質問

現在入院中の母ですが、退院後に自宅に戻ることは難しいため、老人ホームへの入居を検討しています。しかし、老人ホームに入居して、今まで自分でできていたことまで介護してもらうと身体能力がどんどん低下してしまうのではと心配です。
リハビリを行っている老人ホームもあると聞いたのですが、現状について教えてください。

回答
竹内 恵子

老人ホームでは介護スタッフが常駐し、入居者が安心・安全に生活できるよう努めています。しかし、本来入居者ができることまで必要以上に介助してしまうと、入居者の身体機能が徐々に低下する恐れもあります。
老人ホームでは、「今までしてきたこと・今できること(残存能力)」を入居者が継続できるように支援しています。
そのため、普段の生活では体を動かす機会を多く取り入れ、日課も活動的で結構忙しく、思っている以上に体力維持につながることもあります。
また、入居者の希望に沿って支援する「リハビリプログラム」を用意している老人ホームもあり、自宅での生活以上に健康で元気に過ごされる方もいらっしゃるようです。
ここでは、老人ホームの現状を知り、入居者にふさわしい住まいを探す上で気を付けたいポイントを幅広くご紹介します。 竹内 恵子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ/理事)

【目次】
  1. 1.身体能力の低下を防ぐ、老人ホームのリハビリ
  2. 2.身体機能維持のために行われる生活リハビリ
  3. 3.専門士による健康管理で身体機能を維持
  4. まとめ.今までしてきたことを継続し、今できる機能を活かす介護へ

1.身体能力の低下を防ぐ、老人ホームのリハビリ

「生活リハビリ」という言葉を聞いたことはありますか?
リハビリというと病院で専門の療法士による機能訓練を行い、「病後の身体機能の改善」というイメージがあるかもしれません。
しかし、老人ホームで行われているリハビリの多くは「生活リハビリ」と呼ばれ、普段の生活を続けることで身体機能を維持し機能低下を防ぐことを目的としています。

日常生活で行う生活リハビリの他にも、マシントレーニングを行う「パワーリハビリ」もあります。それぞれのリハビリの内容をみていきましょう。

1-1.生活リハビリ

「自分でできることは自分でする」ということが生活リハビリの基本的な考えです。
スタッフは、入居者のできること・できないことを把握した上で、何故できないかを分析します。できる能力(残存機能)は維持し、できないことに対しては適切な介助を行います。

日常の生活全般の動作をリハビリと捉え、「食事・着替え・排泄・入浴」など、できるだけ入居者が自分でできるよう促します。生活に必要な筋力をつけ体力低下を防ぎ、能力の維持・向上をめざします。

例えば、
□朝起きたら自分で衣服を着替える。洗面所で顔を洗う
□安易に車イスに頼らない。安全に配慮し杖や手引き歩行で移動する
□居室から食堂までを歩く。食卓で食事をとる
□外気にふれ五感を刺激する。より多くの人とコミュニケーションをとる
□外出し近隣の商店に買い物に行く

これらは通常の生活行動ですが、スタッフは必要以上に介助をせず、あえて入居者本人にしていただくことが生活リハビリとなります。老人ホームでの機能訓練とは、この生活リハビリを中心に行われます。

1-2.マシーンを活用したパワーリハビリ

マシーンを活用したトレーニングを主にパワーリハビリと呼び、生活リハビリとは異なる効果が期待できます。マシーンを使用し筋肉に負荷を掛け、普段使っていない筋肉を活性化させることを目的としています。マシーンといっても、フィットネスジムで行うような筋力強化用ではなく、筋力の低下を防ぐための専用の機械で、高齢者でも無理なく運動ができます。
継続して行うことで、立ち上がりが楽になったり、歩きやすくなったりします。足腰が軽くなると、活動意欲も高まりますね。また、パワーリハビリは、脳に働きかけ精神的な症状の改善にもつながり、心身の回復にも良い効果があるそうです。

2.身体機能維持のために行われる生活リハビリ

入居者は規則正しい一日を過ごせるように、食事・体操・レク・入浴など、日々の生活サイクルが決まっています。そして、様々なレクレーションや、地域のボランティアによる催し物も企画されており、こういった活動に参加すること自体もリハビリの一環となります。
では、老人ホーム内外では具体的にどういったレクリエーションが行われているのでしょうか。

老人ホーム内で行われること 外出時に行われること
・入居者皆で行う体操
・食前に飲み込みをよくする口腔体操
・手芸(折り紙・編み物・小物作り)
・カラオケ/合唱
・音楽鑑賞、映画鑑賞
・囲碁/将棋
・脳トレ(簡単な計算問題やゲーム)
・お菓子づくり
・移動販売による買い物(衣服や食品)
・老人ホーム周辺のお散歩
・近くの商店へ買い物に行く
・外食に行き、食べたいものをオーダーする
・カラオケに行き一緒に歌を楽しむ
・お墓参りや、神社への詣でなど
・お花見
・地域のお祭りに参加する
・日帰り温泉などのバスツアーに参加


※レク内容は老人ホームごとに異なります。

さらに、理学療法士などのリハビリの専門家が、入居者の健康を管理してくれる老人ホームもありますので、もう少し詳しくみていきましょう。

3.専門士による健康管理で身体機能を維持

3-1.老人ホームで求められるリハビリ専門士の役割

 専門資格               特  徴
理学療法士 起き上がる、立ち上がる、歩く、などの日常生活の基本動作の改善を行う
作業療法士 食事・着替え・指を動かすなど、生活に必要な作業ができるよう改善を行う
言語聴覚士 高齢化による難聴、食べ物をうまく飲み込めない嚥下(えんげ)障害などに対して訓練を行う
看護師 日々の健康管理や医療行為だけではなく、機能訓練も行う場合がある
機能訓練指導員 公的資格ではなく、研修を受講したスタッフが歩行や筋力トレーニングを行う

3-2.リハビリ専門士の常駐状況

上記のように、リハビリの専門士がそれぞれの役割で機能訓練をしますが、全ての専門士が揃っている老人ホームはあまり多くありません。
老人ホームはあくまで生活の場であり病院とは目的が異なります。そのため、例え専門士が少なくても必要な機能訓練が受けられれば、それほど問題ないでしょう。

まとめ.今までしてきたことを継続し、今できる機能を活かす介護へ

老人ホームの介護は、スタッフが何でもお手伝いする介護ではなく、本人が今できること(残存機能)を活かす介護へと変わってきています。
そのため、入居者のできないことを手助けし、できることを続けられよう安全に見守ってくれる老人ホームをお奨めします。
また、ケアマネジャーが作成する「サービス計画書(ケアプラン)」に、ケアの方針や内容が記載されます。本人や家族が入居後にどのような生活を望むのか要望を伝え、ケアプランに反映してもらいましょう。

こちらから老人ホームを検索できます。気になる物件の資料を請求し見学して、ホームの雰囲気を肌で感じることが大切です。できれば2~3ヶ所以上見学し、条件に合うホームを探していきましょう。

このQ&Aに回答した人

竹内 恵子
竹内 恵子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ/理事)

株式会社ATコンサルティング/取締役
金融商品仲介業
AFP
内部管理責任者、宅地建物取引士
介護保険の評価調査員/外部評価、第三者評価
資産運用相談、介護事業経営コンサル会社専任アシスタント