【知っておきたい】フレイル健診で介護予備群を早期発見・予防
フレイル健診とは75歳以上の人を対象に、介護予備群となるフレイルの状態の人を発見するための健診です。これまでも実施されていた後期高齢者医療制度の健診を一部変更して行います。
ここではフレイル健診の概要や受け方、活用の仕方を紹介します。
そもそもフレイルとは?
フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間の状態です。加齢や病気などが原因で体力・筋力の衰えや認知機能の低下などがみられますが、治療や予防などの適切な介入によって改善することができます。
高齢者が要介護状態になるのを遅らせて健康な状態を長く保つためには、フレイルを早期に発見して、可能な限り早くケアすることが大切です。
フレイルとは何かを知って、介護予防フレイル健診の内容
フレイル健診とは75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度で行われる健康診査のこと。
これまではメタボリックシンドロームに注目した質問票を使用していましたが、高齢者にとって重要な健康課題であるフレイルを把握するために、2020年4月から新しい質問表を使用することになり、「フレイル健診」と呼ばれるようになりました。
新しい質問表は高齢者の健康状態を把握する15個の質問で構成され、それらに答えることでフレイルかどうかを判断します。
<フレイル健診の質問票>
- 1.あなたの現在の健康状態はいかがですか
2.毎日の生活に満足していますか
3.1日3食きちんと食べていますか
4.半年前に比べて固いもの(さきいか、たくあんなど)が食べにくくなりましたか
5.お茶や汁物等でむせることがありますか
6.6カ月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか
7.以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか
8.この1年間に転んだことがありますか
9.ウォーキング等の運動を週に1回以上していますか
10.周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われていますか
11.今日が何月何日かわからない時がありますか
12.あなたはたばこを吸いますか
13.週に1回以上は外出していますか
14.普段から家族や友達と付き合いがありますか
15.体調が悪いときに、身近に相談できる人がいますか
フレイル健診の受け方
後期高齢者医療制度の健診内容はフレイルに注目したものへと変更しましたが、健診の受け方に変わりはありません。健診は市区町村が実施しています。実施期間や予約の取り方などが自治体によって異なるため、お住まいの市区町村に問い合わせてみましょう。
フレイル健診の活用方法
フレイル健診の質問票は、フレイルにならないために注意したいポイントが整理されています。健診のときだけでなく日頃から質問票を意識することでフレイル予防になり、介護予防につながります。気になる項目があれば、かかりつけ医に相談しましょう。
例えば「6ヶ月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか」に該当する場合、栄養状態が悪くなっている可能性があります。食べる量が減っていないかを確認し、もし減っているならその理由を考えてみましょう。
摂れる量が減っているのであれば、少量でもカロリーの高い食事を選んだり、栄養補助食品を活用したりするとよいでしょう。噛みづらさや飲み込みづらさが原因なら、一度医師や歯科医師に相談しましょう。
定期的に質問票をチェックすることで自身が気をつけたいポイントが確認できます。フレイル予防に活かしましょう。
なぜフレイル健診がスタートしたの?
フレイル健診がスタートした背景には、日本では多くの高齢者が長い期間介護を必要としている現状があります。
令和2年版高齢社会白書によると、男性は8.84年、女性は12.35年もの間、介護を必要としています。国としてもこの期間を短くするためにさまざまな施策を練っており、そのひとつがフレイル対策です。
介護が必要となる理由として3番目に多いのが「高齢による衰弱」。ですから、フレイルについて国民に知ってもらうために、今回のフレイル健診が始まりました。
フレイル予防は介護予防に直結します。フレイル健診を活用して、介護の要らない元気な状態を維持していきましょう。
【動画まとめ】短時間でフレイル予防|自宅で簡単6つのトレーニングイラスト:坂田 優子
この記事の制作者
著者:矢込 香織(看護師/ライター)
大学卒業後、看護師として大学病院やクリニックに勤務。その後、メディカル系情報配信会社にて執筆・編集に携わる。現在は産婦人科クリニックで看護師として勤務をするかたわら、一般生活者のヘルスリテラシー向上のための情報発信を行っている。
監修者:岩本 大希(WyL株式会社/ウィルグループ(株)代表取締役)
大学卒業後、北里大学病院救命救急センター従事。その後、ケアプロ(株)で訪問看護事業の立ち上げ・運営を行う。
2016年ウイル訪問看護ステーション江戸川を開設。東京・沖縄・岩手・福岡・埼玉で展開。
2019年在宅看護専門看護師を取得。(社)オマハシステムジャパン理事、(社)東京都訪問看護ステーション協会研修委員長