知識の二つの顔を持つスペシャリスト。自身も介護を必要な親を抱えており、親身になって懇切丁寧にご質問にお答えします。