質問

気に入った有料老人ホームを見つけ、これから入居申し込みを行うのですが、そこでは「入居金0円」のプランもあれば「入居金500万円」のプランもあります。どちらを選べばよいか教えてください。

回答
中村 真佐子

最初にまとまった入居金を支払う「入居金プラン」と、入居金を支払わない「0円プラン」とでは、最終的に何年住んだかによって支払い総額は変わります。
入居期間の長短は、入居する時点では想定が難しいため、「結果的にどうだったか」ということになります。また、老人ホームごとに料金プランは違うので、料金説明をしっかり聞き理解することが大切です。
家族や親族にも一緒に説明を聞いてもらい決めるとよいでしょう。 中村 真佐子(マイアドバイザー®登録FP)

【目次】
  1. 1.入居金を支払うメリットを知っておこう
  2. 2.入居金を支払う前に注意したい3つのこと
  3. 3.入居金を払う・払わないどっちがお得?
  4. 4.入居金トラブル
  5. まとめ

1.入居金を支払うメリットを知っておこう

そもそも入居金は、「利用権を得るため」や「家賃の前払い金」という性質のものです。
利用権とは、入居する老人ホームの内の居室や共有部分を終身にわたり利用するための権利のこと
で、それを金額に換算したものとなります。また、利用権ではなく「家賃の前払い金」と表記している老人ホームもあります。

入居金は契約時に支払うため、最初に数百万~数千万円というまとまった現金が必要になります。
入居金0円プランのある老人ホームは、まとまった現金が用意できない方でも入居検討ができるように、複数の料金メニューを用意しているのです。

入居金0円の場合、本来入居時に支払うべき金額を毎月の「月額利用料」に上乗せして支払うイメージ
です。従って、初期費用は掛からない分、月額費用は高めとなります。

入居金を最初に支払うのと、月額に上乗せして支払うのとでは、居住した年数によって最終的な支払い額が変わります。契約した老人ホームに一定期間以上入居し続けるのであれば、最初に入居金を一括で支払ったほうが最終的な支払い額は少なく済むことがあります。

なぜなら、最初に一括で支払った入居金は、毎月の利用料に家賃などの「上乗せ金なし」で終身住み続けることができます。
一方で、入居金0円で入居した場合、毎月の利用料に家賃など「上乗せ金あり」の場合は、退去するまでずっと上乗せ金が必要となるからです。
この「上乗せ金」が積み上がり、一括で支払う入居金と同等になるのは、償却期間(注1)となっているケースが多いです。「償却期間が5年」の場合は、5年を超えて住み続けるのであれば、最終的に支払う料金は、一括で入居金を支払う場合よりも、0円プランの方が高くなります。

注1:償却期間とは、入居時に支払った入居金のうち初期償却分を差し引き、残った金額を分割して法人ホーム側が受け取る期間のこと。

関連リンク>老人ホーム・介護施設の費用・料金

2.入居金を支払う前に注意したい3つのこと

1)初期償却と償却期間

施設入居する際の説明として、「初期償却」と「償却期間」という言葉が出てきます。聞きなれない言葉なのでその意味をしっかり理解しましょう。
入居金は、一般的に入居直後に初期償却されます。初期償却とは、入居してすぐに老人ホームが一定割合を入居金からもらうというものです。その割合は30%程度としているところが多いです。入居金の償却期間は、「介護付きのホームであれば5年」、「自立型や健康型のホームであれば15年」など、各老人ホームごとに定められています。入居金総額から初期償却分を差し引いた残額を、償却期間を通じて分割しホーム側が受け取ります。

2)償却期間内退去の返還金

入居金は終身利用権の場合、初期償却分を差し引いた残りの金額を毎月老人ホーム側が受け取る仕組みです。
仮に、「償却期間が5年で、死亡等により3年で退去」した場合、償却していない残り2年分の金額が退去時に戻ってきます。5年以上入居し、退去した際は返還金額はありません(0円)。
退去時の返還金額の計算方法はホーム毎に違いがあるので注意が必要です。(注3)

