「木のぬくもりと暮らす生活」「最新のICT を用いた介護」という、対極にあるコンセプトを融合させた介護付有料老人ホーム『グランフォレストときわ台』。

2016年11月に新設されたこちらのホームで施設長を務める小澤孝史さんは、このユニークな環境を活かしながら入居者の「生きがい」発掘をサポートしたいと考えています。どのような取り組みをしているのかお話を伺いました。

介護のプロフェッショナルになると自分に約束した

施設長経験が豊富ということで、今回ホームの立ち上げに抜擢された小澤さん

【施設長経験が豊富ということで、今回ホームの立ち上げに抜擢された小澤さん】

――まず、小澤さんが介護業界に入ったきっかけを教えてください。

27歳のときに介護の仕事を始めました。それまではフリーターをしていて、そろそろ就職しようと考えていたときに、周りから「優しい性格だよね」ってよく言われるなと思い出して。「だったら介護とか自分に向いているのかな?」なんて、わりと単純な動機でこの業界に入りました。

――入ってみてどうでしたか?

はじめに働いたのは特別養護老人ホームです。自分の性に合っている感じがしましたね。仕事をするからにはプロフェッショナルになってやろうと思い、オムツ交換でも入浴でも「快適・迅速・苦痛なく」サポートすることに徹すると決意しました。

――具体的にはどのようにサポートをしたのでしょうか?

とにかく手を早く動かしながらも、口では楽しませようと、介助の間はいつも冗談を言ってはご入居者に笑ってもらう工夫をしていました。今は特養でもユニットケアの導入で人員体制を手厚くするなどずいぶん改善が進みました。しかし15年ほど前はまだ、夜間帯勤務で30名のオムツ交換を職員ひとりが担当していた時代です。そうなると、どうしても流れ作業的に対応せざるを得ない状況でした。だからこそ、ご入居者を不快な気持ちにさせまいと自分に約束していました。

――ご自身が施設長になって、その頃の経験はどう活きていますか?

職員をすごく大切にしています。誤解を恐れずに言うと、僕としてはご入居者よりも職員のほうが大事なんです。それは介護をするのが彼らだからです。僕が不在の時にも現場を安心して守ってくれる。職員にとって少しでも働きやすい環境にしてあげることが、ご入居者を大切にすることにつながっていくと思っています。施設長としてはまだプロの域になれていないので、気を引き締めて取り組んでいきたいです。

「生きがい」の発掘をサポートし、自ら動きたくなる環境づくりを

 居室の様子。床や家具に木を贅沢に用いて温かみのある空間に

【居室の様子。床や家具に木を贅沢に用いて温かみのある空間に】

――『グランフォレストときわ台』は、フィルケアとしてもはじめてのサービスを用意していると聞いています。たとえばどういったサービスがありますか?

フィルケアの手がける老人ホームは、どちらも木材をふんだんに使用した空間デザインが特徴です。居室はもちろん、施設内のフローリングや浴室、そして庭園に至るまで木のぬくもりを感じていただくことができます。それに加えて、『グランフォレストときわ台』では、最新のICTを活用することによって、ご入居者の暮らしの自由度を高める取り組みを行なっています。

――もう少し詳しく聞かせていただけますか?

自由度を高める取り組みとしては大きくふたつあります。ひとつは入浴の完全個別対応です。入浴介助の個別対応のほか、可能な範囲で入浴時間のご希望にも応じています。もうひとつは、レストランでの食事時間を2時間と長めに設定していること。出来るかぎりご入居者が自ら「こうしたい」と動きたくなる仕組みを作っていきたいと考えています。

――入居者が「こうしたい」と動きたくなるというのは、具体的にどういうことでしょうか?

これは施設全体の方針でもあるのですが、自分はまだ生きていたい、という欲をご入居者に能動的に感じてもらいたいのです。子育てが終わり、仕事も退職し、ではその次は?というときに、生きる目的を見失ってしまう方が多いと感じています。それを見つけ出してサポートしてあげる。

――「生きがい」の発掘ですね。

そうですね。いちばん大事な根幹が見つかれば、あとはご本人が自ずとそこに向かって動きます。僕たちができるのは、まずはご入居者のお話を丁寧に聴くこと。そして生活の自由度をあげたり、興味をそそるレクリエーションの企画を立てたりして、自分から動いてみようと思える仕掛けを散りばめていくことだと思っています。

――現在、たとえばどんなレクリエーションの企画がありますか?

今準備しているのは園芸療法です。1階のレストラン横にある庭に介護者向けの大きなプランターを用意して、そちらで野菜やお花を一緒に育てるといった企画を進行中です。高さのあるプランターなので、屈まず楽な姿勢でできますし、車椅子の方も作業可能なんですよ。自分たちで土を張って手入れした植物の成長を、毎日食事の時間に見守ることができる。そんな環境にしていけたらと思っています。 園芸療法で使うプランター。これから土を入れて本格的に栽培を始めるそう

【園芸療法で使うプランター。これから土を入れて本格的に栽培を始めるそう】

ICTの導入によって生まれた現場業務の変化とは?

 小澤さんは、新しいチャレンジに毎日が試行錯誤の連続だと語ります

【小澤さんは、新しいチャレンジに毎日が試行錯誤の連続だと語ります】

――個浴や食事の対応をより丁寧に変えるとなると、当然手間暇がかかります。課題となるのは時間の創出だと思うのですが、ICTの活用はその課題にどう貢献していますか?

ICTは主に、事務処理や情報共有といった間接業務の削減に貢献しています。職員の仕事にゆとりを作るという点でいうと、介護ソフトとインカムの活用が大いに役に立っていますね。特にインカムは情報共有手段としては抜群です。伝言ゲームになりがちな業務連絡がリアルタイムにできるので、コミュニケーションの効率と精度が格段に上がりました。

――その他にも介護見守りシステムなど、積極的にICTを導入しているそうですが、スタッフが操作方法を身につけなければいけないなど、育成面での課題はないのでしょうか?

たしかに機械操作の苦手な方は、採用を辞退される場合もあって苦戦していますね(笑)ベテランの介護士さんほど苦手だという方が多いので、そこは介護業界全体の課題かもしれません。ただうちは、主任がマンツーマンで新人にOJTを実施しています。きちんと一貫性を持って指導をしますし、ある程度成長してから一人前の職員として業務を任せているので、学べる環境は整っていると思います。

――最後にご入居を検討される方にメッセージをお願いします。

単に不自由になった方の介護をするというだけではなくて、高齢者の培ってきた経験や知識を次の世代に継ぐというのも、我々の仕事のひとつかなと思います。今は立ち上げでまだそこまで追いつかないですが、ゆくゆくはそういった取り組みまで広げられたら嬉しいです。そして、最後の最後まで「よかった」って思って人生を過ごしてもらえる施設にしたいと思っています。

(記事中の内容や施設に関する情報は2017年7月時点の情報です)