質問

老人ホームの住み替えを考えており、気に入ったところも見つかり、契約しても良いかなと思っています。
契約前に体験入居はした方が良いのでしょうか?利用日数と費用はどのくらいなのでしょうか?

回答
薮内 美樹

終の棲家として相応しいか判断するために、体験入居をすることをおすすめします。
一日の生活の流れや介護サービスの質、食事、入居者の雰囲気などを体験入居を通して知ることができます。見学や説明を聞いただけでは分からない、ホームでの暮らしを契約前にお試しできる有効なシステムです。体験入居後、もしもイメージと違い入居を考え直す方もいれば、気に入ってそのまま正式に入居される方もいます。

ここでは、老人ホームの体験入居における注意点と、費用や期間について解説いたします。老人ホームを検討する際、希望条件に近いホームを見つけたらすべきこととして参考にしてください。 薮内 美樹(福祉サービス第三者評価・評価調査員)

【目次】
  1. 1.体験入居の利用日数と費用について
  2. 2.老人ホームでの生活のリズムを知ろう
  3. 3.老人ホームの食事を味わってみよう
  4. 4.居室や共有スペースでの居心地を体感する
  5. 5.実際に介護サービスを体感しよう
  6. まとめ

1.体験入居の利用日数と費用について

体験入居の利用日数や費用は、ホームによって異なります。例えば、利用日数は「2泊3日まで」というところもあれば、「1週間まで」。なかには「最長3ヶ月可能」というところもあります。

利用日数は納得いくまで滞在するのが好ましいですが、1週間ほどいれば老人ホームの暮らしがイメージでき、疑問や不安に感じていることもある程度解消できるでしょう。

また、体験入居の費用は一泊当たり「4,000円~1万5,000円」程度のところが多いようで、介護度によって金額が異なるところもあります。


体験入居で持参するもの

▼必ず持参するもの
・衣類(普段着、寝間着、下着など)
・タオル、洗面、歯ブラシ
・靴(室内履き、外履き)

▼必要に応じて持参するもの
・薬
・健康保険証
・介護保険証
・介護・看護サマリー
・介護用具(杖、車イス)

※ホームによって異なります。事前に確認しておきましょう。

その他、見学の際、気になった点や確認用のチェックリスト、筆記用具、自宅から持ち込む家具が入るかメジャーなども持参するとよいでしょう。

【ご活用ください】老人ホーム 体験入居チェックシート



2.老人ホームでの生活のリズムを知ろう


老人ホームでは、食事の時間帯が決まっており、
朝食 7:00~8:30まで、お昼は11:30~13:00まで、夜は18:00~19:30までといったように、食事ごとに1時間~2時間程度で時間帯が決められています。

お風呂は居室に入浴設備が付いており、ご自身で入浴できる場合は好きな時間に入れます。しかし、一般的な老人ホームでは共有の浴室を利用するため、入浴できる時間帯が決まっています。

特に、介助が必要な方の入浴は、週2回~3回程度で、日中の時間帯もしくは午前中に入るところが多くなっています。(※介護保険では入浴回数は最低週二回と規定されています。)

その他、洗濯や掃除の頻度も含め、生活のリズムに適応できそうか、不自由さを感じる場合、希望を聞いてもらえるかなど確認しておきましょう。

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▼老人ホームでの1日の流れ(一例)

<午前>
  6:30 起床・整容
  7:30 朝食
10:00 バイタルチェック、朝の体操、リハビリなど
11:00 お風呂

<午後>
12:00 昼食
14:00 レクリエーション、リハビリ
15:00 おやつタイム、リビングで団らん
16:00 体操・クラブ活動
18:00 夕食
19:00 部屋でくつろぐ
21:00 消灯・就寝

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3.老人ホームの食事を味わってみよう


食事は、楽しみの1つです。体験入居では、味付けやボリュームだけでなく、季節感盛り付けなどにも工夫があるか、毎日食べていても飽きがこないかなどをチェックしておきましょう。

また、噛むことが難しくなったり、飲み込む力が弱くなった場合に提供される、きざみ食ソフト食についても、見た目や形など食欲が湧くような工夫がされているか要チェックです。

入居者が「美味しそうに食べているか」「食べ残しが多くないか」など、周りの様子もうかがってみましょう。

>老人ホームの食事とは?献立や内容の違いについて



4.居室や共有スペースでの居心地を体感する


居室のトイレの手すりや操作ボタン、緊急通報(ナースコール)の位置など、実際に使ってみると使い勝手がわるいと感じることがあったり、棚のとびらや窓のカギの位置が高くて、開け閉めがしにくいなど、見学では分からなかったことに気が付くこともあります。

また、毎日3回、行き来する食堂までの距離が遠すぎないか、廊下の手すりの位置や、車いすでの移動も不自由なさそうかなど、ご自身が体感してみることに加え、より介護度が重い入居者の日常生活の動作にも注目してみましょう。

食事中やリビングで出会った入居者とは、挨拶をかわす中でコミュニケーションをはかり、ホームでの生活について、感想や情報を聞き出してみるのも一つです。

さまざまな介護状態にある方が、それぞれ、不便なく生活されているか楽しそうに生活されているかは、大切なチェックポイントです。また、スタッフが入居者に笑顔で明るく対応しているか、スタッフと入居者との関わり合いや信頼性などにも注目です。


5.実際に介護サービスを体感しよう

介護が必要な場合、体験入居でも、ケアプラン(介護サービス計画書)を作ってくれるところもあります。良いケアプランを立てるには、本人の身体状態をしっかり把握し、本人や家族の希望を確認しながら作る必要があります。

ご家族にもしっかりヒアリングしてくれるか、きちんとコミュニケーションをはかってくれるかなど、ケアプランを作成する課程においても、質の高い介護を提供してくれるかどうかを見極めるポイントとなります。なにもかも、親切・丁寧にやってくれることが質の高いサービスとは限りません。

入居するご本人が自分でできる能力や、やりたいという意欲を尊重し、時間はかかっても、自分でできるところは自分でやるというプランを立ててもらうことも大切です。

また、排せつやおむつ交換の方法や回数なども満足いくものか確認しましょう。本人または家族の気持ちや要望に応えようとしてくれているかがポイントです。




まとめ

最期まで安心して過ごせるホームを選ぶことは、雰囲気や居心地の良さ求めるサービスなど、その人の感覚や価値観によって異なります。自分にとっては快適なホームでも、全ての方にとって快適かどうかは分かりません。

家族としても、本人が体験入居されている間、落ち着いた様子で生活されているか、不満は無さそうか、体験入居中に様子を見にいくのも一つです。

自分に合ったホームかどうかは、住んでみて、サービスを受けてみて、はじめて実感できます。ひと手間いりますが、体験入居を是非活用してください。


>体験入居が可能な施設特集

>体験入居でチェックしておきたいポイント

このQ&Aに回答した人

薮内 美樹
薮内 美樹(福祉サービス第三者評価・評価調査員)

FPオフィス ライフ・カラーズ/代表
日本FP協会 CFP® 1級FP技能士
相談実績豊富。介護を踏まえた生涯資金計画のアドバイスから実行支援を行う。