注3:入居金を終身利用権ではなく前払い家賃としている老人ホームの場合は、初期償却がありません

3)クーリングオフの確認

老人ホーム入居には、クーリングオフという制度が適用されます。入居後90日以内に、契約を解除した場合に入居金が全額返金となるというものです。万が一、「入居したホームが自分に合わなかった」など短期間で退去することになっても入居金は初期償却されずに返還されます。クーリングオフの内容と入居金返済の規定は老人ホームによって違いがありますので必ず確認をしましょう。

上記、入居金を支払う前には契約前に注意したい3つのことは、契約をする前にしっかりと理解するまで説明を受けましょう。入居者が高齢により理解が難しい場合は、子供など親族も同席して説明を受け、無用なトラブルを防ぎましょう。

3.入居金を払う・払わないどっちがお得?

老人ホームの入居時に、この先何年住むかということを想定するのは困難です。
ただ、老人ホームから別の老人ホームへ住み替える場合は注意が必要です。
はじめのうちは住心地が良かった老人ホームでも、入居者同士の人間関係が悪化したり、老人ホームの運営者が変わってサービスが変化することで退去したくなることもあります。
ほかのホームに移ることになっても、その際にはまた入居金が必要になります。
退去の際には、償却していない入居金は返還されますが、初期償却(注2)分が入居時にさし引かれますので、手元に返ってくるお金だけで、ほかの同等の老人ホームへの入居金に充てるとしたら足りないでしょう。(注3)

入居金を捻出するために、自宅を売却した場合は帰るところないうえに、頼る資産も金融資産しかないために、これからの生活が不安になるかもしれません
一方で、「入居金0円」で入居した場合は初期償却がありませんので、このようなリスクは回避できます。老人ホームによっては、最初は0円プランで入居し生活に慣れてきた後に、入居金プランに変更できるところもあります。

注2:初期償却とは、入居直後に入居金から老人ホーム側が一定割合最初に受け取るお金のこと。
注3:入居金を終身利用権ではなく前払い家賃としている老人ホームの場合は、初期償却がありません

4.入居金トラブル

入居金をめぐるトラブルで多いのは、退去時の返還金によるものです。
クーリングオフや償却期間内の返還金の仕組みは上記の通りですが、返還金に関する説明が不十分なケースでトラブルが発生します。クーリングオフの場合、全額返還となっていても、最初に納めた全額なのか、一定の居住費等を差し引いた金額なのかは、老人ホームによって違いがあります。

クーリングオフ期間を過ぎた後の退去についても同様に老人ホームにより様々な取り決めがあります。老人ホーム側の説明をしっかり聞き、わからないことはその場で確認するとともに、家に帰っても確認できるように、書面を入手することがトラブルを防止するために必要です。

まとめ

まずは入居金の性質を知りましょう。
ずっと住み続ける決意を入居金に込めるという側面もあります。寿命は誰にもわかりません。どれだけ住み続けるのかは知るよしもありません。人生最後の大きな支出となる老人ホームの入居金。終の棲家としての価値の対価として有意義に使いたいものです。
そのためには、こんなはずではなかったとならないよう、老人ホーム選びを慎重にするとともに、一人で決めずに家族や親族ともかかわりましょう。
特に入居金等の「お金」に関する事項は老人ホームに詳しいフィナンシャル・プランナーなど第三者に確認してもらうのもトラブルを防止するために有効でしょう。

関連リンク>有料老人ホームにかかる費用の相場を知り、将来の目安にしたいです。


このQ&Aに回答した人

中村 真佐子
中村 真佐子(マイアドバイザー®登録FP)

ファイナンシャルプランナーとして、住宅ローン・教育資金など、若い世代の普通の家庭におこりうるお金周りの相談は、生活者目線を大切にしています。
社会福祉協議会で生活支援員としての活動もしており、高齢者や障害者の介護、住み替え、成年後見制度分野の相談も得意としています。